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白の王弟と水の姫君2  作者: ユイカ
3.けんか
14/26

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 それから一日が過ぎ、二日が過ぎ、一週間が過ぎた。

 レントの所在は依然として不明で、ディーンからも新しい情報は何も入らない。

 風の噂で、ハジ教授の葬式がしめやかに執り行われたとだけ聞いた。妻と2人の娘だけが出席する、密葬だったのだとか。王立高等院関係者すら出席していなかったという。結局ハジ教授とは顔すらも合わせることはなかったが、残された家族のことを思うと、何とも居たたまれなかった。

 書庫には本のタケノコが5本、そのままに生えていた。その分、3階相当の書棚の一角はごっそりと本が抜けたままだ。

 ジールがいくらがんばって作業を進めても、レントは毎日やって来て、タケノコ5本をキープしようとした。初めは何の嫌がらせかと思ったが、いつの間にかその状態が普通になっていた。

 レントが来なくなってから一週間、ジールは仕事が一切手に着かず、タケノコは全く減らなかった。

 まさかレントのことで自分がこんなに落ち込むとは思っていなかったから、ジールは内心驚いていた。もっとも、数週間とはいえ毎日顔を合わせていた相手が、ことあるごとに慕っていると豪語していた上司を殺して逃げたなんて、なかなか衝撃的な出来事だろう。新たな情報が入らないのも、自分で調べることはおろか、ディーンから口止めまで食らっていることも、気分が晴れない一因だった。

 一方のリーナは相変わらず毎日訪ねてきていた。彼女も作業が進まないことについて何も言わず、ただ一日椅子に座って、ときどき読書をして、帰って行くだけだ。ジールは彼女の正体についての報告をまだ確認できていなかった。彼女が白だと分かっていれば、2人で会話をすることもできたのだろうけれど、グレーの状態では何を話していいかも分からない。

 ジールの気落ちとは裏腹に、城内は少しずつ活気づき始めていた。ディーンのお見合い舞踏会が近づいてきたせいだ。

 会場となる白の城のホールは、数千人を一度に収容できる大きな広間だ。普段から掃除されているとはいえ、舞踏会のためともなれば改めて大掃除するのだろうし、それなりの飾り付けもするのだろう。

 立食パーティーともなれば、料理や飲み物も必要だ。そちらは料理長が気合いを入れて取り組んでいるらしい。ディーンがこの城に来たときから勤めている料理長は、小さかった王様が娘たちを集めて舞踏会を開くほどに成長したことを心から喜んでいるようだ。王の成長を喜んでいるのは、他の年配の従者たちも同じだった。

 城は総力を挙げて、その一大イベントに取り組もうとしていた。レイタも、おそらくガウロも、そして当事者であるディーンはもちろん、舞踏会のことで手一杯らしい。お見合い舞踏会が近づくということは、王立高等院の学長選も近づくということなのだけれど。

 対立候補のいなくなった今では、学長夫妻は何の憂いもなくその日を待ちわびているに違いない。再選されれば、しばらくはまた彼らの王国は続くのだ。

 城の片隅にある書庫は、外の活気からはすっかり置き去りで、それをいいことに、ジールは現実から目をそらそうとしていた。

 ちなみにリヴァはまだストライキ中で、ジールが折を見て話しかけても一切答えてくれることはなかった。化け物は言い過ぎたと謝りもしたが、変わらなかった。かといって、舞踏会に出ることを許可はできない。

 八方ふさがりだった。

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