戦国譚
時は戦国。次々と若者が戦場へと駆り出される。
そしてそれは、遂に名家の次男である次郎にも訪れた。
次郎は内気な性格であり、先に戦場へと赴いた兄"一郎"とは真逆の性格だった。
次郎には、妻"赤子"がいた。
赤子は、気配りができ、先のことを読み行動するとこのできる出来る妻だ。
「あなた、明日でしょ?」
「ああ」
「これ。お守りです」
着物の布が擦れて音がたつ。そして、帯の間から"安全"と刺繍された赤色のお守りが現れた。
「ありがとう」
「絶対に、帰って来てくださいよ?」
心配そうな声音だ。
「ああ。臆病者と呼ばれても、愚図と呼ばれても私は危なくなれば逃げ、生きて帰る」
「はい」
刻は夕刻。綺麗な満月が空に浮かびほのかに光を放っている。
「どうぞ」
最後の晩餐の如く、次郎は赤子と杯を交わす。
「こうやってお前と呑むのも久しいな」
「そうですね。この前はこのような気持ちではなかったですが」
「私もだ。明日を思えば憂鬱だ」
「ウチもです」
静かに酒をすする音だけが居間に広がっていく。
いつまで経っても、楽しげな雰囲気にはなりそうにない。
「なぁ、赤子よ」
「なんですか?」
「散歩にでも行くか」
「今からですか?」
次郎は、静かに頷き立ち上がった。
それに合わせ、赤子も立ち上がる。
虫の鳴き声が、綺麗に聞こえる。
そして、ささやかに吹く風ですすきが揺れる。
「満月だな」
次郎は、近くの湖の畔まで来ると空を見上げ呟いた。
「そうですね。
くどいようですが、必ず帰って来てくださいね。ウチも、待ってますから」
それから2人は、黙って満月を見上げていた。
湖の
揺れる水面
月一つ
闇を切り裂き
照らし出すかな
「必ず帰ってくる」
次郎はそう締めると、赤子の手を引いき、2人は帰路についた。
初めて短歌を作りました。難し買ったです。
僕なりに頑張りました笑