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07

 聞いた私がバカだったと、無言で雪にフレンドチャットをしようとすると、天が腕にしがみついてきた。


 「何で無視するの~!」

 「駄女神の戯言に付き合ってる場合じゃないのよ」

 「だって、大国主がパスワードは『生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え』だって言ってたんだよ」

 「究極の疑問の答え?」

 「そ。この世で究極と言ったら天照大神以外に存在しないでしょ」


 姫『ということなんだけど、何か心当たりはあるかしら?』

 雪『ちょっとお待ちください。……、『42』だそうです』

 姫『何それ?』

 雪『分かりません。ググったら出ました』


 雪がインターネット検索で見つけたという答えをパスワードに打ち込むと、あっさりとコロニーのデータを消すことができた。


 「ふう。これで本当に一件落着ね」


 雪『大変です、お姉さま』

 姫『今度は何?』

 雪『人工衛星の落下が速くなってます』

 姫『何で?』


 「コロニーが急に消えてコロニーの動きにアンカーされていた人工衛星の軌道が変わったのね」

 「戻るよ、天」


 コロニーが消えたのならこれ以上仮想世界にいる必要はない。速く戻って人工衛星をどうにかしないと。


 ログアウトすると雪たちが窓の外を見ていた。私も窓から身を乗り出すと、肉眼で目視できるほどの大きさになった人工衛星がこちらの方に飛んできていた。


 「あれ、こっちに飛んできてない?」

 「落下予想地点はこの家を含む半径10kmくらいに限定されています。お姉さま、急いで逃げましょう」

 「待って」


 私の手を引こうとする雪の体を天が遮って人工衛星を指さした。


 「天さま、遊んでる場合じゃ……」

 「あのくらい、あたしの力を持ってしたら一捻りよ。42とやらにこんなことができるかしらね」


 天、めっちゃ根に持ってるわね。


 天は2階の窓から身を投げ出すと華麗に地面に着地した。何か悲鳴的なものが聞こえたのは気にしないでおこう。


 庭の中心に立って神力を練り上げると、胸がぐっと膨らんで盛り上がった。そして、両手を前に出し、手首を合わせて後ろに引きながら言った。


 「〇めはめ」

 「ちょっと待て」

 「〇―」


 天照が手を前に伸ばすと太い光のビームが手元から伸びて、空を割って人工衛星に当たり、そのまま宇宙の彼方へ飛び去った。


 その威力は軌跡の周囲の空気までもまとめて彼方に吹き飛ばしてしまい、突如生まれた真空に向かって断熱膨張した大気は急速に冷やされ見る見るうちに雲となった。


 「雪だわ」


 私は空から降ってきた白いものを手で受けると、そうつぶやいた。


 そういえば、今日はクリスマスだったわ。


 「メリークリスマス、雪」

 「はい。メリークリスマス、お姉さま」

 「それにしても、ちょっと降り過ぎね」


 雪はどんどん強くなって見る見るうちに地面に積もっていった。ちょっとした異常気象のようだ。


 ま、明日までには止むでしょ。


 そう思ってもう一度空を見ると、サンタが空を飛んでいた。


 「あ、あれは」


 どこかで見たことのある太ったサンタを見て、私は即座に足元の雪を掴んだ。


 「あいよ、姫ちゃん」

 「姫さま」

 「かぐや姫さん」


 同時に天と墨とすせり姫も同じものに気づいて雪の玉を手渡してくれた。私はそれをまとめて大きな雪の玉を作った。


 そして、大きく振りかぶってサンタに向かって投げつけた。


 バシッ


 「へぶっ」


 雪玉は見事にサンタの顔面に命中し、被り物のの脱げた偽サンタはそりから真っ直ぐ地面に落ちて行った。


 「これが本当の落とし玉ということね」


 こうしてまた一つ、歴史という書物に新しい1ページが加わったのだった。



【終】

ということで、これが年内最後の更新です。

2016年はありがとうございました。

2017年もよろしくお願いします。

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