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第105話(計)

 轟音に目を開けてられないほどの光が、何度も、何度も、何度も……って一体なにさっ?

 空は晴れてるのに何が…だなんて、音と光の発生源に目を向ければ……ミノア?


「おお……」

「確かに、展開するまでが早いですな」

「しかしあの魔力量。さすがはフォルツァンドというべきか…」


 観客席から聞こえる声と、楽しそうなミノア…ふうむ、なるほど。どうやらミノアが杖使って、特大の雷を落として遊んでるみたいだ。

 いつまでも始まらない『お披露目会』に不満垂れてたお貴族様たちの注目が、ミノアに集まっていく。

 ミノアが、なんで雷なんて落として遊んでるのか分からないけど、きっと暇つぶしだろう。

 …まさか、それを僕らに向けるとか…ないよね? 


「あ、ごめん! えっと、宝珠の力で無理やり働かされてるってことでいいのかな?」


 思い出した。僕、生のドラゴンと話してたんだった。慌ててドラゴンに顔向ければ、無機質な目が僕を睥睨する。


(詳しく語るつもりはない……我は全力をしてお前と…そこな魔法師を排除せよと指示……命を下されたまでよ)

「それってつまり…」

(我が死ぬか…お前たちが死ぬか……どちらかを満たすまで…終わらぬ…そういうことよ)


 大きく翼がはためく。強風を受けて、服やら髪やら髪飾りやらがはためく…って髪飾りはマズイ! 飛ばされる、飛ばされるっ!


「ちょ、ちょっと落ち着こう! えっと、とにかく、そんな勝手に決められても困るし! しかも、どっちかやれれるまでって、どうしてさ!」

(……我に問うか…)

「あそっか…命令だもんね…知らないよね、ごめん」


 幻影だから安心できたのに、現れたのは、まさかの本物ドラゴン。

 それも、知恵持って、人間見てすぐさま襲い掛かることをしない、理性あるドラゴン。

 ついでに、僕とも会話できるなんて、結構な年月生きてるだろうに…


「でもさ…」

(どうした)

「僕が言うのもなんだけど、あそこにいるミノアさ、魔法師として規格外でさ。持ってる杖も僕の傑作で…だからその…」

(……言うが良い…)

「ミノアと君が戦ったらさ、君、死んじゃうよ?」


 言えっていうから言ったけど、コレ、ドラゴンにとって、矮小で構う価値もない僕らに言われたくないだろう台詞第一位だと思う。

 だってさ、見た目は人形みたいで大人しそうなミノアにだよ、負けるって言われたら…そりゃあ…怒る、よね?


 色々覚悟して、恐る恐る見上げると、ドラゴンは怒りの声を上げることなく天に頭を向けてたり。


(構わん……人間に害されるのは癪だが……認めもせん人間に使役される方が…より……死んでいる)

「え、そ、そんな簡単に諦めないでよ! 駄目だって! ちょっとはミノアに抵抗…じゃなくて! ええと、とにかく諦めちゃ駄目だって!」

(……変わった人間よ……我を哀れむか…庇うか)


 ずずず、と音立てて巨体が地面に伏せる。凶悪な顔が僕の目の前までやってくる。赤い目が陽光を反射する。


「へ? そんなことしないよ」

(ふむ…)

「僕は君を哀れみもしないし、庇いもしないよ…だってミノア怖いし」


 フリギアも怖いけど、ミノアも怖い。

 普段から、挨拶代わりに僕を抹殺しようとしてるのに、邪魔なんてしようものなら……あ、冷や汗が。


(では…なんとする…)

「助ける! 僕がさ、君を助ければ、色々解決するんでしょ!」


 多分。


(…ほう)


 僕らから離れた所、闘技場の中央では火柱が上がる一方で、巨大な氷柱が地面を抉ってたり、危険地帯と化している。

 なんだかミノアの魔法が過激になってきてるけど、僕らの命、大丈夫かな…そろそろ心配したほうがいいような。


「あれ、僕に向けたりしないよね……じゃなくて。つまりさ、君は操られてるわけでしょ? で、その、埋め込まれた宝珠が原因だから、壊せばいいんでしょ? なら壊そうよ!」

(………)

「だからさ、宝珠の場所、教えて欲しいんだけど」

(虚言…ではなさそうだな)

「嘘じゃないって。僕らはさ、やると言ったら、やるからね! 相手に嫌がられても、やるから!」

(………逆鱗…我の喉元……そこに埋められている)


 僕の決意を前に、壊せるなら壊してみろ、といわんばかりの口調…ううむ、信用されてないぞ、これは。

 でも、ドラゴンは自分を操作している物の場所が分かっているっていうのに、破壊しない。てことは…


「自分じゃ、壊せない、んだよね?」

(何度も試した……が…この状態では死ぬことも叶わん)

「うん分かった。それじゃあさ、見せてもらってもいい?」

(………)


 僕のお願いに、ドラゴンは巨躯を持ち上げ、喉元を目の前に持ってくる。逆鱗って言えば、ドラゴンの弱点の一つなのに、こうもあっさり見せてくれる。

 手を伸ばして、ドラゴンの鱗に触れる…おお、なんか硬質で冷たくて、それでいてまったりとした、独特の肌触りだ。きもちい。


 折角だから、これ一枚剥いで、武器にでも………っと、今、僕何を考えて…そうだ、宝珠だ宝珠。

 鱗を触り触り、該当する場所を探し探し……その…ちょっと場所が…広すぎて…見つからないんだけど……


「ええと……」

(右だ)

「右? 僕から見て右、かな……お」


 言われて発見、鱗とは違う、つるっつるな感触。見れば、腹部の緑と同じ、緑色の鉱石が埋まっていた。

 見た目は、緑色の宝玉、宝珠にも見えるけど、軽く解析してみても、ミノアの杖に埋め込んだ、宝玉とは全然作りが違うや。


「これって、魔法回路ってやつだよね? ううむ、頭がごちゃごちゃしてきた…」

(…さて……お前に破壊できるか)

「出来るけど…」


 諦めたような声が響く。僕はといえば、もう少し宝珠の中身を知りたくて、手を置いたまま。と、突然そこが発熱してきて、思わず手を離す。


「あつつ! あつつつ…」

(我が破壊できぬように……破壊しようとするものを害する……まこと人間は卑劣だな)

「へえ、今の防衛機構なんだ…ってあれ?」


 それってさ、もしかしなくても、宝珠破壊したら僕、危なくない?


(考えている通りよ……自らの命が惜しい……それも正しきことよ…)

「……」


 ドラゴンは僕の考えを読んだかのように、言う。けど。

 いつの間にか伏せていた顔を上げて、ドラゴンの格好いい顔を見上げる。


「大丈夫、やる。出来る」

(…勇気と無謀は…異なるものぞ…)

「大丈夫、安心して! だってこれ、呪いだから!」

(……好きにするがよい…)


 言って、ドラゴンは僕を見つめ返す…よっし、やる気が出てきた! 


 そうと決まれば…

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