閑話っちゅー説明会
説明回。
----side in world
少し時を遡る。
ノトキアが異世界へ跳んだ、少し後。
「はぁ~あ。結局、行っちゃったか」
長い髪の毛が顔を隠し、顔の判別がつきにくい。
声からして、ノトキアと共にいた人物。フォクセイということが判る。
それだけである。
フォクセイはゆったりと、寝ていた布団から起き上がり、携帯端末を手に取る。
「え~っと……あったあった」
ポチポチ音をたてながら、羅列された名前の中から、今は居ない、親しき友の名を見つける。
『ノトキア・フェル・アルバート』
ゲームの中の名前と、当時使っていたIDを呼び出す。
「《コール》対象指定」
プルルルと音がなり、携帯端末から一瞬音が消え、音が聞こえてくる。それを聞き、フォクセイは。また何か面白いことやってると、口の端がつり上がる。
元より面白いこと好きが集まった集団なのだ。例え、それが多少歪んでいようとも、面白いことであれば皆動く。それこそが、この集団の一員であると言える。
もっとも。今では二人しか、プレイヤーは居ないのだが。
「あ、そうそう。それで……あいあい。……はっ?頭大丈夫?」
「あ~そういうこと。事故と言えるけど……デバックは?機能してないの?でも、メニューはひらk……え?未来人?可愛いかはさておいて、うん。一度シネ」
「とりあえず、おちけつ。こっちからしか《コール》できないんだから。え?そっちからでも?ああ、龍力法?あれ時空歪めるんじゃない?メイドさんに持ち上げられたからって、使おうとしないでよ?いや、別に影響しないのは良いんじゃね?」
「あー……オルガナ帝国ね。うん。でも仕方ないじゃない、現実になるとどうにも……いや、確かに可愛いよ。うん。オマエガシネ」
「あーそういう感じね。望んでた結果と大分違うのね。折角あんな演技までいれて騙したのに、骨折り損のくたびれ儲けってやつ?一応は持続させとく?あいあい」
「んで、欲しいのは?…………あいあい。それじゃ用意し次第いくから。あいー」
ふぅ、と息をつき、端末の画面に指を滑らせる。
画面が消えたと同時にもう一度息をつく。
「まっ。おもしろいから止められない。ってね」
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オルガナ帝国、会議場。
龍帝一行と法廷国家 アガルテの王一行、そして。人と思えない異形の姿をした女性が一人。剣呑な空気ではないのにも関わらず、緊張感漂う空気の中、顔を会わせている。
未だに慣れていないのか、アルル達冒険者は固唾をのんで押し黙っている。
「それで。ノトキア様は、何故ルーさんのもとへ?」
花も華もが嫉妬し恥じらうほどの、可愛らしさと美しさを備えた龍の聖女。アリサ・ファルリア・アルバートが、龍帝 ノトキア・フェル・アルバートへと問う。龍帝は黙したまま、静かに異形の女性を見やる。
頭部は金色に覆われ、突出した二つの三角がピコピコ動いている。そのまま、下の方へと視線を移せば、龍の聖女に劣らずの妖艶でありながら、幼い小顔が覗く。糸目もそうだが、その中で注目すべきはその鼻。まさに獣のような鼻を備えていて、これがまた、可愛らしさを引き立てる。
更にゆっくりと下に移していくと、不釣り合いな双丘。獣の腕に脚。果ては五本の金色の尻尾まである。
龍帝はただただ困惑した。確かに、彼女は女狐と称されるほど化かすのが好きで、何よりその糸目と金色の髪の毛が相応しかった。だが。これはどう言うことだろうか。これでは、日本の昔話に出てくる、白面金毛の狐ではないか。
「九尾でないことが、まだ許せる範囲か……」
「……そういう問題なの?」
誰もがアルルの言葉に頷く。当の龍帝は、頭を抱えこみ、黙りこんでしまった。その龍帝を一瞥した法廷国家の王、ミルタ・アーガインは、興味深げにアルルを見る。あの龍帝に対して、対等の立場のように見えたからだ。
しかし、アルル本人は、龍帝に生かして貰っていると思っている。それもそうだろう。アルル達冒険者の中で、間違いなく強い二人を、歯牙にもかけない強さ。魔法を使ったようだが、その魔法そのものが、強さの証明である。
「こうなったノトキア様は動きません。それでは、お話をお聞かせください」
アリサがここへ来た目的を、狐人へと告げる。狐人は面白そうに弧を目に描く。始まった、とミルタは静かに気合いをいれる。ただでさえ、竜帝は死んだと思っていた。しかし、龍帝として現れただけでなく、反逆の徒・刻の女神を救うと言う。更に驚きを重ねるように、オルガナ帝国の帝、ルーバー・ドライン卿から招待されるではないか。と、今までに起こったことを思い返す。
それだけのことがあった。何があってもおかしくない。
「そうねぇ。何から話そうかしら」
「私達の主が知らないこと全てです」
「あら?ノトキアちゃんが知らないことなんて無いんじゃない?それに、さっき言ってたことと、全然違うじゃない」
「私はノトキア様のことは、全て知りたいのです。それに、この程度のことはメイドの必須スキルですよ?」
チリチリと肌を焦がすように、熱気が高まってくる。ミルタはアリサと言う女性をあまり知らなかったが、腹黒女狐と渡り合えるだけで尊敬の念を送る。それとは逆に、アルル達は、自分達がとんでもないところへ来たと、思っていた。それもそのはずだろう。ここにいる者達は、何れも王や王と対等に渡り合えるだけの実力がある。何よりも、安心できる優しさを持つ我らが主が頭を抱えたまま、黙りこんでしまっているのが更に不安を募らせる。
「ぷっ……くくくっ。あの龍の聖女が……ねぇ」
「あら。貴女もノトキア様に心酔している仲でしょう?」
「そうねぇ。ノトキアちゃんは、私を唯一愛してくれたもの」
「ああ、そういえば。フォクセイ様は貴女方の部下に、心酔してらっしゃいますものね」
「そうよぉ。でも、フォクセイ様は身持ち固いと言うか、手は出さないわ。それを不満に思っている者が多いのは確かよぉ」
「フォクセイ殿は、ファントムだろうに……」
ミルタの呟きは誰も拾わない。ファントムには種族魔法と言うものがある。効果は、簡単に言えば実体化。魂魄の状態から、至って普通の人間に戻ると言うもの。だが、種族そのものが変わるわけではないので、お遊び程度でしかなかった魔法。それを考慮して、二人は憂鬱になった。ノトキアには愛を貰い、いつ子ができてもおかしくはない。しかし、ノトキアの親友である、フォクセイの子も欲しいもの。何せ、彼は唯一ノトキアが倒せない(倒すのが面倒くさい)と言った魔術師だ。その逆もまた、然りだが。そんな龍帝に匹敵する、魔術師の子も欲しいのが、為政者と言うものだろう。
「ですが、頑なにノトキア様とフォクセイ様は喋りませんから」
「そうなのよねぇ。何ででしょうね」
「アリサ、ルー殿。話が脱しているぞ」
話が脱線しかけているのを、赤い鎧の凛々しい龍の騎士、ヴァネッサ・ローズ・アルバートがもとに戻す。
「あらぁ。アリサちゃんと話すのが楽しいから、ついつい」
「そうですね」
「それじゃあ、私達が何でこうなっているか、お話ししましょうかぁ」
ゆったりと椅子に深く座り、未だに頭を抱えたままのノトキアを一瞥し、全員を見渡す。
「実はねぇ。全部、ノトキアちゃんのせいなのよねぇ」
「「「はっ?」」」
意外な言葉が飛び出してきて、唖然とする一同。無論、冗談で言ってないのでルーバーは真剣だ。しかし、本人が望んでこの世界を創ったと言うのであれば、今までの言動がおかしい。ノトキアが嘘をついている?それにしては反応が素のものだった。色々と、憶測が飛び交う中で、アルルは一つ仮説をたてた。
「……もしかして。この世界のような場所へと望んだけど、不足の事態が起きて、こうなっている?」
「そうねぇ。それが近い。もっと正確に言うなら。ノトキアちゃんが来たことによって、収束する筈だった神々の戦いが激化。しかし、下界へ影響を与えるわけにはいかないから、新しい世界を創り、私達をその世界へと送った。それが、ここなわけね」
「……だけど、更にやっちゃったのが『刻の女神』ってこと?」
「そうよぉ。もちろん、ここまでぜーんぶ、ノトキアちゃんは……先代竜帝は知っていたわ」
「先代?」
ミルタは子首をかしげる。龍帝は龍帝だ。例え死んでも、世代は交代しない。それは何故か。復活するからだ。龍帝は不滅。そう教えられてきたのだから。
「あら。ミルタちゃんは知らなかったのかしら?彼、私達の……私とミルタちゃんの曾曾祖父よ?」
「なっ!?」
「だから、先代と言うのは語弊があるわね。でも、驚くことかしら?」
「い、いや。血縁関係なのに、驚かない方がおかしいだろう!」
当たり前の反応をするミルタ。平然としているのはアリサとヴァネッサ、ルーバーのみだ。他は近親相姦?などなどと話している。
「だからぁ……彼は曾曾祖父に当たるだけの他人よ?」
「他人……ですか?」
「あら、可愛い。大和撫子ってこういうのを言うのねぇ。それはおいといて……彼は、本来なら私達のおじいちゃん。けれど、彼はこの世界の人じゃない。貴女達も経験あるんじゃないのぉ?少なくとも、この世界の"一般人"の域は軽く越えているんだから。おかしくないわけないじゃなぁい」
むふ~と鼻息荒く、ノトキアに這い寄っていくルー。それを阻止せんと、アリサが全身を使ってディフェンスしている。ため息をつき、ゆさゆさとノトキアを起こそうとするヴァネッサとミルタ。もう、何がなんだか判らない状況になっている。
そんな中、アルキスとマリアーヌが互いに困惑した表情を浮かべている。
「どうした、マリアーヌ」
「は、はい。今更ですが……私とアルキスさんは、ノトキア様に忠誠を誓ったから、争わない理由があるのですが……」
「そうだな。マリアとは、仲良くやっていけそうだが……貴女は違う。アガルテの王よ。何故、ルー殿と親しげに話しているのだ?」
「そうれわねぇ……はぁはぁ」
「黙っていろ、ドライン卿」
「いやよぉ。そもそも、私達自身は私情で戦っていたわけではないのよ」
更に困惑の表情を見せる二人。その会話を聞いていたアルル達もまた、困惑していた。が、他の四人はそれぞれ、仲良さそうにノトキアを取り合っている。
「中々起きないな」
「そうだな。……そうだ」
何かを思い付いたらしいヴァネッサは、息が吹きかかる距離まで耳に口を近づける。
「(早く起きてください、ノトキア様。私が精一杯ご奉仕致します)」
一瞬。皆が皆、あっけにとられる。今目の前で起こったのは、一体なんだったのか。誰もそれを説明することはできない。だが、その結果として残ったのは。衣服が乱れ、頬が上気し、荒い息をついて横たわるヴァネッサと。つやつやした顔で、衣服を直しているノトキアのみだ。本当に、一体何が起こったのだろうか……。
「いやぁ~。久しぶりに《混沌溌剌》を使っちまったぜよ。はっはっは」
「そ、そんなことで龍力法を使わないでください!」
「ヴぇっ?い、良いじゃない。試しだよ試し」
困惑というよりは、楽しげに顔を崩すノトキア。そして、何が起こったか、理解できていない者達を置き去りに、話しを始める。
「さてさて。話しが大分、面白いとこまで来てるな。まず、俺とこの世界については、説明したよな?俺はこの世界の者ではない。ま、あれだ。テリストリアの部分が歴史で残っていて、アステリオス、エイステリオウスの部分が感情、及び記憶として残っているのがまとめ。身体については、アルル達や俺達は、再構築された存在だ。だから、歴史も記憶も感情もそのまま。しかし、身体は違う。俺はこの世界に適合するため、アンデッドになった……とまぁ、長い長い説明のまとめだな」
ふぅと息をついて、椅子に座るノトキア。困惑していたアルルが、更に困惑しながらもノトキアに問いかける。
「……ノトキアは、全部知ってて?」
「んにゃ、知らん。というか、何でこうなってんのかは……まさに神のみぞ知る。だな」
「……じゃあ、アリサさんやヴァネッサさん達は……」
「俺と同じで、再構築された存在だろうな。種族がアンデッドになってるのが証拠だ」
肩を竦め、またもため息をつくノトキア。本当は、自分自身が一番困惑している。ノトキアはどんなに頑張っても、一般人の域を出ない。つまりは一般人だ。それでも冷静に対応できるのは、彼の特技であると言えるだろう。
そして。アンデッドは不老不死であるが、それだけである。リビングデッドのように、死体ではないが故に、感情が高ぶることもあれば、落ち込むことだってある。それを思えば、多少不便に感じることがある。何故、中途半端な存在にされたのだろうか考える、ノトキア。
もしかしたら。自分達は、とてつもなく面倒くさい存在なのではないか?
本来であれば、呼ばれるはずもなかった存在。そう考えれば、全てがそれで片付いてしまう。ノトキアはともかく、他のプレイヤーはその『主神』に喚ばれている。それが指し示すものは……。
如何でしたでしょうか。
登場人物たちなりの考察は。
感想、指摘。ばんばんくだしあ。




