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02

 「天、ふざけてないで、体が入れ替わった原因を知りたいんだけど」

 「ふざけてないよ。神力が足りないと記憶もはっきりしないんだよ」

 「天さま、お姉さまのためなら我慢します。必要なだけ揉んでください」


 雪がちょっと興奮した様子で胸を私の前に反らしてきた。こうして見るとなかなかすごい存在感だと思う。


 「雪、それ私の体だからっ」

 「はうぅっ」

 「胸がダメならマウストゥマウスでも」

 「しませんっ!」


 心なしか雪ががっかりした表情なのは気のせいだと思う。


 それから天に体の制御を乗っ取られないように気を付けつつ、雪の手を握って神力を補給して天の話を聞くことになった。


 「んー、ちょっと思い出してきたかも」

 「何してるの?」

 「ん、スマホってどこに置いたっけ?」


 天がスマホを探すので、寝室に置きっぱなしになっていたのを取ってくると、天が勝手に操作しはじめた。


 「履歴とか勝手に漁らないでよ」

 「ちょっと待って。姫ちゃんの恥ずかしい写真とか見つけたらすぐ返すから」


 ゴツン


 「「あ、痛たっ」」


 頭を叩くとようやく天は脱線をやめた。


 「オズ」で検索すると、「仮想世界オーズ」というアプリが表示され、天は何の確認もなくインストールを始めてしまった。


 「あの、それ私の携帯……」

 「最後に覚えてるのはこのアプリで何かをやっているところだったのよね。何だったかしらー? もっと神力があれば思い出せるのになー」


 うーんうーん、と唸りながら、天はちらちらと雪を見ていた。こっそりやっているつもりかもしれないけれど、視界を共有している私には筒抜けだった。


 「天?」

 「ひ、ひらいひらい。ほっぺらひっはららいれ」

 「ひゃっららひゃややくひゃうぇりららいひょ」

 「わらっらから、はひゃくれをはらひれ」


 ほっぺたを抓りあげると天はギブアップしてようやく話す気になったようだ。代償は痛かったが、必要な犠牲だったと思う。痛い……。


 「お姉さま、ほっぺたが真っ赤に」

 「大丈夫よ」

 「このアプリは仮想世界にアバターを作っていろいろなことをさせることができるってものなの。要するに、ネットの世界に自分のもう一つの体を持てるってこと」

 「つまりはセカンド〇イ〇ね」

 「お姉さま、そこを伏字にすると何が何か分かりません」


 話をしながら、天はアプリを操作して私のアバターを作り上げていた。


 「じゃ、これでインするよ」

 「え、ちょっと待っ」

 「はい、完了」

 「ああっ」


 天が確認ボタンを押すと、私の格好をしたアバターがスマホの画面に登場した。


 「勝手に何してるの」

 「そんなことよりユーザー検索をして」


 どうやらこの先の操作はやる気がないのか、天は手の制御を返して口頭で指示をし始めた。


 「キーワードは『天照』で」


 検索すると数人のユーザーが表示された。


 「二人目をタップしてフレンド申請」

 「これってもしかして」

 「私よ」


 なるほど、この方法なら確かに。でもこんな手の込んだことを天一人でやるというのは……。


 「あの、どういうことなんでしょうか?」

 「天はこの仮想世界オーズのアバターに自分の人格を移したんだよ」

 「え、じゃあ、今ここにいるのは?」

 「移しきれなかった残りかすが外部から神力の供給を得て過去の記憶を再現してるってとこかな」


 人格を移す時に神力を持って行ったから、雪の体に神力がほとんど残っていなかったのだ。雪と私が入れ替わったのも多分その時の影響なのだろう。


 「こういうのは絶対裏で大国主が絡んでるわ」


 そうつぶやきながら、天へのフレンド申請ボタンをタップした。大国主のほうは天の方と話してからでいいだろう。


 すると、即座にフレンド申請が受理されて、フレンドリストに天のアバターが表示された。


 フレンドチャットを開こうと天のアバターをタップしようとしたところで、突然視界がぐるぐると回り出してスマホに吸い込まれるような気持ちになった。


 「お姉さま、おねえさまっ……」

 「姫さまっ……」


 雪と墨の声がだんだん遠ざかって行って、私の意識は暗転した。

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