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白の王弟と水の姫君2  作者: ユイカ
3.けんか
13/26

13

 ジールは兄の部屋に飛び込んだ。

 ディーンはちょうど執務の手を止め、紅茶を注いでいるところだった。

「兄貴、どういうことだよ!!」

「ん?」

 ディーンはとぼけた様子でティーカップを口元に運ぶ。紅茶の香りにほんのりチョコの香りが混じったフレーバーティーだった。

 ジールはディーンの机に詰め寄った。

「レントが指名手配って、どういうことだ!」

 ディーンはまだ紅茶の香りを嗅いでいた。一口含む。「ジールも飲む?」とカップを取りに立ち上がろうとするので、ジールは両手でどんっと机を叩いた。

「いらない。座れ。」

 そう言うと、ディーンは渋々椅子に腰を埋める。ふて腐れたようにお茶を飲み始めた。

 ハジ教授死亡のニュースを聞いたのはつい先ほど、久しぶりに訪ねてきたお見合いおばさんからだった。リーナの様子を見に来たらしい。ついでにお見合い参加者の集まり状況とか、当日の予定とかをぺらぺらと喋って行く。そのさらについでに、ぽろっと話題に上ったのだった。

「そういえば、王立高等院の教授さんが夕べ亡くなったそうですのよ。ハジ教授とか仰ったかしら。どうやら、どなたかに殺されたって話ですわ。怖い世の中ですわねえ。

 犯人が指名手配されたそうですけれど、それを聞いて私、びっくりしてこちらに来たのですのよ。だって、王立高等院の学生さんだっていう話ですもの。レント、とかいう名前でしたわ。恩師を殺めて逃げるなんて、その教授さんもとんだ学生に行き当たったものですわね。

 私、どなたかから、こちらに王立高等院の学生さんが手伝いに来ていると聞いていたのですわ。だからというのも変ですけれど、リーナさんの様子を一度拝見しに行かなければと思い立ったのですのよ。

 でも、あら。今日はその学生さんはいらしていないのね?」

 ジールは途中から頭が真っ白になって、おばさんの話なんて頭に入ってこなかった。ましてやリーナの反応なんて窺っている余裕など無い。今日は珍しくレントが姿を見せないと思っていたが、まさかそんなことになっていたとは。

 ジールは、止めなければいつまででも話していそうなお見合いおばさんを強引に遮って、ディーンの部屋にやって来たのだった。

 ディーンは何も答えず、ただちょびちょびと紅茶をすすっていた。

 ジールは我慢の糸が切れて、再び机を叩いた。

「何か言えよ!!」

 ディーンは口をとがらせる。

「知らないよー。今、こっちも、ガウロやレイタが方々に手を回して調査中なの。

 監査官たちがレントを犯人だと断定して手配してるのは確かみたいだけどさあ。監査長官や警備長官の報告も受けたけど、肝心のレントが姿を消してるんじゃ何も分かんないよ。

 ここに来るってことは、君のところにもレントからの連絡はないんでしょ?」

 ジールは乗り出していた体を引いた。ディーンの話を聞くまではまだ少し希望を持っていたのに。誤報ではないようだった。

「ハジ教授が亡くなったのは本当なのか?他殺?」

 ディーンはうーんと唸って、小さく頷いた。

「警備とか、付けてなかったのか?」

「付けてたよ。だから、部屋の中にはレントと教授しか入れなかった。

 レントが挨拶をして部屋から出てきて、しばらくして警備の者がふと中の教授に声を掛けたら返事が無くて、覗いてみたら亡くなってたらしい。もちろん、窓の外にも警備はいたし、レントが中に入ったときには、教授がまだ生きていたことは確認されてる。」

「それって・・・。」

 絶望的だった。

 ディーンはカップを置いた。

「とにかく、今は何も分からないから。

 このことは他言無用ね。」

 ジールは追い立てられるようにして兄の部屋を辞した。

 書庫に戻ると、待っていたかのようにリーナが駆け寄ってきた。「何か分かりましたか?」と聞かれる。演技にしては迫真すぎる蒼白な表情で、いつもは顎下に置いている手も下ろしたまま、ブリッ子な仕草は一切無かった。

 ジールは首を横に振った。

 テーブルにつく。しかし作業を進める気にはなれなかった。

 リーナはテーブルの向かいに座る。

 2人は夕方まで無言で過ごした。

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