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結局、雄司たちは否応なしに龍神の元へ行くことになってしまった。
リョウの命には代えられない。
それに、何と言っても神様の端くれなのだから、元の世界に戻る方法を知っているかもしれない。
リナは雄司たちと別れて、解毒の魔法を使える人と共に村に戻ることとなった。村に行ってくれるのは、プファラー自らだった。
曰く、魔法の効果は使い手に依存するため、重度なリョウには最もランクの高い魔法を使えるプファラーが行くことになったそうだ。
「では、プファラーさん。よろしくお願いします」
龍神の元へ行くのは雄司、ケンジ、タケシ、それにパスタの四人だ。
龍神は深い山の洞窟の奥に住んでいるとのことで、獣道を歩く。
パスタは本当に憶病で、クモやムカデを見つける度に大騒ぎする。
歩くこと、3時間で、四方を山々に囲まれた小さな盆地に出た。盆地の中は辺り一面草原となっていたが、ちょうど中央にポツンと岩肌をのぞかせていた場所があった。
その岩肌には大き洞窟が口を開けていた。
「ここが龍神様の住んでいらっしゃる場所のはずです」
中は真っ暗だった。パスタが持ってきたランプに火を灯し、雄司たちは恐る恐る洞窟へ入っていく。
--が、案内役のはずのパスタの姿が見えない。
「おい、パスタさんの姿が見えないぞ」
気がついて、戻ってみるとパスタは洞窟の入り口でうずくまっていた。
「・・・何してるんだ?」
ケンジが尋ねると、ビクッと肩を震わせ、
「だって・・・、洞窟なんて、中は真っ暗だし、暗いし、コウモリだって出るかもしれないじゃないですか。そんな恐ろしいところに入ると思っただけで・・・・」
泣きそうな顔をする。泣いている女の子を囲むケンジ達。まるでいじめているみたいだ。
「案内してくれるんじゃなかったのか?」
「洞窟の中まではボクだって、知りませんよぅ。ここから先はあなた達だけで行ってくださいよぅ」
パスタは頑として、洞窟の中に入ろうとしない。
「仕方ない。我々だけで中に入るか。パスタさん、一人で帰らないで下さいよ」
「ひとりで帰れるわけないじゃないですか!!」逆ギレされた。
「早く帰ってきてくださいよぅ」という声援を受け、雄司たちは再び洞窟に入っていく。
「暑いな」
洞窟に入ってしばらくたつと、ケンジがぽつりと言った。
「普通、洞窟ってのはもっとひんやりした涼しいモノのはずだがな」
汗を拭きながら、雄司もうなずく。
「何か出そうだな・・・ ギャー!!」
タケシが悲鳴を上げた。
「どうした!?」
「・・・いや、クモの巣が顔に引っかかった」
「殴ってやろうか。いちいちそんなことで叫ぶな。あのパスタとかいう娘じゃあるまいし」
ケンジがタケシを小突く。
「ーーおやっ」
今度は雄司が声を上げた。
「どうしたの?」
「いや、向こうの方がぼんやり明るくなってないか」
そう言われれば、そんな気もするかも。
「もしかして、出口かな?」
暗闇で正確な時間は計っていないが、1時間は歩いていたはずだ。
三人は足早に明りに近づいて行ったが、出口ではなかった。
さっきからの暑さの原因がそこにあった。
「もしかして、溶岩?」
ケンジが誰にともなく、つぶやく。
目の前に3~4メートル程度の谷があり、その底に真っ赤な光を湛えた液体が流れていた。
ボコッ ゴボッ ボコッ
音をたて、粘性のある溶岩が泡立っている。足元の小石を投げ込んでみると、ジュ~という音をたて飲み込まれた。
「暑かったのは、このせいか」
そして、その溶岩の川には今にも崩れそうな細い吊り橋がかかっている。いかにもなシチュエーションだ。
行けないことはないが、無理する必要はないだろう。
「これは一度戻って、装備を整えた方がよさそうだな」
「そうだね」
雄司の言葉に同意して、来た道を戻る。しかし、道がない・・・
一本道で、迷うはずがないが行き止まりだ。
--コンコンコン
叩いてみるが、道が開ける様子もない。
「ふさがってるねぇ」
だが、自然に崩れてふさがったのではない。それなら、跡があるはずだが、滑らかな岩肌が続いているだけだった。
魔法か何かファンタジー的な不思議現象・・・なのか?
「どうあっても、前に進めってことか」
もう、この崩れそうな橋を渡るしか、進む道はない。
「一人づつ渡った方が良さそうだな。--さて、誰から渡る?」
複数で渡るには強度が不安だ。
誰も率先して渡りがらないので、ジャンケンで決めることとする。一番目は目出度く(?)タケシに決まった。
タケシは橋の目の前で考え込む。
「・・・よし! 帰ろう」
言うなり、体を反転させ、道を戻ろうとする。
「おいおい。お前が一番に渡るんだろ。それに帰る道はふさがってるだろ」
「・・うっ。持病の心臓病が・・・」
「仮病を使うな! お前はいつから心臓病が持病になったんだ!?」
「今から・・・」
すかさず、ケンジがタケシの右頬に張り手を食らわした。
「・・・やれやれ。仕方ない。わたしが先に渡るか」
呆れて雄司はそう言い、難なく渡り終える。
「な~んだ。大丈夫じゃないか」
タケシが雄司を見て、意気揚々と足を踏み出したその瞬間、ガラガラッと音をたて、橋が真中から崩れる。
「・・・・・」
「・・・危ねぇ~」
崩れ方が不自然だ。雄司の時は平気だったのにタケシが橋に乗る前に崩れてしまった。
--作為的な意思を感じる。
しかし、それで雄司と二人が二分されてしまった。進まないといけないのに、これでは先に行けない。
「・・・困ったな」
途方に暮れると、ケンジは谷底を見る。
「これ、跳べるんじゃね?」
「跳ぶって、ジャンプして飛び越えるってこと?」
体育の走り幅跳びの記録は5メートルを超える。
助走をつけて飛べば飛び越せない距離ではない。だが、間違って落ちれば、一巻の終わりだ。
体育の幅跳びと違って、やり直しはできない。
下を覗き込むと、煮えたぎる溶岩がさっき見たときと同じく、絶えず流れている。
かなり、勇気がいるなぁ~。
かといって、先に進まなきゃいけないし・・・
しばらく思案した後、ケンジは気合を込め、助走を始める。
「いくぜ!!」
しかし、--ゴガッ ザザザーッ
ケンジは途中でつまずき、見事に滑った。
「い・・、痛い」
鼻を思い切り打った。
「・・・さぁ、タケシ。オレに続くんだ!」
鼻を押さえながら、ケンジがやけっぱちに叫ぶ。
「そんなもの見た後に続きたくなるか!」
「・・・だよな」
言っておいて何だが、当り前だ。
ケンジは腰にロープを結んでもらい、万が一の場合に引っ張ってもらうよう、一方をタケシに持ってもらった。
再チャレンジは、慎重に跳んで難なくクリアー。
「天野君、大丈夫か?」
「タケシはそこにずっといるか? オレたちは奥に行ってみるぞ」
まだ決心のつかないタケシを見てケンジが言った。
この谷を越えるのは怖いが、置き去りにされるのも怖い。
「ーーくそっ!」
やけくそ気味でタケシが跳んだ。勢いが良すぎて着地には失敗したが、何とか渡り切った。
「ふ~~。何とか渡れ・・・・・ ギャ~~~~!!」
「うおぉぉぉぉぉ!?」
安心しきった三人の足元が突然崩れた。もう、確実に自然な崩れではない。
--もがくことも出来ずに、三人は闇の中へ吸い込まれていった。




