07
雄司が応戦し、ケンジとタケシが言い争っていると、不意に1匹のオーガーの腕が落ちた。そこからどす黒い血しぶきが飛ぶ。
「ギャッッ」
言うまでもないが、タケシが腕を切り落としたのではなかった。
「ギャオォォォォオ!!」
オーガーは叫び声を上げ、周囲を見渡す。
いつの間にか、ひとりの老人と8人の若者たちが現れていた。
若者たちは槍や剣を手にしている。しかも、その服装は現代日本のものではない。老人は白髪で怪しげなマントをまとっている。他の男たちは今時の若者らしく茶髪だが、飾り気のない麻でできた中世ヨーロッパもしくはRPGの村人が着ていそうな服を着ていた。
腕を切り落とされたオーガーは目標を変え、新たに現れた人たちのところへ腕から血を滴らせながら走っていく。
それも、一番弱そうな老人目がけて向かっていく。
危ない!!
ケンジたちの脳裏に老人の殺される姿が浮かぶ。
ーーバシュッ!
血を吹き出しながら、どさっと倒れる。
倒れたのは老人ではない。オーガーの方だ。
老人が手をかざしただけで、オーガーの首が吹っ飛んだ。
うめき声も出さずに倒れ、一面にどす黒い血が流れ出し、砂浜を汚す。
「ギャオッォ?」
倒れた同胞を見て、他の2匹が反撃とばかりに老人に襲い掛かる。
だが、男たちが行く手を阻む。1匹に4人づつつき対応している。オーガーが唸り声を上げて向かって行っても、正面にいる者は一定の距離を置き、後ろに回り込んだ者が斬りつけていく。
オーガーは腕を振り回して突っ込むが、付かず離れず後ろからのみの攻撃で容赦なく剣や槍で斬りつける。
かなり戦いなれている様で連携も取れている。派手ではないが、堅実な戦法だ。少しづつではあるが、確実にオーガーの傷は増えていく。
いくら丈夫でも、背中を斬りつけられ、血みどろになっては動きも鈍る。失血で弱ってきたところを、集中攻撃され、死んでいった。
ケンジたちは現実のものとは思えず、呆然とその様子を見ていた。
3匹のオーガーが完全に死んだのを見届けると、一行はこちらに向かってきた。




