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第96話(計)

 僕の髪の毛を容赦なくいじくり始めるミノア。

 もうこうなったら誰にも止められないし、止めようと思えば魔法が群れをなして飛んでくる。


「…というわけでさ。よくよく考えてみても僕の扱い、なんか酷く…あの、ミノアさ、いつ人来るか分からないから、ちょちょいと終わらせてくれたら嬉しいんだけど」

「いや」

「うん…」


 ということで。抵抗とか考えないで、ここは潔く諦めよう。

 時間潰しに雑談でもしよう、そうしよう。


「ミノア、今日のこと、何て聞いてるの?」


 というわけで、ご自慢の櫛で髪をすいているミノアへ質問。


「杖くれるの」


 熱心に手を動かすミノアは、僕の髪の毛に向けて、そう答えてくれる。


「うんまあそうだけどさ、ほら、具体的に、こう…何か言われなかった?」

「お菓子くれるの」

「詳しいことは聞いてないんだね」


 どうやらミノアにとって、今日は、杖とお菓子をくれる日っぽい。なるほどなるほど。

 ということは、実は見物人とかが沢山来てて、杖の実演するってことも知らない可能性が。


「僕も詳しくは知らないけど、この子使って、ミノアが皆に魔法、見せるんだって」

「………」

「魔法って言えば、ところでさ、ミノアはどんな属性の魔法が好き?」

「焼くの」

「うんやっぱり焼くの好きなんだね…あ、僕焼くのは止めてね」

「………」

「ううむ、やっぱり杖とミノアじゃあ、建物が耐えられないよなあ。一体どうするんだろ?」


 余計なお世話だけど、ミノアは元々手加減とかせず超火力で魔法展開してるわけで。加えて、僕自慢の杖がある今なら、辺り一面、地獄絵図になること間違いないわけで。

 腕が立つ魔法師が何十人かで、それも全力で防御壁でも展開しないと、色々耐えられないと思うけど、本当にいいのかなあ。


「ま、いっか!」


 散々、フリギアと目が合うたびに、っていうぐらい、一切誰とも口利くな、余計なこと喋るな聞くな黙ってろ、って言われたから黙ってるよ、ふん!

 けど、だけどさ。ミノアがお城とか破壊したら流石にマズイんじゃ?


「むむ…む」

「大丈夫」

「………えっ?」

「大丈夫」

「大丈夫? 何が?」

「城」

「お城が大丈夫? ミノアの魔法でも、壊れないって?」


 ほっほう、どうやら僕らが今いるお城は、凄まじく頑丈なのか…と思えば、どうやら違うみたいで。


「兄様がいる」

「あそっか、レガートさんがいるっけ」


 そっか! ミノアのこと知ってる人がいるなら、対策もバッチリだね! うんうん、そうだそうだ。

 僕が心配するようなこと、向こうはしっかり対策立ててるだろうし。余計な心配だったや。


「姉様もいるの」

「ねえ…ええっと、レティシアさん、だっけ?」

「そう」


 レガートさんから、ちらっと聞いた話によると。


 ミノアが言う『兄様』はレガートさん、『姉様』は次女のレティシアさんを指す、とのこと。二人ともミノアと仲良し、とのことで。

 じゃあ、他の兄弟とか家族は? と、好奇心に負けて聞いてみれば。


 ミノアにとって彼らは『知らない人』、らしい………


 おっそろしい家族構成をしているミノアは、気にせず僕の髪を持ち上げて何かを確認しているわけで。おお、首元が涼しい。


「姉様の髪留め」

「……うんそうだね。どうして僕に付けようとするのかちょっと良く分からないけど髪留めだね」


 少なくともミノアと、ミノアの『お姉さん』は髪留めを貸し借りするぐらいには仲が良い、と。

 …それを僕に使うなんて、向こうは予想もしてないだろうけど。


「どうしたの?」

「ちょっとした思い出し笑いで」

「そう」


 何か面白くて笑ってると、音が聞こえてくる。

 はて? と音の発生源に目を向ければ、扉が叩かれた音だったみたいだ。

 おお、さすが王宮。ノック一つでも何か…そう、お上品に聞こえてくるんだ。


 って僕今。


「だれ?」


 珍しく興味を示してくれたミノアが、僕の髪の毛から手を離して扉へ……ってだから!


「ミノア、ちょっと待っ…!」

「だめ」

「いや! うん! だけど!」

「だめよ、シアム。動いては駄目」

「………」


 なんとなく逆らいがたいミノアのお願いに、僕は髪へ手を伸ばしたまま動けない。

 硬直した僕なんて気にもしないミノア。そのまま重厚な扉に手をかけて、警戒心とか感じさせない勢いで開け放つ。


「ああ、もう駄目だあ……」

「おお、ミノアちゃんじゃあないか!」


 そこから聞こえてきたのは、感極まったといった感じの、男性の声。

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