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01.気持ちのいい目覚め?

 チチチチッ


 小鳥のさえずりが聞こえ、木の葉越しに朝日が私の顔に降り注ぐ。

 まどろみの中聞こえてくる小鳥のさえずりに、大きく吸い込む。そうすると、まだ、つめたい朝の空気が私の肺、いっぱいに広がった。

 大きく伸びをし、布団代わりに身体にかけていたマントをわきへとよける。カバンの中からタオルをとりだし、それを片手にすぐ近くを流れている小川まで向かった。

 さらさらと流れる小川のふちに膝をつき、タオルを肩にけると両手を小川の中へといれる。

 朝ということもあり刺すように冷たい水をすくい、ぱしゃぱしゃと顔を洗うと、肩にかけていたタオルで顔をよく拭いた。

 きもちぃ、そう思いながら、一度帽子を脱ぎ、髪を結びなおすと、また、帽子をかぶる。 

 そして、さっきまで私が顔を拭いていたそのタオルを、つめたい水の中へとつけた。

 たっぷりとそのタオルが水を吸い上げたのを確認すると、私はそれを絞ることもせずに持ち上げた。

 向かう先は先ほどまで自分の寝ていた場所から少し離れた場所の草の上。そこには、我がパーティの主戦力である年少組二人が仲良く肩を並べて眠っていた。

 そっくりな顔の年少組二人のうちの、一人の前に立つと、私は満面の笑みを浮かべ、水をたっぷりと含んでいるタオルを持ち上げ、そして、落とした。


 べちゃっ


 何とも、分かりやすい擬音が立つと同時に、落とされた少女が大きな声をあげた。

 そう、私たちの朝は、いつも、このけたたましい叫び声から始まる。

「ぎゃぁあああああああっ!!!」

 これでもかというぐらいに声をあげた少女。

 もちろん、私はタオルを落としてすぐに耳をふさいだのでその叫び声で鼓膜を傷めることもなく。飛び起きた少女を見下ろし、私は最上級の笑みを少女へと向けてあげた。

「おはよう、リタ」

 リタと呼ばれた少女は、私が今しがた少女の顔に落とした水をたっぷりと含んでいるタオルを握りしめ、そして、目の前に立っている私へと、これでもかというぐらいの恨みをこめ、睨みあげてきてくれる。

 初めのころはこの睨みが気にくわなかったし、怖かったが、今となっては大分慣れてしまい、その睨みで、しり込みをすることは無くなった。

「みんなも起きたわね?」

 ぐるりとあたりを見回すと、いまだ煙の上がっている木の燃えカスを囲う様にして、それぞれ木の幹に背を預けて眠っていたパーティのメンバー達がひどく迷惑そうな顔でこちらをみていた。

 が、もちろん、気にしない。

 ここまでしなきゃ、起きない方がわるいんだ。

「ルーイースー」

 そうして、みんなをぐるりと見まわしていた私の背後に、魔王が降臨した。

 とはいっても、いつものことだから、もちろん、私は何食わぬ顔で、ひょいっと、リタが握りしめていたべちゃべちゃのタオルを奪い、そして、ぎゅっとその場でそれを硬く絞った。

「まぁまぁ、リタ。落ちついて。今日も無事に起きることができたからいいじゃない」

 へらへらと調子のよい笑みを向けリタにいえば、こぶしを握りしめ、私へと抗議をしてこようとするリタ。

 しかし、それよりも先にリタの隣で寝ていた少年が声を荒げた。

「いいかげん、まともに起こせよっ!!隣で寝てる俺の身にもなれっ!!」

「やだ」

 きっぱりとそう返せば、少年がすっごく嫌そうなめんどくさそうな顔で私をみあげてくる。

「ルイス、お前・・・・・・楽しんでないか?」

 この、ひどい起こし方を。

 という少年に、私はにっこりと笑って、「そんなことないってー」と返してやった。

 いや、実際には、楽しんでるんだけどさぁ・・・・・・。

 そんなこと、ぽろりと言ってしまった日には、我がパーティの二匹のデビルに何をされたのか、たまったもんじゃない。

 なんて、私が一人で考えてたら、リタがふるふると拳を握りしめ、いまだに覚め止まぬ怒りを私へとぶつけてこようとしてきているし。

「今まで――――――」

 いままで?

「今まで、まともな起こし方、されたこと無かったっ」

 と、ぎっとこぶしを握り、唇を噛み、恨めしそうな目で私をにらみあげてくる。

 ぉー、凄い殺気・・・・・・。

「そうだっけ?」

 まぁ、とりあえず、しらを切るんだけど。

「「しらをきるなっ!!!!」」

「ハモんなよ」

 声をそろえ、被害者と巻き込まれて被害者になる二人が声をあげれば、一言一句違わずに言ってくれるし。こういうところは、ほんと、双子だなぁって思う。

 けど、思うだけで、とりあえず冷静に突っ込みをいれることは忘れない!

「今までおれ達はっ」

「リタ、おれ達じゃない。リタだけだ」

 相変わらず拳を握りしめ言うリタに、先ほどからキャンキャン言っている少年、ルタが鋭く突っ込みをいれる。

 が、もちろん、リタがソレに対して言葉を返すわけもなく。

「まともに起こされたことは無かったっ」

 拳を握りしめたまま、見事にルタの科白をスルーした、リタ。

『逃げやがったな』

 とか、胸中で思いつつ。

「初めのころは、何処からともなく出てきたバケツに水をいれて、ぶっかけられる程度だったからよかった」

 何処からともなくじゃない。きちんと、常備してるんだいっ!野宿とか多いと、魚釣ったりしないといけないし、水を汲むものが必要になるから、携帯用のバケツを持ってるんだいっ!

「いつの間にか、ただの水だったのに、少しずつ熱くなっていって、しまいには、沸騰させておいた熱湯だったこともあったっ」

「あぁー、あの時は、ティアが即効治してくれたよねぇ。ティアいなかったら、確実に病院行きだったよねぇ」

 そんなこともあったなぁ、としみじみとうなずいていれば、また、リタが口を開く。

「それから、馬に踏まれそうに&蹴られそうになったときもあったっ」

 ぐっと、にがい思い出を思い出すように言うが、リタ、あの時はさぁ、

「その前に目を覚ましたじゃない」

 そうだ。あの時は、もう少しっ!ってところで、リタが先に目覚めて、それで、結局実行されなかったんだよなぁ・・・・・・。

 リタがどこまで丈夫なのかを確かめるいい機会だったのに、おしかったと思うんだ、本当に。

「身の危機を感じたんだよっ!!」

 まぁ、そうだろうなぁ、とか思いながら、それでも、私は「あっそ」と軽く言葉を返す。

「その次は」

 相変わらず拳を握りしめ、これまでの私の悪行の数々を語りつくそうとしているリタに、「はいはい」ととりあえずそう言いながら、濡れたタオルを持っていない手でリタの肩をたたく。

「文句は後で聞いてあげるから(多分)、さっさと、顔を洗って来んか。ほら、みんなも!起きてるんだったらさっさと行く!」

 いまだ寝ぼけ眼の仲間をぐるりと一瞥してそう言えば、のそのそと動きはじめる。

 これもいつものことで、それに対して文句を言う奴もなく。

 そろってあくびをしたり、伸びをしたりしながら消えていく彼等の背中を見送り、私は小さく息をついた。


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