二日目~雫と夢人~
あれから、また数分歩いたところに、とてつもなく大きい岩山があった。
洞窟のような所へ入っていく。薄暗くて、鳥肌が立つ。時折、水滴が落ちてくる。
「あ、あのさ・・・心・・・ちゃん?」
「はい、なんでしょう」
「ここに、本当に人なんかいるの?」
だって、とてもじゃないけど人の住めるような場所じゃない。環境的にも、精神的にも。
「はい・・・と言うか、ここは私の隠れ家のような場所です」
「隠れ家?」
「はい。一人になりたいとき、いつもここで本を読んでいましたから」
「へ、へえ・・・」
洞窟のなかをしばらく歩いていると、ふと、ほのかに光る場所があった
「あ、つきました」
そこにあるのは、石製の長机と、本の山。そこにいたのは、少年。
「夢人君、えっと、大夢君連れてきたよ」
「心、ありがとう。お疲れ様」
夢人と呼ばれた少年は、心にニコリと微笑んだ。
そこで、今まで沈黙を守ってきた大夢が口を開いた。
「・・・久しぶりだな、夢人」
「そうだね、大夢」
夢人は、笑顔を崩さずに大夢を見ている。
・・・確かに、似てる。
私は、夢人を見て、本気でそう思った。心が間違えるのも、無理はない。
「・・・で、そっちの女の子は誰かな、大夢」
「あ!えっと、あたし、雫です!」
そう言って、ビシッと一礼。
「・・・こいつは、一応常闇剣の保持者だ」
「!!」
夢人は驚いた顔をした後、大夢並みのしかめっ面をした。
「それの保持者はお前の仕事だろ?」
「そのつもりだったんだけどな・・・」
大夢は苦笑した。
「笑うな」
夢人が言う。顔を戻す大夢。今度は夢人が顔を緩めた。
「・・・ま、いいよ。過ぎたことはしょうがないからね」
「理由は聞かないのか?」
「大体の予想はつくよ。常闇剣は気まぐれで我が儘だからね」
ふ、と笑う夢人。
「あ、僕の方の自己紹介をしてなかったね」
「あ、え、いや・・・」
「いいよ、させて欲しい」
夢人が微笑む。あたしは小さい声で「どうぞ・・・」と言った。
「僕の名前は夢人。大夢とは双子の兄弟で・・・あ、ちなみに僕が兄だからね。それで、この世界の王、月大王の息子だよ、よろしくね」
「う、うん、よろしく」
ん?今なんか凄い言葉をスルーしたような・・・
「あの、誰の息子だっけ?」
確認、確認。そんなわけ・・・
「え?月大王の息子だよ」
あった。驚いて思わず叫んだ。
「え・・・えええええええ!!!!????」
「お前、リアクション古いぞ」
大夢が大きな溜息をついた。
「って事は・・・」
「そう、俺達は、実の父親と戦うってわけ」
「ええええ!!」
そんな、そんな!
「だって、父さんは国民にこの事を知らせてないからね」
「肉親の俺等は知ってたけどな」
「で、でも、だからって・・・なんで、月獣になってないの!?それに、心だって・・・」
そう言って心を見た。心は、突然話を振られてとまどっていた。けど。
「私はあの時、一日中この洞窟にいました・・・。夢人君と一緒に」
「だ、だからって、なんの理由にも・・・」
大夢は、また溜息をついて、
「あの光は、特殊な光で、あれを浴びたら月獣になるんだ。ここは、光が射さないから、この二人は月獣にならなかった」
そう言うことなのか。そうなのか・・・。
あたしは、自分の無知さに、本気で泣くかと思った。
いやー、出てきました、新キャラ&新事実!!
この設定は最初からあったものです。息子(笑)
月大王も人ってことですよ!!
主要人物がそろってきたので、そろそろ表記の仕方を変えようと思います。
雫→シズク みたいな感じで。
最初っからやりたかったんですけど、諸事情により無理でした。
次からこれです!
二日目は割りと短いお話です・・・あと1、2話で終わります(笑)
じゃ、次の話で!!