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音楽が鳴り始める。
ホールの隅にスタンバイしていた楽団が、慌ててワルツを演奏し始めたのだ。
人垣はさあっと隅に寄り、王と少女はホールの中央に出て行った。
王は少女にダンスを申し込む。少女が受けると、王は小さい少女に合わせるように少し腰を屈めて手を取った。
エレナは、ぱきんと扇子を折る音を聞いた。
学長は娘と夫を急かして奥に捌けてく。エレナは慌ててそれを追った。
ホールの外に出る。
外に詰めているはずの衛兵たちまでが、突然のうれしいハプニングに見入っているらしい。廊下にはほとんど人がいなかった。もう帰ろうとしている学長を、副学長と娘がなんとか止めようとしている姿が目に入る。
エレナは廊下の柱の陰に隠れて推移を見守った。
「話が違うじゃありませんの!
私は王立高等院の学長ですよ!その娘を無碍にして、あんな小汚い小娘に手を出すなんてあり得ない!」
「まあまあ。そういうこともあるさ。
でも、まだこの子は挨拶して無視されたわけではないんだ。ホールにいれば、まだチャンスはあるかも知れないじゃないか。」
「『かも知れない』で、あんな不快な光景を見続けろと仰るの?!
だいたいあなたは、いつもやり方が甘いのですわ!ハジ教授のことだって・・・!」
あっと、エレナは柱から身を乗り出した。
そのとき、背後からエレナの肩を叩く者があった。




