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ティル・ナ・ノーグの最強騎士〜「生ける理不尽」と呼ばれる少年が挑む理不尽なミッション  作者: 風庭悠
第10部:とんでも技炸裂!―選挙大戦!グループリーグ編
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第97話:傑作すぎる、続編。

引き続き、ビリー・ザ・キッド率いる「天狼の牙騎士団」との一次リーグ第4戦の模様をお届けします。

団体戦(トゥルネイ)」の一番です。



[星暦1544年9月8日。北の学都ウインチェスター。選挙大戦コンクラーベ第4戦。 「天狼の牙フェンリルズファング騎士団」(ホーム)対「聖槍騎士団」。]


空戦を取り、カウントをタイに戻した凜たちの旅団だったが、次の団体戦(トゥルネイ)で再びビリーとあい向かう。


今回は「天狼の牙(フェンリルズファング)騎士団」がホームであるため、彼らが用意したシチュエーションでの戦いになる。通常、奉納試合は1チーム五人だが、選挙大戦(コンクラーベ)では七人編成となる。


「貨物列車か⋯⋯」

正直、ビリーにとってもっとも有利な設定である。空間は限定され、攻撃のルートも限定される。つまり、槍や大剣のような武器は不利なのである。

しかも、猟師(ハンター)である鎮守府の系譜を引く騎士団にとって銃こそが主武器である。

無論、凜たちも銃を扱う教練は受けているが、その練度には天地ほどの差がある。


(フラッグ)を守るキーパーはマーリン。凜が一人ディフェンスで残り、五人がオフェンス、というフォーメーションということにした。音声限定(サウンドオンリー)の交信は許可されている。当然、相手のフォーメーションは知る由もない。


ゼルが憑依(ポゼッセオ)したリックをキャップにトム、ロゼの三人一組(スリーマンセル))でで正面突破のチームアルファ、ジェシカとメグのコンビで屋根から攻めるチームベータとした。


「恐らく、ビリーはあなたとの一騎打ち、しかも自分の有利な状況での勝負に持ち込むつもりでしょう。」

マーリンの予想に凜も頷いた。


試合が始まる。しかし、ビリーの作戦はさらに度肝を抜くものであった。

ジェシカからの交信が入る。

「こちら、ベーター。相手チームと交戦に入る。員数は1、2、3⋯⋯何!?六人だと?」

なんと、ビリー自らキーパーを務め、ほかのメンバーを攻撃に全振りして来たのだ。

「ジェシカさん、捕獲縄(キャプチャー)には気をつけてください。」


凜は敵襲に留意しながら慎重に進んでいるはずのリック(ゼル憑き)に連絡する。

「ゼル、相手はビリー、一人だ。一番奥まで敵はいない。ただ罠には注意してくれ。三対一だ。仕留めてくれ⋯⋯とまでは言わないが、なるべくヤツを足留めしてくれ。」

「アラホレサッサー。」


どちらも3対1である。凜は転移(ジャンプ)すると、メグとジェシカの加勢に回った。恐らく、ゼル憑きのリックでさえ、ビリーには敵わないだろう。そしてもしメグとジェシカが破られれば、恐らく合流して車両の内外から攻撃を受けることになる。それだけは避けるべきだ。

凜が屋根の上に出ると、すでに銃撃戦になっていた。持てる武器は3つと決められている。相手は銃、捕獲縄、そしてプラスアルファであろう。


ジェシカとメグは自らの「心地光明(クラウソラス)」と「美慈麗久(オルトリンデ)」をエサに捕獲縄(キャプチャー)を使わせたのだ。

「凜、残りの捕獲縄(キャプチャー)は3つだ。」

防戦一方のジェシカが注意を促す。

一人が凜目掛けて捕獲縄(キャプチャー)を投げる。凜は矢で撃ち落とした。

「気をつけろ。やつはうちの大将(ビリー)並みの腕前だぞ。」

「残念だがそれ以上だ。」

凜が矢の束をつがえ、放つ。それはあたかも自らの意思を持っているかのように襲いかかる。

追跡矢(チェイサー)か、厄介だ矢のくせに。」

「そりゃ元祖ミサイルだからな。」

現代兵器のミサイルの語源は「矢」なのだ。


凜の加勢で一気に状況は逆転する。ゼルによる補助がないため、一度に操れるのは10本程度だが、それでもジェシカとメグの攻撃に連動されると効果は抜群であった。

当初は数的優位を嵩に攻撃的であったが、やがて、三人のコンビネーションに2人まで減らされると退却を開始する。


一方、さらにリック(ゼル)たちは苦戦していた。彼の跳弾を自在に操る(スキル)ギャンブラー」に苦しめられていたのだ。すでに跳弾でロゼはやられ、C3を持つトムとリック(ゼル)がなんとか踏み応えていたのだ。それでも、「当たらない」算段を立てるのに精一杯だったのだ


団体戦(トゥルネイ)」は旗を取るか、キーパー以外の相手を全滅させるかで勝負が決まる。ビリーは戻って来た二人を呼ぶと、一人にキーパーを交代させ、もう一人に盾でキーパーを完全に防御させると、凜に呼びかけた。

「やい、トリスタン!もう一度二人で決着をつけようぜ!」

凜が前に出る。凜は再びリックを抜けたゼルと合流した。

「リック、みんなでフラッグを固めてくれ。ここで俺が倒れても、時間いっぱい守りきれば俺たちの勝ちだ。」

そして、残りのメンバーに自陣に戻ってキーパーの守備を全員で固めるように告げた。


再び、二人の決闘の形になる。フラッグを守る二人を背にビリーが立つ。凜は霊刀「天衣無縫(ドレッドノート)」を構えた。

「三式・飛燕(トニー)。」

速度、旋回に全てをかけるフォームに替える。ここは列車の車両である。弁慶(ベン)と相対したように、ほぼ直線勝負なのだ。

「お前の斬撃と俺の銃撃、どちらが速いか、勝負だ。」

ビリーが煽る。

「本気で行って良いですか?」


凜の問いにビリーがいらついたように答えた。

「まさか、手加減してくれ、と俺が言うとでも?」

「では尋常に、勝負。」


最終奥義(エストレージャ)、『許されざる者(アンフォーギブン)

絶技(チェック)紫電(ジョージ11)。」

凜が飛び出す。凜は車両の壁、天井に残像を残しながら猛然と進む。残像に見えるのは「転移(ジャンプ)」を高速で繰り返しているためだ。転移(ジャンプ)を高速に繰り返す技がこの「紫電(ジョージ11)」である。


凜は自分が跳弾のように、そしてビリーの放つ弾丸を避けながら進み、斬りつける。ビリーは右手の銃で斬撃を受けると至近距離から左手の銃を放つ。

凜は後退すると再び同じ方法で斬撃を繰り返した。

「しゃらくせえ。」

 ビリーは今度は銃を交差させ斬撃を受けきると再び銃を放つが、今度は跳弾を巧みにあやつる。それは凜の脇腹を捉え、ダメージの判定がついた。

「どうだ。鉛の弾の味はよ?」

ビリーが車両の入り口まで後退した凜に勝ち誇ったように聞く。

「今の弾丸には鉛は含まれていませんよ。」

凜は涼し気な表情を変えずに答える。とはいえ、これ以上時間を引き延ばすのはビリーの戦闘能力を考えると危険であった。何しろ彼が「前世」で死んだのが21歳。まだまだ伸び代がある時だったのだ。それから2年、彼も研鑽を積んでいるのだ。


「今の(スキル)か?『許されざる者(アンフォーギブン)2』というところかな?次で仕留めてやるよ、トリスタン。」

得意げに説明するビリーに凜は苦笑をこらえて答える。

「『名画』の続編が傑作とは限りませんよ。」


凜はもう一度「天衣無縫(ドレッドノート)」を構えた。

「お前の動きは見切ったよ。嘘だと思ったら、さあ、かかってこい。」

ビリーが挑発する。凜がにやりとした。


凜が再び前進を始めた。

(気に食わねえ)

ビリーが見切った動きに銃弾を撃ち込むがことごとく外される。

(速ええ。)

あっという間にビリーは凜に懐に入り込まれて斬撃を防御しようと右手を挙げた瞬間、凜の姿が消える。

左手の銃のトリガーを引いた瞬間、その見切ったはずの場所に凜はいなかった。

「なに?」

その時、終了のブザーがなる。ビリーが振り返ると、凜の手にフラッグが握られていた。キーパーとがっちり防御していたはずの見方が切り伏せられていたのだ。


「てめえ、だましやがったなあ?コールと違う(スキル)じゃねえか。」

ビリーの顔が怒りで真っ赤に染まる。凜は澄ました顔で答えた。

「『紫電改(ジョージ21)』⋯⋯。ですよ。『名機』の続編は傑作が多いのですよ。映画とは違ってね。」

 凜は転移方式を通常の「空間入れ替え」から「量子ワープ」へと切り替えたのだ。ビリーには攻撃が自分に向かって来るものと思わせ、ビリーを躱して彼の背後にいたキーパーを襲ったのだ。

鍛えているとはいえ常人に、凜の突然の攻撃しかも見たこともないような高速の攻撃に対応できるはずもなかったのだ。


次の「殲滅戦(メレ)」も聖槍が取り、4連勝で試合の勝利を決め、グループ首位をキープしたのだ。そして、決勝トーナメントへの進出を確実にした。



「凜⋯⋯。この国の民は迫りくる大災害は怖くはないのだろうか?」

試合が終わり、闘技場(コロッセオ)を去る観客たちを見ながらメグが尋ねる。

 手に応援グッズを持ったり、興奮して試合のことを話しながら、まるで大災害が迫っていることに無頓着であるかのように見える。凜は困ったように笑う。

「さあ。確かに漠然とした不安はあるだろうけど、実際はどうしていいかわからないんだけなんだと思うよ。だって彼らのほとんどは惑星から出たことすらないからね。⋯⋯だから、僕らは戦ってみせるのさ。決して背中を見せない、頼れるリーダーであることを示すためにね。」



「よお、ベッピンさん。何しに来たよ?」

バーで一人、黄昏ながら飲むビリーの隣にルイが座った。

結局、ビリーは凜とは2戦して2敗に終わったことになる。つまり報酬の条件にはかなわなかったことになる。

「まさか、ここでズドン、というわけではないだろうな?」

ビリーの「前世」は闇討ちで幕を閉じたのだ。彼を殺したのは保安官であった。一瞬、それが頭をよぎったのだろうか。


ルイは問いには答えずに飲み物を注文(オーダー)した。

豆乳(ソイミルク)を。」

ルイの注文した物を聞いてにビリーは噴き出す。

「おい、いくらなんでもそれはないだろう?ここはカフェじゃないんだ。お前、まさか酒も飲まんのか?」

 ルイはビリーの方を向くと、一度めんどくさそうにしかめ面をして顔にかかった髪をかきあげる。

「質問の多いやつだな。まず、キミを殺したりはしない。だいたい、キミを甦らさせるためにどれだけの費用(カネ)時間(テマ)がかかったと思っているんだ?まだ機会(チャンス)が完全に潰えたわけじゃない。とりあえず、予選を突破することだ。」


「ああ、そういえばまだ漢人ども(チーノス)がまだ二人ほど残ってたなあ。勝てるかなあ、俺?」

ビリーはそう言ってバーボンをあおった。ルイは自分の前に置かれたグラスに少しだけ口をつける。

「そして、俺にとっての酒はワインしかない。そしてこんな店に、俺の口に会うワインがあるとは思えない。」


ルイは凜の(スキル)を引き出したことに礼を述べた。とにかくデータがなければ対処のしようがないからだ。

「あいつに勝てるのか?」

ビリーの問いにルイはにやりとした。

「少なくとも俺はそのつもりだ。」





次回、一次リーグ第5戦。再びあの男が登場。迷えるロゼが行き着いた先とは?


「沈みすぎる、木の葉。」は2/9投稿予定です。お楽しみに。

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