13
雄司たちがアルタァの家を出ると、妙な光景が待っていた。
村の人たちが幾人も遠くから雄司らを見つめている。
「何だ? ありゃ?」
「さぁ? オレたちが出て来るのを待ってたのかな?」
その村人たちは雄司たちが右へ向かうと右へ移動し、左へ向かうと左へと移動する。雄司たちには近寄らず、かといって一定距離を保ったまま立ち去りもしない。
しかも、興味津々の目で見られている気がする。
「・・・なんだか、家の中にいた方が良かったみたいだね」
「そうだな。戻ろうか」
この村では雄司たちは場違いな雰囲気だ。
三人は百メートル歩かないうちに、Uターンすることになった。
アルタァの家の前まで戻ってくると、中年の男たち10人程がたむろしていた。その中にはさっきアルタァたちと浜から一緒にいた男も混じっていた。
「お前たちか? 異世界から来たって奴ってのは」
取り巻きを率いた一人の男がつっけんどんに言った。
「まあ、そうですが?」
友好とは言い難い喋りだ、と感じながらもうなずいた。
「へへっ、全然強そうには見えねえなぁ。それに、2人はガキだぜ」
下品な笑いを上げ、その男は笑った。
「何か用ですか? 用がないなら、通してもらいますよ」
雄司は男を無視して通ろうとする。
「おっと、待ちな」
その男が雄司の進路をふさぐ。
「確か、異世界から来たってのは4人いたはずだが、もう1人はどうした? 怖くなって逃げちまったのか」
「もう1人なら、そこの家の中にいるよ。用はそれだけか?」
ちょっと、ムッとして答える。
「いや、出来ればお前らに勇者としての力を見せてもらいたいんだがな~」
ゲヘヘッと、男はまた下品に笑う。
その様子に雄司はため息をつく。
「わたしたちはお前さんが思っているような勇者なんてもんじゃない」
「・・・なんだ。勇者なんて言っても、ただのおくびょう者か」
「そうだ。 ーーそれで満足か?
行くぞ。ケンジ、天野君」
男の予想と違った反応に驚いたようだ。その横をすり抜けようとする。
「ちょ、ちょっと待て!?」
戸惑っていた男は再び前をふさぐ。
「何だ、まだ何か用か?」
「ゆ、勇者じゃないってどういう事だ?」
「どういう事って、そのままだよ」
「・・・おい。聞かされていた事と違うぜ。こいつらが勇者じゃないってどういう事だ?」
後ろの奴らに男は文句を言った。
「いや、それは・・・・・」
「オレたちの聞いた話では・・・・・」
「それが何で・・・・・」
男が他の取り巻きに問い詰めている。
「・・・もう、良いな? たたしたちは」
「ええ~い。お前らが勇者かそうじゃないかは、もう関係ねえ! ちょっと、俺と勝負しろ!」
三度、男が進路を阻む。
「断ると言えば?」
「無理にでもやってもらうぜ!」
男は身構え、他の取り巻き達も雄司らを囲む。
ーーこのまま断れば、本当にコイツは問答無用で襲ってきそうだ。体は大きいが、構えは素人だ。
雄司なら、コイツだけならやっつけるのはそれほど難しくない。しかし、コイツだけ倒しても、後ろの奴らが黙って見ているはずもない。




