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白の王弟と水の姫君2  作者: ユイカ
1.訪問者
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 書庫へ続く扉を出る。

 ジールは足を止めた。

 書庫の前に客が来ていた。ジールの姿に気付き、細い糸目をさらに細めて手を振てくる。

「あー、良がった。せっかく来たのに会えながったらどうしようかと。

 あ、私のこと覚えてらっしゃいますよね。昨日ご挨拶したレントです。」

 浮かれた気分が一気に吹き飛ぶ。王立高等院は信用できないと聞いたばかりだ。ジールは自然と表情を険しくした。

 しかし当のレントは、ジールの不快な表情など全く気にとめていないようだった。

「何しに来た?」

 ジールは低い声で尋ねた。

 レントはあわあわと手を振る。

「何って、お手伝いですよ。」

「手伝い?」

「こんな大きな書庫、一人で整理なんて大変でしょう。本って意外と重くて、動かすだけでも重労働でしょうに。私、こう見えて力仕事には自信があるんですよ。これからは学者も体力勝負ですからねえ。

 あ。昨日の返事ならまだ結構。

 邪魔はいたしませんので、今日はこき使ってやってください。さあ、何から始めましょうか?」

「お、おい・・・!」

 相変わらず一切口を挟ませないマシンガントークだ。しかもジールに断る暇すら与えず、勝手に書庫の中に入っていってしまった。

 ジールは慌てて追いかけた。

「勝手に入るな。」

 ジールが階段を下りると、レントは書庫の中央で立ち尽くしていた。神を仰ぐように両手を広げ、天窓からの光を浴びている。ジールはそれ以上の言葉をかけ損なった。彼の気持ちが分かってしまったから。

 かなりの間を置いて、レントは大きく一つ、深呼吸した。

「ジール様。」

「何だ。」

 レントはジールを振り返った。見開かれた彼の瞳に射貫かれ、ジールは一瞬どきりとする。その隙を突くように、レントはジールの手を取った。レントの手は小刻みに震えていた。

「だ、大丈夫か・・・?」

「感動です。」

「は?」

「私、今、猛烈に感動しています!

 この量、この匂い!こんなに多ぐの本が収められた場所を、私は他に知りません!しがも、一見しただけで、どれもこれも希少な書物ばかり!ジール様は大丈夫ですか?こんな場所に毎日いたら、私だったら発狂してしまいます!」

 どうもこの男、興奮すると訛りがきつくなるらしい。ジールはがっしりと握られた手をやんわりとほどいた。

「いや、最初は驚いたけど、慣れないと作業にならないから。」

「その通りだず!」

 だず?

「いやー、さすがジール様。確かに、作業中に鼻血でも出して本を汚してしまっては一大事。

 私、今すぐこの書庫に慣れます。いえ、慣れましたとも!

 さあ、作業の指示を願えますか!」

 鼻血・・・。

 ジールは反応に困って、とりあえず指示を出した。

「じゃあ、2階のあの一角の本を順に下に運んでくれ。」

「分かりました!」

 レントは白い翼を出して飛んでいく。ジールの指示した棚から本を取り出していくのを見ながら、ジールは息を吐いた。

「すっかりあっちのペースに乗せられちゃってるんじゃない?」

 リヴァの声が囁く。

「そうだけど・・・。」

 ジールにはそれしか答えられなかった。

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