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「学長夫妻の秘密を教えてくれるって、本当なの?」
エレナは、キロと名乗った男にもう一度確認した。
「もちろん。」
キロは白い歯を見せて笑った。なんだか胡散臭い。エレナは肩をすくめた。
城でエレナの肩を叩いたのは彼だった。悲鳴を上げそうになったところを、口を塞がれる。その間に学長一家は廊下から消えていた。
キロは王立高等院でハジ教授側にいた男で、エレナと同じように学長夫妻を疑って、城にまでつけてきていたらしい。エレナが学長夫妻を追いかけているのを見て、声を掛けたのだそうだ。しかも、学長夫妻について知っていることがあるから教えてくれるという。
キロは怪しすぎるくらい全身黒ずくめだった。客として来ているようだったが、どうやって舞踏会に潜り込んだのか分からない。娘たちの父親にしては若いが、兄にしては少し年が行っている気がする。
エレナはどうしようか迷ったが、彼の申し出を受けることにした。危険だと思ったら、自慢の格闘技でぶっ飛ばしてやればいい。
キロはエレナを馬車に案内した。
中で話してくれるのかと思ったら、目的地に着いてからと言う。目的地も教えてくれない。ただのナンパ男か?しかし、それにしてはやはりちょっと年が違いすぎで、若好きにもほどがある。ぶっ飛ばして帰ろうかと思ったが、学長夫妻の秘密というやつが気になって、それもできなかった。
馬車が止まった。
降りると、そこは一軒の屋敷の前だった。そこそこ金持ちの家に見える。
やっぱりナンパ男か。
馬車から降りたもう一つの足音がエレナに近寄ってくる。
エレナは息を吐いた。
「私、帰るわ。」
振り返り、息をのむ。
そこに立っていたのは学長だった。
冷たいものが首に触れる。
それが刃物だと分かって、エレナは硬直した。
「中で話をしましょうか?」
学長は不気味なおたふく面のように笑った。




