一日目~雫と幻獣~
大丈夫、ちゃんと出来るよ。
・・・そう言い聞かせては見たものの・・・
「うわあああぁぁ!!?」
この砂漠の中じゃ無理だよ!!
「ちょ、ちょっと、こんなに風が強いなんて聞いたこと無いよ!?」
あたしは驚いて大夢に大声で言った。聞こえてるかは別として。
「砂漠は大体強風か日照だって相場が決まってんだよ!!」
「そんな相場いらないいぃぃぃぃ!!!!」
思いっきり叫んで、身体を包む布を一生懸命に摑む。
「きゃああぁぁ!!」
また叫ぶ。文字通り飛ばされそうだ。
「おい、しっかりしろ!!!」
大夢の声が響く。頭の中わんわんする。
くらくらしそう。足場悪いし。顔にまで砂がかかるし。
「もう無理!!」
ひとつ叫んで、ぶっ倒れちゃった。
「・・・・・・ん?」
パチッっと叫ぶと、目の前に大夢の顔が。
「おい、雫!!!大丈夫か!!?」
風はもう止んで、赤い月があたし達を照りつける。
「あれ・・・???大夢?」
「行き成り倒れんなよ」
「・・・ごめん」
起き上がって左右を見てみる。
「・・・ここ、何処?」
「少し進んだ場所。まだ砂漠」
「そ・・・っか」
俯いて、自分の身体に付いた砂を取った。
「ここが、あまり通行に向かない理由が分かったんだ」
大夢が行き成りそんな事を話し始めた。
「・・・は?」
「あれ」
大夢は、少し遠くを指した。
そこには、少し盛り上がった地形があった。
「あれがどうしたの?」
「よく見てろ」
言うとおりに、そこを見た。
ズズズ・・・ズズズ・・・
そんな音を立てながら、鬣が姿を現した。
「がああああああっ!!」
「わあああっっっ!!!??」
有らん限りの声で叫んだ。デカイよ、こんな獣いんの!!?
「月獣よりデカイよ!!?なんだあれぇ!」
「幻獣だよ。こう言う神聖な場所にいる、古来からの生物だ」
・・・その説明を聞けばかなり凄いけど、これは、かなり怖い。
「・・・でも、怖いよ」
「俺だってそうだ。若干怖い」
驚いた。大夢も、そんな事があるんだ。
「でも、こいつ等の凄いところは、こんなもんじゃない」
「・・・等?」
「そう、等」
ズズズ・・・ズズズズ・・・ズズ・・・
次々と出てくる鬣達。怖い怖い怖い怖い!!!
ざっと30頭位いんのかな?うわー・・・
『おい、貴様達』
「!?」
30頭の内の1頭、かなり古株・・・なのかな。が喋り始めた。
「喋れ・・・るの?」
『あぁ、2000年も生きていれば、言葉位話せる』
「2000年・・・ッ!?」
『我等は最高で4000年は生きるからな』
「えぇ!?」
何それ、反則だろうが!!あたし達の何倍生きるつもりなんだろ・・・。
『・・・男、お前の仲間は、煩いな』
「んー、まぁ、な」
大夢が苦笑した。
「大夢、もしかして、あたしが起きる前に、この・・・達と話したの?」
人、とは言えないもんね。
「ん?うん。だから言ったろ」
あぁ、そっか。あの言葉はそう言う意味だったのか。
『そこでだ。我等と貴様等の取引の再会だ』
「あぁ」
大夢は真剣な眼で、幻獣を見た。てか、取引って、何?
『我等が貴様の仲間を助ければ、貴様等が我等に代償を与える約束だ』
「!!?」
代償・・・!?代償って、何・・?
「ねぇ、大夢・・・」
「代償って言うのはあいつ等が俺等を助ける代わりに、あいつ等の言うことをひとつ聞く約束なんだ」
「・・・ふーん」
言うことを聞く、か。それ位なら、大丈夫・・・かな。
『我等が貴様等に求める物は、この世界の治安と平和』
「・・・え?」
『我等の願いは、貴様等がこの世界を救う事』
「そ、それって・・・!」
『ふふ・・・我等は、貴様等の運命を知っている』
何それ・・・凄い。尊敬しそう。
『我等の願いを聞き入れてくれるな?』
「勿論」
大夢が答える。あたしもぶんぶんと首を縦に振った。
「大丈夫、あたし達に任せて!!」
『・・・では、貴様等の運命の加護を祈ろう』
幻獣達は、また鬣をずぶずぶと砂漠の中へ入っていった。
「・・・よし、行こう」
「うん!!」
みんなの為に、あたし達は行くよ。
頑張ろうって、改めて思った。
第六話終わりです。
次からは二日目に入ります。はい。
長い長い一日目も終了です!!
次は、新キャラを登場させたいなぁ・・・。
なんて思ってます。
じゃ、第七話でお会い致しましょう。