10
獣道のように細かった道の幅が徐々に広くなり、しっかり踏み固められた地面になってきた。
「ほら、村が見えてきましたぞ」
アルタァの指し示す方向に家々が見えてきた。森に囲まれた村だ。
ペギンの村に入ると、リョウに肩を貸している男以外は散り散りに家に帰っていった。
小さな家が沢山ある。みんな、避暑地にあるログハウスのような造りになっている。見た限り、50軒ほどある。一戸で4人家族として、全部で200人くらいか。
家の前には小さな畑があり、何かの野菜が植えてある。
「ここの村の者は自給自足の生活をしておる。少し離れたところに共同の畑もある」
「それより、何か・・・、わたしたち避けられていませんか?」
村の中を進んでいくと、外にいる人は皆逃げるように家の中へ這って行く。さらに、家の中からは誰も出てこようとしない。そのくせ、窓からたくさんの視線を感じる。
「この村の者は、よそ者に慣れておりませんからな。気にすることではありませんよ」
更に進んで行き、明らかに他の家とは違う建物の前に着く。他の家よりも一回り大きい石造りのがっちりした家だ。
その石造りの家の前に来ると、タイミングよくドアが開いた。
「お帰りなさい。おじいちゃん」
中から出てきたのは、15,6歳の女の子だ。栗色の長い髪で、おでこに黄色いバンダナをしている。
『おじいちゃん』と言うからにはアルタァの孫なのだろう。アルタァに似ず、可愛い娘だ。
「リナ、すまんのう。ケガ人がおってな。頼めるか?」
リナと呼ばれた娘はリョウの足を見ると家の中に入って、皆も屋内へ促す。
「早く連れてきて」
家の中は殺風景で、入った部屋には暖炉と大きなテーブル数脚のイスしかなかった。
「さあ、イスに座って」
リョウを言われたイスに掛けさせると、リナは足の包帯を解き始める。
「うぅっ・・・」
痛かったらしく、リョウが呻き声を漏らした。
「大丈夫よ。出血はもう止まっているみたいね。何でケガしたの?」
「例の化け物にやられたんじゃ」
アルタァが勝手に答える。まあ、間接的にはそういうことだから、良いけれど。
リナは包帯の解けた傷口に手を当て、何やらつぶやく。
リナの手がぼうっと光り出し、傷口が目でもわかるほどの速さで治っていく。
「一応、傷はふさがったけど、あまり動かしちゃ駄目ですよ」
完全に傷がふさがってから、リナが注意した。
凄い。血の跡をぬぐうと、うっすらと傷跡が残っているが一日二日でその痕も消えるだろう。さっきまで血を流していた所とは思えない。
見ていたタケシは羨望の目で少女を見つめる。
「すごいぃ~。どうやったんだ?」
「初歩的なヒーリング魔法です」
「・・・魔法?」
タケシらは驚いた。
「魔法だって!?」
これは間違いなく、普通の、自分たちの世界ではない。
「ホッホッホッ。驚きましたかな」
アルタァが口をはさむ。
「そりゃあ~、驚いたのなんのって・・・」
タケシたち三人は単純に驚いていたが、雄司はアルタァの言葉に、何か隠しているという響きを感じ取った。
「アルタァさん。何か言いたいことがあるんじゃないですか?」
「・・・リナ、ちょっと出ておれ。ワシはこの人たちに大事な話があるでな」
リナはうなずくと、「お大事に」と声を掛けすぐに部屋を出ていく。




