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運命を操るのは  作者: 安藤真司
本編 運命を操るのは
16/41

無理矢理

 生徒会は緊急会議に入った。

 だがその内容は、五日後に迫った文化祭の話ではなく、織上詩織という一人の少女が消えた、というものである。

 知恵としては全員分欲しいところではあるが、人数だけ揃えても仕方がない。文化祭の方も、今の所は順調ではあるものの、全員がきっちり予定通り進めれば、の話である。

 その辺りの線引きを正しく見極め、生徒会長である奏音は友莉の優芽には仕事に戻るよう命じた。

 最低二人は文化祭の業務にあたらなければ厳しくなる可能性がある、と判断してのことである。

 友莉も優芽も、何か物言いたげな雰囲気はしていたものの、奏音の判断と自分にできることとを冷静に考えれば確かに残っても仕方ないかもしれないと納得し、業務の方に戻った。

 友莉は文化祭実行委員との打ち合わせのために生徒会室を後にし、優芽は書類整理のため、一応は話し合いが行われている生徒会室に残った。

 テーブルを囲うのは、奏音に櫛夜、それに弥々と、当事者であるみもりの四人。

「存在が消去される、か。で、弥々はこれ、何が原因だと考えてる?」

 先ほど弥々は断言した。

 これは、今起きているのは自分たちの持つ不思議な力では対処できない、と。

 だが、だからと言って考えることを放棄するわけではない。

 大切な生徒会の仲間が困っているのを放っておけるはずがない。

 櫛夜が尋ね、弥々も真摯に答える。

「直接的な原因は能力だと思います。存在をなかったことにする能力。そんなものでもなければ、こんな非科学的で非常識な現象ありえないんじゃないかって」

 非科学なのは能力そのもので。

 非常識なのは少女一人の存在を消してしまえる精神のほうだ。

 皮肉交じりな弥々の見解に櫛夜は同意を示した。奏音もまた頷くことで肯定する。

「恐らくは何かしらの能力による現象、という意見には私も賛同かしら。こうして話をされた今でも、詩織ちゃんのことを思い出すことは出来てない」

「だな、俺も出来てない。ただ……能力が本当に存在の消去なのかは、微妙なところだよな」

「……へ、そう、ですか?」

 意外な意見がすぐに出てきたことにみもりは驚き、身を乗り出す。

 その様子が、あたかも次なるヒントを得たかのような希望を持ったからだとすぐに見抜いた櫛夜は首を横に振る。別にそういう気付きがあったわけではない。

「例えば森崎が織上詩織のいない並行世界に来た、とか。俺たちが忘れてるんじゃなく森崎の記憶に織上詩織の存在を植えつける力があるとか。目の前で見えている現象そのものじゃない場合があるかもなって」

 櫛夜はさらりと二つの可能性を提示した。本気でそう考えている、ということではなく、一つの考え方に縛られるな、という注意だろう。

 相手にしているのが、如何せん、記憶だとか存在だとか。通常考えることのないものだ。

 考えられる可能性は全て検討しておくべきである。

「でも、平行世界だなんて」

「いや俺も別に信じてないけどな。夢叶が時間を操れるんだ、常識なんか無視して、ゲームとか映画とか、そういう発想で望んだほうがマシ、だと思う」

 そうでも考えないと、整合性が取れない。

 いや、整合性が取れていないからこそ、突飛な思考が必要なのかもしれない。

 櫛夜の意見はしっかりと頭に叩き込んで、みもりは櫛夜と奏音に疑問を投げかける。

「それで、とにかく何かしらの能力があるとして、です。そんな能力があるとして、一体誰が、どんな理由で、この力を使ったんだと思いますか?」

 これは、弥々と少しだけ話した内容だ。

 みもりは、自分自身を疑った。

 詩織のことを覚えているのが自分しかいないのだから、自分が無意識下でなにかを願ってしまったのではないか、と。そんなみもりのことを、弥々は本気で叱っている。みもりは大切な友人に対してそんなことしないでしょ、と。

 あまり自分を信じれるみもりではないのだが、そう言ってくれる弥々のことくらいは信じるとして、みもりはその言葉を受け入れた。

 だが、そうなると難しいのは、だ。

 やはり、こんな出来事を引き起こしている人物が、わからない、ということである。

「……まぁ、まず普通に考えて、怪しいのはやっぱり、みもりちゃん、よね。みもりちゃん自身がそうしたかどうかは別にして、みもりちゃんにだけ記憶が残っているのだから」

「あ、それはもう話しましたですッ。みもりがどう関っているのかはわからないですけど、みもり自身じゃない、って、私が保証しますです」

 当然の結論に行き着いた奏音に、弥々が手を挙げて付け加える。会話のテンポがやたらといいのは経験の賜物なのだろうか、とみもりは感じる。

「織上、を恨んでいる奴がやった、なんてことはたぶんない、よな。高校生も人を殺そうとしてしまうことはそりゃあるけど、だからと言って、ここまでやることに抵抗を覚えないってのは、あんまり」

 考えられない。考えたくない。

 どちらかを濁して、櫛夜は言葉を切った。みもりにはその続きがとちらなのかわからなかったが、きっと櫛夜の一番の理解者である弥々は、櫛夜のそうした機微や含みを全て読み取ることができるのだろう。

「ただ、そうね。抵抗を覚えている、とは思うけれど。それでも見かけ上は普通なまま、無理矢理この状況を作っているってことも、ね。あるかもしれないわ」

 無理矢理、とは言うが。

 自分が何をしたかを理解した上で、自覚した上で、普通でいられるような人間は。

 はたして普通なのだろうか。

「じゃあやっぱり、単純に詩織がいなくなって欲しい、ってよりは、詩織がいなくなったことによる、副次的な何かが、原因なのかな」

「たぶんな……ただ、今のところ俺にはその、織上詩織が消えて得られるものが何一つ考えられないんだが」

「私も同じような状態かしらね。そうね……あと気になるのは、その人、だから、こんな現象を引き起こしている誰かは、詩織ちゃんのこと、覚えてるのかしら」

 なるほど。

 確かに、自分でこのような状況を作った本人に、その自覚があるのかないのか。

 詩織のことを覚えているのかいないのか。

 これもまたなんとなくで推測するより他ないが、重要なことだろう。

 そのことを踏まえても、やはりみもりは自分のことを信じられないのだが。

「そうだなぁ……でも、俺たち二年生はまぁまだいいとしたって、すごく仲良かったはずの弥々ですら記憶がないからなぁ」

 そんな人物、そうそう見つかる気がしない。

 逆に言えば、詩織を覚えている人物がいたなら、重要人物ということになるのかもしれない。もっとも、自分にやましいことがあるならば、詩織の事を覚えていても、忘れた振りを、しているかもしれないが。

 などと、これ以上議論が進まないか、という雰囲気を全体で醸し出していると。

 弥々が突然立ち上がった。

 また突発的な何かだろうか、と若干身構えるみもり、櫛夜、奏音。

 三人からの訝しげな視線を華麗に流して、「どうかした?」という顔で、弥々は軽く目配せする。

 どうかしたと尋ねたいのはみもりたちである.


「じゃあ私たちにできるのはここまでだ。みもり」


 弥々は淡々と事実を告げた。

 しかしそれは、突き放すような声色ではない。

 むしろ、慈愛に溢れているようで。

 みもりはただ、次の弥々の言葉を待った。

「私たちは、詩織のことを知らない。だから、ここまで。詩織が消えたことの証明と、詩織がどうしていなくなったんだろうって、誰の思惑で誰が画策したんだろうって、誰がそんな能力を持ってしまったんだろうって。ただ疑問を投げかけるので、精一杯」

「……それでも、私は、十分ですわ」

 それでも、みもりが今落ち着いていられるのは、他でもない弥々のおかげなのだから。

 十分、真実を追求する可能性を提示してくれた。

 しかし弥々は首を横に振る。横に振り、隣に座る奏音に近寄って、その両肩に手をかけた。

 先輩に対してもボディタッチを恐れない弥々がすごいのか。もしくはそんな仲を築けている奏音がすごいのか。姉のいる弥々だからか、一見奏音に甘えているかのように見えるその姿はまるで姉妹だ。

「十分じゃないよ。みもりが今、どんな気持ちでいるのか、私は全然理解してないし、たぶん理解できないままなんだろうけど、私は納得してない。私は私がみもりを助けられないことを、満足してない」

「ええと、でもさっき、できることはここまでだ、って」

「うん。今の私にできることは、ここまで。だけど、ちゃんと頼って。みもりはこれから詩織を探すんでしょ。絶対に見つけるって決めたんだよね。たぶん良くないことも起きるし、辛い現実にも出会うよ。でもでも、ちゃんと私たちを頼って。私を頼って。今はこれしかできないけど、みもりがまた情報を掴んだら、その時にできる精一杯をちゃんと伝えるから。だから絶対一人で抱え込まないで。約束」

 弥々は間髪入れずに長い台詞を全て言い切った。

 みもりがその言葉を租借しているうちに、弥々は頭を奏音の肩に乗せる。異様といえば、異様な光景だろう。

「奏音先輩」

「なぁに、弥々ちゃん」

「みもり、少しお休みさせてください、生徒会の仕事」

「んーそうねぇ」

 正直なところ、難しいだろう、とみもりは、発言した弥々でさえもそう思っていた。

 もう次の土曜日には文化祭初日で、今は月曜日だ。差し迫っている。みもりという貴重な人材をここで失うわけにはいかない。

 なお、先ほど確認したことだが、みもりが知るところの詩織が庶務として働いた分の成果は全てみもりと弥々がやったことになっていた。弥々にはその記憶があるが、みもりにはない。

 そのあたり、何かヒントになっているのかもしれないし、なっていないのかもしれない。

 ともかく、文化祭まで残り少ない時間、色々とやらねばならないことがある。

「優芽、どう?」

 奏音はいまだ生徒会室に残り作業をしてくれている優芽に質問を投げた。

 だが、どうやら奏音の中では既に結論が出ているらしい。それを見透かした優芽は作業する手を一切止めることなく、言葉だけで応えた。

「いいんじゃ……ない?」

「そう。ならいいわ、みもりちゃん、あなたちょっと体調が悪そうね。風邪、私たちにうつされても困るからちょっと休みなさい」

 あらかじめ用意していたかのようにすらすらと嘘をつく。

 生徒会長がこうも流れるように虚言を吐くというのもなにやら可笑しな気もする。

「でも、奏音先輩……」

「みーもりちゃん。私たち、頼りない?」

 後ろめたさを感じるみもりを、奏音はからかってやる。

 頼りないはずがない。

 みもりはよく知っている。

 奏音だけじゃない、生徒会の二年生は皆優秀だ。

 学業はもちろんだが。

 みもりはよく、知っている。

「……奏音先輩、私、知ってますわ。奏音先輩が、いえ、奏音先輩も、櫛咲先輩も、優芽先輩も、友莉先輩も、弥々も詩織も、そこに綾文先輩と光瀬先輩を加えても構いません。皆が、皆、私も知らないところで、一人で苦しんでいたこと」

 誰もが皆、苦しんでいる、そんな世界だ。

 それを表に出すことができず、心が少しずつ蝕まれている。

 ほんの少し、素直になることができればいいのに。

 それだけで、いいのに。

「一人じゃないわ。私には友莉と優芽がいた。でも、私は、優芽を助けるのに時間がかかっちゃった」

「ふふ、確かに遅かった……でも、来てくれた」

「助けてって、私が無理矢理言わせたんですけどね」

 無理矢理助けてと言わせる絵面はあまり、健全だとはいいづらいが。

 二人にとっては大切な思い出らしい。

「だから、一緒に悲しんでくれる詩織ちゃんのこと、みもりちゃんが見つけてあげないと、でしょ?」

「はい……はい!」

 そのためのフォローはくらい、任せなさい、と。

 本当に頼りになる先輩と、そして、親友だ。

 嬉しくて涙が込み上げてくる。

 けれど。

(泣くわけには、いきませんわ)

 意識して、みもりは下唇を噛む。

 涙を零さないように、自分に強くあるために。

「何かわかったら、すぐに相談します」

「もちろん私たちも何かわかったら、すぐにみもりに教えるよ」

「ええ、ありがと、弥々」

「ん」

 弥々がさきほど言ったとおり、恐らく現状わかっていることは全てまとめた。できるところまでは考えた。

 記憶がない以上、一度みもりが自分で持ち帰って整理する必要はあるだろう。

「ただ、その、みもり、やっぱり一人で、大丈夫……」

「ちょっと、追い返しておいてどういうことかしら?」

「追い返してないよッ!? もー。私たちにできることは、確かに、ない、と思うけど、それはなんていうか、理論的には、っていうか、感情的には一緒にいてあげたいような、でも邪魔したくもないような」

 あれこれと呟いているが、考えが上手く纏まらないようだ。

 言う時はばっさり言ってのけるのに、案外いざという時になると悩みだすのは弥々のチャームポイントだろう。

 現に、悩ましい顔を浮かべている弥々はとても可愛らしい。

「いいのよ。大丈夫。本当に駄目だって感じたら、すぐ弥々に連絡するから」

「うん、信じるよ? その言葉」

「ええ、信じて」

「わかった」

 みもりと弥々は頷いて、意思を確認し合う。

 そしてそのままみもりは生徒会室を後にした。既に放課後なので、恐らくは家に帰っていったのだろう。

 と、いうか、帰ってもらっていないと。


 弥々が無理矢理(・・・・)帰した(・・・)意味がない。


 みもりが出て行った生徒会室の扉をじっと眺める奏音と櫛夜。そして、何か糸が切れたかのように、ぐったりと奏音の肩に再び頭を乗せる弥々。

 その頭を、奏音は撫でてやる。かと思えば、これまで作業からは離れなかった優芽までもが来て、一緒に頭を撫でた。

 櫛夜はその様子を疲れた様子で眺めている。

「お疲れ、弥々ちゃん」

「ちょっと、突き放しすぎた、ですかね」

「ううん……あれくらいじゃ、ないと……みもりちゃん、帰らなかったと、思う」

「私もそう思うわ。みもりちゃん、あれで強情だから」

「……もう、みもりのあんな姿(・・・・)、見てられない、です」

 あんな姿、と弥々は形容したが。

 ひどい顔だった。

「ちょっとでも間違えたら、壊れちゃうかと思った」

「その判断は正しいと思うぞ、弥々」

「櫛夜……先輩。でも、私、何も、して、あげれなかった、です」

 みもりは、すぐにでも壊れてしまいそうな顔を浮かべて、ずっとずっと、苦しそうだった。

 弥々にお礼を言う時ですら、目が死んでいた。

 まるで光を失って、目の前すら見えていないかのようだった。

 やけに体は小さく見え、小突けばそこから崩れてしまいそうなほど脆弱そうで。

 体は小刻みに震えていた。

「あんな反応見せられたら……そりゃ信じるよな、織上詩織がいたって、こと」

「当たり前です。私と違って、みもりは嘘を吐かないです」

「弥々もな。二人がこんなじゃ、俺たちは信じるしかない」

 みもりも弥々も、冗談は通じるほうだ。

 だからこそ、嘘と本当の線引きはできる。

 今の二人は、本気で悩み、本気で考え、本気で助けを求めていた。

 それに気付いたから櫛夜も奏音も、すぐに態度を変えることができたわけだが。

「やっぱり、一緒にいたほうが、良かった、でしょうか」

 弥々はみもりの異変に当然気付き。

 話を聞いて、みもりがいつになく不安定な状態になっていることを知ってすぐにでもみもりを落ち着かせたかったのだが。

 幾分、みもりは弥々の手には、負えなかった。

 散々泣いたかと思えば急に前向きになって、かと思えば感情を無くしたかのように落ち着きだす。

 感情の振り幅がやたらと大きい。

 大きすぎて、みもりが一体どんな状態になれば安心できるかもわからず、弥々の頭まで麻痺してしまっていた。

 初めて見る親友の姿に、弥々はどうすることもできなかった。

 自分一人ではみもりを休ませるのが難しいと判断して、弥々は方法を変えた。

 親友のためならなんだってやるであろうみもりに対して、告げたのだ。

 自分達は、手伝えない。だから一度帰れ、と。

 言い方は違えど、弥々が結論づけたのはそういうことだ。

 ただの拒絶だ。

 それ以上でも以下でもない。

「ええ、みもりちゃん、私たちがいると、頑張りすぎちゃうっていうか。無理なことでもやろうとしちゃうから。一人なら、泣きたいときには泣けるだろうし、辛いときには辛いって言えると、思う。みもりちゃんの場合」

 奏音はそう言って弥々の判断を支持するが。弥々自身も、自分の判断が間違っていたとは思わないが。

 問題の解決には、なっていない。

 自分たちの前では無理をするかもしれないが、それとまったく同じくらいの確率で無理をするかもしれない。

 そのとき、側にいなければ止めてやることも、みもりの思いを聞いてやることもできない。

 『親友だ』と言っておいて、最善の策が、『見捨てる』だなんて、そんなことは。正しいと感じていたとしたって、そう頭が導き出したとしたって。

 間違っているのだと、弥々の心は訴えかけ続けていた。

「正しさなんてわかんねぇよ。この世界は全部結果論だ。だから弥々の選択が客観的に見てどうかはわかんないけど、それを、結果正しくするために動かないと、だろ?」

 櫛夜は、弥々の気休めにしかならない肯定も、否定も、しない。

 判断がどうだったかではなく、これからどうするかを、考えなければならない。考えるだけでなく、行動しなければならない。

「しかし……体育祭の時といい、今回といい、一体なんなんだよ。この学校やっぱおかしいんじゃねぇか?」

 妙な能力が備わった人間が当たり前に生徒会に複数人いたり。

 時間だとか空間だとか存在だとか。

 人間が生きていく上で前提条件だ。誰もそれを疑わない。疑ったとしても、扱えない。人間にどうこうできる概念ではない。

「そればっかりは……もう私たちにはわからないわよ」

 奏音も櫛夜と同じく、諦めたように溜息をついた。

 どうしようもないことが、世界にはたくさんある。そんな当たり前のことを、当たり前だからこそ、高校生にはその理想と現実の壁が立ちはだかる。

 これまで作業の手を休めなかった優芽が、奏音と櫛夜それに弥々が囲む机にやってくると、目の前の事象に打ちひしがれている三人に、間違えてはいけない、とばかりに警告を伝える。

「どうしてこんな怖いことが起きているのか……わからない……けど」

 自然災害だというのであれば、仕方ない。

 しかしながら、そうでないというのなら。

「いっつも一番怖いのは、私たちの、感情だよ……私が言うのも、なんだけど」

 まるで。

 人間には感情があるから間違えるのだと。

 そう言わんばかりの優芽に。

 その場の誰も、否定することは、できなかった。

 きっと織上詩織が消えた理由も、そこにあるのだろうと。

 誰もが信じて疑わなかった。

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