或る朝に薫る菊
告白されているのかどうかわからない物語です
いつだったか、恋愛という概念をソファに例えたことがある。
抽象的には欲しいけど、具体的には欲しくない。
持ってるお友達から話を聞けば、なんだかいいなぁって思う。私も欲しいなあ、って。
でも結構なお値段もするし、家に置くだけのスペースがないし、家に置けるくらいの小さなものなら、うーん、なくてもいいかな。
ソファが欲しいんだと言って貯金もしてないし、ましてソファのために家を引っ越そう等とは、そんな五里霧中な状態にはなってないなと。
家のことは置いておくとしたって、仮に、もしも、目の前にお金持ちの人が現れて「要らなくなったソファをあげようか」なんて甘い誘惑を仕掛けてきたとしてもだ。うえぇ、ソ、ソファかぁ、って。今ソファが無くても困ってないんだよね。急にあっても、あんまりどう使ってよいのやらわかりませぬ。
っていうかそもそも、自分に好きな人ができた後ならまだしも、そうでない普通の女子高生が年がら年中考えているようなテーマじゃあない。と、思う。
そんな微妙に単純で複雑な想いを恋愛だとか恋人だとか彼氏だとかに抱いていたのが、ほんの、つい数週間前のこと。
「おいたわしや。私変わってしまったのね」
「ふざけてるなら帰りますわよ、蘭菊」
あ……するどい突っ込み。十一月になって最近は大分冷え込んできてるから、心なしか突っ込みも肌に刺さる。
本気で帰る気もさらさらない、揶揄う気が満々……いや、これまでの人生で揶揄い慣れてないから友人に軽口を叩けること自体をちょっと喜んでるしたり顔が可愛い私の可愛い友人、森崎みもりちゃんが可愛くて可愛い。
高校生になってすぐに仲良くなったクラスメイトのみもりちゃん。四月に出会って半年間はずっと縁が厚めの眼鏡と三つ編みおさげがチャームポイントで可愛かった彼女は、先月の文化祭を経て初恋をしたとのことで可愛い。最近は結構髪型もお洒落に変えて可愛い、コンタクトも試したりして可愛い。今日は眼鏡はそのまま可愛い、髪は後ろでくるんと可愛いお団子にして可愛い。可愛い。
ちょっぴり丁寧めな口調は、昔読んだ少女漫画の影響らしい。可愛い。でも最近は友達と仲良くしてる証として口調を崩す努力をしてるらしい。可愛い。可愛い。
「つい最近まで初恋のなかった同志として相談しているんだよみもりちゃん」
「同志なのは認めるから。急に呼びつけてどうしたんですの?」
と、そんなみもりちゃんを放課後のカフェテリアに呼びつけた私はといえば。そう、最近になって恋らしき感情を手に入れて、絶賛持て余している。
恋と呼ぶにはまだ薄ぼんやりと、輪郭はあるけど霧に包まれたようで、その全容が視えていない。
「まずは現状を整理するとね……」
時をほんのりと戻す。
具体的には三週間ほど戻して、時は我が高校の文化祭。十月だ。
私のクラスはベタにありふれた演劇を出し物としていて、その演目は『シンデレラ』。手垢も手垢、誰もが知る灰かぶり姫をそれでも皆で必死に作り上げていた。
可愛いみもりちゃんは当然シンデレラ役、そしてもう一人可愛い夏風千夏ちゃんもシンデレラ。言ってる私は可愛くないけどシンデレラ。可愛い二人にお任せしたかった所存だったけれど、二人ばかりに負担をかけてもいられないので、人数合わせのシンデレラ。
頑張って台詞を覚えた私は、相棒の王子様、朝道道也くんとタッグを組んで、なんとかかんとか乗り切りました。大変だったね。
で、それで。
事件はその文化祭の打ち上げで起きてしまった。
普通にクラスの皆で行った普通のレストランで普通に楽しく過ごしていた私に、なんと王子様な朝道くんが愛の告白をしてきたのだ。
以下概略。
『菊池のシンデレラは、とっても素敵だった。僕はあの時間を、今を、青春って呼ぶさ』
『もしかして、私の事好きだって言ってる?』
『そう聞こえるかい?』
『き、聞こえる……』
『菊池がそう言うんなら、そうかもしれないね』
以上概略。
「愛の告白を! されてないってことに気付いたの!!」
「ちょっと、急に大声出さないで蘭菊」
愛の告白、されてなかった!!
されてなかったんです……!!
「急に好意を寄せられて、さ。でも悪い気は全然してなくて。むしろ言われてからこのかた、朝道くんの事ばっかり」
「ええ、そう聞いていました。噂のちょろいんがここにいたと」
「ちょろすぎて世界に激震が走ったよ」
震えたのは私の狭い世界だけ。マグニチュードもびっくりマイナス。いや、マグニチュードってマイナスあったんだっけか……?
「文化祭終わってから、朝道くんからのアクションが特に何もないなあって」
「あぁ」
「で、よく考えたらそもそも別に好きとか言われてなくない?って」
「うぅん」
「私が一人で勝手に舞い上がってた説、ない?」
「んーん」
「って、ことに、実は、みもりちゃん、気付いてなかった?」
「気付っ、った、すわねぇ」
「どっちよ誤魔化しやめてみもりちゃん」
「気付いてましたごめんなさい」
「ごめんなさいやめて」
朝道くんとは当然クラスメイトなもんで、だから、不意に一言二言話すことは普通にあるんだけど。別に目配せされるだとか、連絡先を交換するだとか、デートに誘われるだとか、とかとか。そうした恋慕を想起させられる行動を一切受けていない。というのが現状。というのに気づいたのが現状。
素敵だった、って言ってくれてるから、そこに恋愛的なニュアンスが含まれているかどうかはともかく、好意的な物言いではあったと思うのね。その好意だけをうっかりちょろい私が盛大に、文字通り大きく盛って受け取ってしまった。その可能性は。たぶん、相当に高いんじゃないかと思い始めた。
なんたって私は、華の女子高生になったってそうした経験とは縁もゆかりもない人生だったから。人からの好意に。或る意味鋭すぎる。過敏になっていて、塵ほどの好意で勘違いしてしまう。機微に気付けない。家族以外の他者に愛されたことがないから、何もわからない。自分の感じた熱量が、他の人にとってどのくらいに見えているかも。
「でも、ドキドキしたのも本当だし、でも、なんだこいつってのも、本当」
「それで、どうしたらいいのかわからない、と」
「うん」
みもりちゃんは相も変わらず優しい笑みを浮かべている。
まるで可愛い妹を愛でるように。くそう、なんだその余裕は。同い年のくせに。そっちだって恋心自覚したての時はしっちゃかめっちゃか私たちに阿鼻叫喚の相談してきた癖に。
(つってもみもりちゃんは……元気に、たぶん、なっただけマシかぁ)
今となればある程度の落ち着きを取り戻したみもりちゃんだけど、私は、私たちは知っている。文化祭辺りから、みもりちゃんは何かに悩み苦しんでいた。
今はこうして小話に興じるくらいには明るさを取り戻したけれど、一番ひどい状態の時は本当に目も当てられないほど憔悴しきっていた。一番の問題は、ひどい状態にあるという自覚がなかったことだ。一番にわかるはずの自分自身の状態すら冷静に見られない、とても今目の前にいる女の子と同じには見えないくらいに……って、これは比喩。あんな状態でも、その頑固さはみもりちゃんらしいなって、私は少しだけ思ったもの。
その、ほとんど錯乱状態に近かったみもりちゃんは文化祭が終わった後、すごく抽象的なお話をしてくれた。
友達が遠くにいっちゃった、みたいな話だった。
私は嘘だと思った。
だって、元気になった今でも、たまにおかしな時があるんだ。
どこか、何か、恋愛を通して自分が幸せになることを恐れているかのように、苦悶に歪んだ表情を私たちに見せまいと努力してることも知っている。全然隠せてないもの。
まぁ、見せまいとしているみもりちゃんの心意気は汲んであげないとね。言ってくれるまでは見ない振りをしてあげるつもり。
闇が深そうで頭も良くって一応同時期に初恋を経験なんてしちゃったみもりちゃんから見て、私の現状はどう映るんだろう。だから私は数いる仲良しの中からみもりちゃんだけに絞ってお悩み相談教室を開催したのだ。
「正直、私は朝道くんのことはあまり知りませんが」
「うん」
「肩の荷を下ろして、気楽に過ごせばいいと思いますよ」
「……なんで?」
ようやくと待ったみもりちゃんの回答は、謎だった。
気楽に過ごせないというご相談なんですが?
とはいえ、みもりちゃんは結論を先に申してからディティールに移ることが多いので、私も反応はしつつも先を促してあげる。
目だけで伝わったらしい、みもりちゃんは一つわざとらしい咳ばらいをした。可愛い。
「朝道くんの意図はわからないので、彼自身が言ったままを文字通りに受け取ったらいいんじゃないかしら」
「文字通り……何を? どれを?」
「『そう言うんなら、そうかもしれないね』」
「ええとお……?」
「蘭菊が『好き』だと言えば、朝道くんの発言は告白になるってことでしょう? 逆に『ただの友誼』なら、朝道くんの発言は告白じゃなくなる。どう?」
「朝道くんの想いを独断と偏見で捻じ曲げるほど私自由に生きてないよ!?」
暴論だ!
過去の朝道くんの言葉の意味を、どうして今の私が決めるのさ。随分とおかしなことを言う。朝道くんが私のことを好きか好きじゃないか、という問いの答えを、私が決めていいわけがない。
「怖い顔しないで」
「してない」
たぶんちょっとしてる、怖い顔。みもりちゃん、ごめんね。
「捻じ曲げる必要なんて。だって今すぐ決める必要なんてないんでしょう? これからゆっくり、じっくり時間をかけて決めたらいいじゃない」
「時間を、かけて。でも、朝道くんは、あれ以来何も言ってくれなくて」
「これから先、一ミリでもそういう形の可能性のある一歩を踏み出すなら、蘭菊、あなたの方からなのかもね。今の二人の関係で、今の朝道くんが言えることは言い切った、ってことなんじゃないかしら?」
みもりちゃんの話は難しかった。
私にはわかりづらい価値観だった。
でも、ゆっくり話してくれたから数秒の遅延でなんとなく彼女の言いたいこともわかった。
「でもそれってさ。みもりちゃんが言ってることってさ。朝道くん、私に対して好意はある。でも、好意を無理強いしたくない。だからって、選択を私に丸投げしてるって、そういうことじゃない?」
「ええ、表現に棘はあるけど、そういう理解をしているわね」
「それってさ。ずるくない? なんか、大事なところ、それこそ、恋愛で頑張ってほしいところを私に頑張らせてるって、いうか……」
「最初の小さな一歩が一番大変だって思いますけれど、言い分は認めましょう。確かに狡さ、小狡さを感じますわ」
なんで言い直したんだろう。小さいの一つで印象はさして変わらない。
彼の小さい一歩はでも、でも、私という存在を物の見事に変えてしまったのだから、侮れないのかな。それとも全然小さくないかも?
考えながら私、頭をぶるぶると振る。
違う違う、そんなことはいったんどうでも宜しくてよ。
第一、みもりちゃんが言ったじゃないか。みもりちゃんの推理が正しいなら、朝道くん、とっくに大事なところはもう終わらせているということなんだから。
第ニ、狡いと言ってる十数秒前に、好きかどうかは自分で決めたらいい、とかいう朝道くんキープ発言をしていたような。どの口が言うとるねん。
「急に近づかれるのは、ちょっと怖くない? 名前しか知らないのに、好きだとか。こっちは知らないのに向こうは私のこと知っているとか」
「……怖いね。私、みもりちゃんが知らない人から告白されてるの、ちょっと怖いもん。断って、乱暴なことされないかなとか、逆恨みされたりしないかなとか、心配」
「気にしてくれてありがとう。だから、初心で純で傷つきやすい私たちのことを考えてくれる人は、きっといきなりでびっくりしないように、馴染ませてくれてると思うの」
「馴染ませる……何を?」
「好きって感情を」
みもりちゃんの中では、朝道くんは私のことが好き、というので決めつけているみたいだった。
朝道くんは、私のことが好きで。
でも私は朝道くんのことをそんなによくは知らなくて。
そんな私に意識してほしい、でも急接近して驚かせたくない。
だから、「あなたに一歩踏み込みたいんだ」というスタンスだけを伝えて。
今はその許可を貰えるまでは何もしない。
みもりちゃんの描く朝道くん像は、まるで少女漫画に出てくる理想の王子様みたいだった。
全部が事実なら綺麗で美しいストーリーだけど、ここは現実。
あまりにも現実感が無さすぎるんじゃないかって、汚れた私の心は疑念を抱く。
「そんな、優しい人、現実にいないと思う」
「かもね。私が思ってるだけ。でも、内心ほっとしてるでしょう? 朝道くんがあの手この手でアプローチを仕掛けてこなかったこと」
「それは、うん。そうだね。安心した。安心して、きっと変なことはしないだろうなって信頼もあるからこそ、朝道くんから何もないのが、ちょっとだけ……」
もう安心したんだから。
少しは来てくれてもいいのに。
言葉にはしてないけど、私の態度を見てわかんないかな。
少しは来てくれてもいいのに。
私は散々見てるのに、全然目も合わないし。
少しは見てくれてもいいのに。
「って、伝えてみたら?」
「……なんか、見透かされてる感じが嫌。朝道くんも、みもりちゃんも」
「現に見透かされてるんだから文句言わないの。大体ね、蘭菊が悪いのよ蘭菊が」
「え、あれ、なんか語気が荒いよみもりちゃん」
「朝道くんより私の方が蘭菊と一緒にいる時間長いんですのよ? なのになんで私と同じレベルで朝道くんに見透かされてるの? 蘭菊あなた一体どこまで朝道くんに心を許したって言うんですの?」
「私が怒られてる、だと……!?」
どういう理屈だこれは。何故に怒られてんの私。
もー朝道くんとみもりちゃんと同格なわけがないじゃない。嫉妬も可愛いな。嫉妬し慣れてない感じがいい。
第一、文化祭の準備期間こそそれなりに朝道くんと喋ったけど、それ以前に話した記憶なんてほとんどないわけで。心を許した覚えも当然ないわけなのですが。
「『好き』だとして、いつ好きになってくれたのかも、わかんないなぁ」
「そういう一つ一つを、ちゃんと積み重ねたい。それがきっと、蘭菊の描く恋愛、といいますか、人間関係なんじゃないですの?」
「……それは、そうかも」
「朝道くんも自分の一歩が蘭菊に大きすぎた意識があって、蘭菊の十歩が届くまで落ち着いてるのかもね」
と、ものの見事に論破されまして。
いや、まぁ。
朝道くんが好きかどうかというのは、実はとっくの昔に終わった話で。
今は私自身の相談をしていたのだから。今動いていない私を動かす理由が欲しいって相談だったものですから。
こうして論破されたがったわけだ。
「ね、みもりちゃん」
「なぁに? 蘭菊?」
「私、ちゃんと、みもりちゃんのこと好きだよ」
「ありがとう。私も蘭菊のこと好きですわ」
「付き合おっか」
「絶対嫌」
方針決定。
一歩だけでいい。
私は彼に近づきたい。
***
私は近づく。
「あのさ……私、朝道くんのこと、知りたいです……少しずつ、ゆっくり」
彼は受け入れてくれた。
「そっか。ならまずは僕の好き嫌い、いや、苦手かな。知ってもらいたいな」
私は頷く。
「……うん」
***
「なんっか週末デートすることになったんだけどぉ!?」
「一歩がでかいわね」
「ど、どどどうしよう!?」
「落ち着いて。とりあえず着ていくものを考えましょう」
「他人事すぎるっ!!」
***
私は近づく。
「お、お待たせぇ」
彼は受け入れてくれた。褒めてくれた。
「ううん、ちょうど来たとこ。格好、可愛いね菊池」
私は喘ぐ。
「っぇぐぅ」
彼は受け入れてくれた。
「行こっか」
私は頷く。
「……うん」
***
「ら、落語に連れてかれた……」
「あら渋い趣味。どうだった?」
「おもろかった……悔しいことに」
「いいですわよね。私もたまに聞くわよ」
「カラオケにも行ったの」
「あらまぁ」
「あんまり上手くなかった……」
「あらあらまぁまぁ」
「ホントに苦手まで紹介するやついるかよぉ……」
「がっかりした?」
「可愛いかヨォ」
「ふーん」
***
彼は近づいてくれた。
「今度、菊池の好きなものも知りたいな」
私は受け入れた。
「うん、そうだね。あのね、だから今度の定期演奏会、朝道くんに聴きに来て欲しいの。頑張るから」
彼は笑ってくれた。
「あはは、クラリネットの音が聞き分けられるよう予習しないとだ」
***
「私の楽器も把握してたぁ」
「よかたね」
「演奏会なんか呼んじゃって、へ、変かな!?」
「いんじゃない?」
***
***
***
「ねぇ、みもりちゃん」
「はい?」
「私ね、たぶん、ようやくね、わかった気がするの」
「何がですの?」
「私は、自分に自信がなかったから。みんなの方が可愛くて、みんなの方がかっこよくて、みんなの方が頭が良くて性格が良くて。私は、私には高価なソファなんてご身分に合わないって、そう決めつけてた。
でも、みもりちゃんが、千夏ちゃんが、満智ちゃんが、私が大好きなみんなが、私のことを「可愛くて、かっこいい」って言ってくれるの。私は、大好きなみんなの言うことだったら信じられるよ。
きっとこれはね、お互いに、返しあってる。
お互いに、尊重しあってる。尊敬しあってる。信じ合ってる。信頼しあってる。
高尚なものじゃない、世の中にありふれた幸せの形の一つだけど、私にとっては……大事な大事な唯一。
その代わり、それに見合う人にはなりたいなって。
みんなが大好きだから、大好きなみんなに私のことも大好きになって欲しい。
それでソファなんか、座り心地一つで、私の心象一つで、買うかどうかは私が決めてやるんだから。我が儘なんかじゃないよね?
ソファも私に買われてさぞ満足なことでしょう、ってね」
これが、今の私の結論。
***
彼は近づく。
「菊池のことが、好きです。大好きです」
私は誤魔化す。
「私、もうシンデレラじゃないよ?」
彼はもう一歩近づく。
「関係ないね。シンデレラ役もいいけれど、菊池は菊池してる時が一番可愛いよ」
私は尋ねる。
「へぇ、例えばどんな?」
彼は揶揄う。
「家具屋さんでソファ全部に座って、どれがいいかなぁっ、て真剣に悩んでる時とかだね」
***
「なんか、これまでの比喩的に! どうかなぁっ!?」
「男を好き放題値踏みしてるみたいね」
「みなまで言わないで!」
「で、結局付き合ったの?」
みもりちゃんの問いに、私たちの解は一つだけ。
「約束したの。毎年一度はこうして、ソファを一緒に選ぼうって」
いつだったか、恋愛をソファに例えたことがある。
好きな人だったらなんだっていいし。
好きな人とだったらどんなソファでもいいや。
なんだ。大体一緒じゃん。