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エピローグ・プロローグ

 ジリジリと暑い日差しが照り付ける。蝉の鳴き声が、ミーンミーンと聞こえる中、祐一郎は学校の制服を着て、木の木陰に立っていた。空を見上げると、キラキラと零れる木漏れ日が光眩しい。本当に天気予報で言っていた通り、明日は雨が降るのか、疑わしい位の晴天だ。

「祐一郎くーん!」

 祐一郎の名前を呼ぶ、桜の声が聞こえる。

 祐一郎は声のした方を見ると、細い坂道から、大きく手を振ってこちらに向かって来る、桜と美雪の姿が見えた。桜はシックな黒いスーツに身を包み、美雪も学校の制服を着ている。桜は片手に、大きな花束を抱えていた。

「お待たせ。待たせちゃったかしら?」

 二人は祐一郎の元まで来ると、日差しから逃げる様に、木陰に入った。

 祐一郎は携帯の時計で時間を確認すると、ニッコリと微笑む。

「余裕で大丈夫。七分前だよ。」

 祐一郎の言葉を聞き、美雪はホッと息を漏らすと、安心した様子で笑顔を見せた。

「よかった。花を選ぶのに時間掛かっちゃったから、遅れてしまったのではと、心配したのでありますよ。」

「美雪ちゃんと一緒に選んで、華やかにしてみたんだけど、どうかしら?やっぱり正統派に菊とかの方がよかったのかしらねぇ?」

 桜は手に抱えていた、沢山の色取り取りの花が入った花束を、祐一郎に見せた。

「いいと思うよ。綺麗だし、喜ぶんじゃないか。」

 祐一郎はニッコリと微笑んで頷くと、その後少し戸惑いながらも、桜に言う。

「貴志・・・捕まったんだってね。」

 桜の顔から少し笑顔が消えると、ゆっくりと頷いた。

「えぇ・・・。柚君が録音した物と、私の携帯に来たメールが役に立ったみたい。真理恵さんが降りた駅の防犯カメラから、帽子を被っている貴志君の姿が見付かったって。人物を一人に絞り込めたから、すぐに見つける事が出来たみたいよ。」

「消し忘れのIDで身元割り出されちゃったから、言い逃れは出来ないのであります。しかしながら、これは当然の末路。大佐が落ち込む事は、ないのでありますよ。」

 柔らかい笑顔を見せて美雪が言うと、祐一郎はまたニッコリと微笑んだ。

「大丈夫、もう落ち込んでないからさ。自業自得だよ。俺も貴志も。俺がもっとちゃんと・・・周りを見ていたら、貴志の本性だって見抜けた筈なんだから。」

 そう言って、一瞬視線を足元に落とすと、少し悲しげな表情を浮かべた。

 ちゃんと周りを見ていたら、もっと早く美雪の事も、気付いてあげる事が出来たのかもしれない。そう思うと、美雪にも申し訳なく思えてしまう。

 祐一郎は話を切り替える様に、ワザとらしく大きな溜息を吐くと、呆れた表情をさせて見せた。

「あ~あ!しかし雅人にはやられたよ。貴志が逃げてった後に、警察に通報するんだからさぁ。あんな自信満々な態度で、『警察には通報しといたからな。』とかカッコ付けて言った癖に、実はまだだったとか。」

「本人が居る前で掛けて、邪魔でもされたら困るし。何よりあの魔方陣の場所に、警察に来られても困るし。柚の編集作業もあったから、当然なワケ。」

 突然後ろから、雅人の不機嫌そうな声が聞こえ、祐一郎は慌てて後ろを振り返った。そこには自身の学校の制服を着て、不機嫌な顔をしている雅人の姿が有る。

「なっ!お前いつの間に来たんだ!幽霊みたいに現れるなよ!」

「桜さんがアイツの姉さんにメールしてくれていたから、自宅に警察寄こした方が手っ取り早かったし。それに、五分前原則。」

 付け加える様に言うと、雅人は腕時計を指差す。祐一郎は雅人の腕時計を覗くと、丁度待ち合わせ時間の五分前だ。

 「あ、本当だ。」と呟くと、桜と美雪は可笑しそうに、祐一郎の後ろでクスクスと笑い出してしまう。恥ずかしそうに祐一郎は軽く頭を掻くと、コホンッと咳を吐き、柚木の姿が無い事に気付く。

「柚は?お前等一緒に来るんじゃなかったの?」

「柚は先に水汲みに行って貰ってる。どうせ途中で会うだろうから、もう向かわねー?」

「あぁ・・・そっか。それもそうだな。」

「それでは、出撃するでありますっ!」

 元気よく美雪が言うと、ぞろぞろと四人揃って歩き始めた。

 四人は移動を開始すると、沢山並ぶ墓石の敷地内へと入る。右を見ても左を見ても墓石が並ぶ墓地内は、あちこちに新しく添えられた花が見られた。お盆明けと言う事もあり、皆それぞれの先祖に、お墓参りに来たのだろう。太陽が照り付ける炎天下だと言うのに、どの石も綺麗に磨かれている。

 途中祐一郎達に向かって、手を振る柚木の姿が見えた。柚木は手桶を持って、こちらへと向かって来る。

「ハニャロー!水汲んで来たよー!」

 相変わらず高いテンションで挨拶をしてくる柚木の姿に、雅人以外の一同は、一瞬目を疑い驚いてしまう。

「なっ!・・・お前それはコスプレか?」

 柚木を指差し祐一郎が聞くと、柚木は首を傾げて笑顔で答えた。

「ニャ?正式なうちの学校の制服ニャけどー?」

「それで・・・登校してるのかしら?」

 微妙に後退りをしながら桜が尋ねると、柚木は大きく頷いた。

「当然ニャりっ!校則守ってるからー。」

 自慢げに言って来る柚木は、男子生徒の制服を由緒正しく着ているが、長い髪に女の子みたいな顔のせいで、どう見ても女子生徒が男子生徒の制服を着ている様にしか見えない。何とも言えない違和感を、感じてしまう。

「これはちょっと意外であります!本城君は、女子生徒の制服かな?って思っていたから。」

 驚きながらも、新鮮な物を見られた気がし、感激をしながら言う美雪。祐一郎と桜も、美雪と同じ事を思っていたので、余計に驚いてしまった。

「もう一掃、女子生徒の制服を着た方が、いい気もしちゃうわ。」

「確かに・・・。すげぇ似合わない。」

 二人が茫然と柚木を見つめていると、雅人が咳払いをした。

「それより早く行かねー?暑いんだけど。」

「え?あぁ・・・そうだな。」

 ハッと我に変えると、祐一郎は先頭に立ち、紙を方手に皆を先導しながら、目的地へと向かった。

「えっと・・・この辺の区画だな。」

 キョロキョロと辺りを見渡すと、「あった!」と嬉しそうに声を上げる。少し駆け足で一石の墓石の前へとやって来ると、石には『三浦家』と名前が刻まれていた。

 全員が墓石の前に来ると、早速桜は手に抱えていた花束を、そっと墓石の前へと置いた。柚木は墓石に水をかけると、手桶を四隅に置く。

 祐一郎は墓石の前に立つと、他の者達も祐一郎を中心に、並んで立つ。全員が並んだ事を確認すると、祐一郎は大きな声で言った。

「よしっ!それでは『光の十字団』、記念すべき初任務を遂行する!我等の初任務は、三浦瞳さんへの謝罪だ!」

 ゆっくりと手を合わせると、他の者達も同じく、墓石に向けて手を合わせた。

「黙祷!」

 再び祐一郎が力強く言うと、一斉に目を伏せた。

 祐一郎は静かに目を開けると、じっと墓石を見つめ、柔らかい表情を浮かべる。

「三浦さん、お茶・・・誘ってくれてありがとう。あの時俺に、中二病って自覚が有ったら・・・中二病じゃなかったら、もっと普通に沢山話が出来たかもしれない。三浦瞳って言う一人の女の子として、見てあげれたのかもしれない。ごめんなさい。今ならちゃんと分かるよ。出会いを求める桜さんみたいな、普通の女の子だって。夢を見続ける柚みたいな、仕事を頑張っている人だって。高野さんみたいな、照れ屋だって。だけど雅人みたいに、ちゃんと仕事と遊びの区別が分かっている大人だって事も。今の俺は、自覚が有る中二病だから。」

 夏の風が吹く。夏の香りを運んで来る。眩しい太陽に、蝉の合唱。真っ青に広がる青い空。入道雲。始まったばかりの夏休みに起きた事件。その事件で失った物。そして得た物。

 全て夏の暑さのせいかもしれない。暑さは人をおかしくすると言うから。夏が過ぎれば、また頭が冷えて目を覚ますのかもしれない。これは全て夢だったのだと。だけど目の前のお墓に眠る人は、永遠に覚める事は無い。その人のお陰で覚めた夢も有る。沢山の真実を見付け、新しい出会いを見付けた。

 『闇の使者エージェント』はこの夏に終わり、『光の十字団』がこの夏に始まった。その切っ掛けを作る事となった、お墓の中に眠る一人の女性に、団員一同は祈りを捧げた。


―END―


推理と呼ぶには余りにお粗末な代物ですが、最後まで読んで頂きありがとうございました。

感想等お待ちしておりますm(__)m

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