表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/35

第104話(計)

「召喚魔獣? だっけ。ミノア、怪我には気をつけてね」

「頑張る」

「う、うん」


 ミノアが手加減一切なしで頑張ると、あの観客席も無事じゃ済まないような気がするけど…大丈夫だよね、うん!

 清清しい青空を見て、視線を真正面、硬貨が点々と置かれた地面に戻す。


「本日相対してもらう召喚魔獣はポンディラク。雷と水を操る、攻防に優れたドラゴン」


 カトレア様の言葉に続いて、硬貨が淡く輝きだす。

 同時に、各硬貨の四方から魔力の線が伸びて、繋がって、巨大な召喚陣を形成していく。


「おおお。すごい…すごいや…」


 完全に計算された魔力の動きに、すんごく感動。初めて見る光景から、目を離せない。

 観客席のお貴族様たちからも、驚嘆と嫉妬が混ざった呻きが飛んでくる。


 そんな神秘的っぽい光景に、だけど、隣のミノアだけは首を傾げて杖を前に差し出している。

 …うん、杖を試したくて仕方ないのは分かるよ。けど、なんで首傾げてんだろう…?


 内心で首傾げてると、召喚陣が完成。

 四方八方に伸びてる魔力の線が輝くと、そこから虚像が、カトレア様が言うドラゴンの虚像が闘技場に実体化……って。


「あれれ?」


 カーライルから聞いた話じゃ、召喚魔獣、生きてないっぽいから、意思なんて無いんじゃ、とか勝手に思い込んでたけど……


(…人間どもが……)


「なんで? 声、聞こえる? どうして?」

「聞こえる?」

「あ、いや、なんでもないよ」


 黒に近い灰色の鱗に、緑に輝く翼と腹部をもった巨体。

 大きな赤い目の下に、これまた大きな口、鋭い牙が並び、四本の足先からは鋭い爪が飛び出していて。


 完全に実態化した尾が、どうにもできない不快さを示すように地面へ叩きつけられて、大きな音と砂埃を立てる。


(下らん…がよかろう……矮小な人間の指示とやらに…従おう…)


「指示……? 何のことさ?」


 聞こえる『声』も凄く不本意そうで。

 ううむ…なんだろ、すんごく、とっても良くない感じが…ていうか、この嫌な感じって、これまさか…


「さあ、ミノア嬢。遠慮なく戦ってくださいね」

「うん」

「万が一、危険だと判断した場合には、召喚を解除するわ。だから、安心して頂戴」

「うん」


 なんかおかしい、なにかがおかしい。強烈な違和感と、この、胸からもやもや漂ってくる、嫌な予感。

 カトレア様の声に、ミノアは杖を黒と緑のドラゴンへ向け…


「あ、ミノア! とりあえず、ちょっと待って!」

「燃やすの」

「ごめん、燃やすのはさ、ちょっとだけ待って。僕、気になることがあって」

「うん」


 僕の制止に、ミノアは火炎球を放つことなく、杖をおろして下がっていく…なんか珍しい光景見ちゃったけど、それどころじゃない。

 慌てて、伏せた姿勢から起き上がったドラゴンの前に出る。僕の数倍先の高さにある、敵意全開の顔に目を合わせる。


「ねえ! 指示ってなにさ!」


(…お前……人なりて…我の言葉を…)


 尋ねてみれば、赤い眼が細くなって…これ、間違いない…本物だ! 本物のドラゴンだ! 初めて見た!

 おお! 本物召喚しちゃうだなんて、さっすがナントカ国! 凄いや! 言葉に出来ない感動と、嫌な予感が胸いっぱいに広がって…


 …じゃなくて。


「色々あって…ねえ、君の言う指示って…何?」


 大体僕のせいだけど、いつまで経っても模擬戦が始まらないことに、貴族たちが不満の声を上げ始める。


(言葉も分からぬ人間どもに……愚かな我は宝珠を…埋め込まれたまでよ)

「宝珠ってあの宝珠? 埋め込む? 君に?」

(何も知らぬか……やはり…人は愚かよ)


 怒りに響く声に、つい、後ずさる僕。

 …どうやら僕らの言う、杖とかに埋め込んでる宝珠と、ドラゴンが示してる宝珠は違うものらしい。

 その言葉を口にしたくもない、っていう感じがひしひしと伝わってくる。


「ごめん……」

(我の…浅慮の報い……人であるお前には…関係のないこと…否…そうでもないか……)


 音が小さくなる。独り言っぽいけど…


「僕にも関係あるの? 僕は、その、ソレのこと、知らないけど?」

(我の声が届く……ならば構うまい)

「なにが……?」


 聞くと同時、闘技場全体に振動、轟音、目を開けてられないほどの光が走り抜けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ