一日目~雫と旅立ち~
あたしは家に戻ると、自分の愛用している少し大きめのショルダーバッグを持った。
色々入るので便利なんだ。
後は、水が沢山入る水筒に水を注ぐ。
あたしは、流れる水を見ながら先程の事を思い出していた。
「雫」
「?」
大夢は、あたしを見てこう言った。
「旅の準備をして来い。長旅だから大きい荷物は好まない。水筒や何かがあればいいんだけどな」
大夢の命令じみた口調にむっとしながらも、あたしは軽く返事をしてそそくさと自分の家に行った。
・・・思い出したら益々腹が立ってきた。
そんな怒りを抑えながら、台所の下の扉を開けた。
「・・・洗剤に鍋に・・・包丁・・・?・・・駄目だ、無い」
あたしは扉を閉めると玄関に向かって行った。
靴を履いて後ろを向いた。
誰もいない家。目覚めない母さん達。「いってらっしゃい」の言葉の無い出発。
「・・・いってきます」
そう呟いて、扉を閉めた。
戻ってくるなり大夢は、「遅い」と一言。そして、
「変なものは持ってきてねーだろうな?」
「持ってくるわけないじゃん!!」
思わずツッコんでしまった。
「・・・まぁいい。ところで、これから行く場所なんだけど・・・」
「あ、それ知らなかったら意味無いよね」
大夢は頷くと、あたしに説明してくれた。
「これから行くのは、隣国の『岩山の国』だ」
「『岩山の国』!!?あ、あそこって・・・」
『岩山の国』は、『水の都』の隣国なんだけど・・・
道のりは25km程。その道の殆どが砂漠と言う壮絶な道のりだ。
正直言って、あんまり貿易向きの国じゃない。農業と牧畜が有名なんだけどね。
「・・・そう。だから布が欲しい。ここの近くに服屋はないか?」
「え、もしかして、布を盗む気なの!?」
あたしは驚きながら大夢に聞いた。当の本人は、怪訝そうな顔で、
「は?だったら、こいつ等起こすか?」
こいつ等とは、広場や噴水で倒れている人々・・・もとい、月獣になった人達だ。
あたしと大夢は、この人達を解放してから、起こそうと奮闘したが、結局起きなかったんだ。
大夢は、
「もしかしたら、月大王を倒せば、起こせるかも知れない・・・」
と言っていた。
放置しているから、寒くないのかな、とか、餓死したらどうしよう・・・とか思ったけど、大丈夫みたいだ。・・・多分。
「えっと、ここの近くの服屋は、自作の服とか作っていたから、そこへ行けばあるかも!!」
あたしはそう言うと、その服屋に直行した。
カラランッ♪
ベルの音と共に開いた扉。そこには、殺風景で誰もいない寂しい服屋。
「こっち」
あたしはずんずんと進んでいくと、大夢は急いでついて来る。
カウンターの奥の扉を開けると、そこには色とりどりな布があった。
「これでいい?」
あたしはベージュがかった布を大夢に見せた。
「お、おぉ・・・。それで、少し厚めのがいいかな」
大夢は少し戸惑い気味に言った。
「どうかした?」
あたしが聞くと、大夢は、少し困った様な顔で、
「いや、ビックリしてさ・・・。雫って、結構大胆に行くんだなって」
戦闘の時も無鉄砲だけど。と呟いた大夢をじっと見て、
「・・・だって、あんたにしたい様にされてると、あたしの調子が狂うんだよ」
「こっちだってそうだ!!」
大夢は少し大きな声を出すと、あたしと目が合った。
「・・・・・・」
「・・・・・何」
沈黙が嫌いなあたしは、普通に訪ねた。
「いや、なんでもない・・・ただ」
「ただ?」
「その長い髪、どうにかなんねぇかなって」
あたしの髪の毛は腰まであるロングだ。しかも色は濃い空色ときた。
「あ・・・結った方がいい?」
「・・・ん」
大夢は頷くと、あたしが持っていた布を取った。
あたしは持っていたゴムで髪を結った。ポニーテールだ。
「・・・じゃ、あたしはこれかな」
あたしは白い大きな百合が一輪咲いている、薄茶色の布をとった。生地も結構厚めだ。
「じゃ、行くか」
「うん」
外に出ると、少し薄い空がそこにあった。あと赤い月も。
「今日を含めて七日間、俺とお前は切っても切れない縁で繋がっている」
「うん」
「お前はその刀で月大王を倒せば、この関係は切れる」
「・・・うん」
あたしは、背中に背負っているこの黒刀を静かに触った。
「俺達の目的は・・・」
「月大王を倒して、世界を救う事。でしょ?」
「そう」
大夢は、少し微笑んで、また表情を戻すと、
「いいか、しばらくこの国には来ないからな?」
あたしは大夢の腕を引っ張って、
「行こう」
と行った。大夢も頷いて、あたし達は歩き出した。
いってきます。みんな。
空には、赤い月があった。
はい、第五話終了です。
あぁあ・・・また関係の無い話をぐだぐだと・・・。
この話も重要なんですと言い聞かせてみる(笑)
ファンタジーっぽくしたいなぁ・・・。
砂漠ってファンタジーっぽいよねって理由で道を砂漠を道にしました。
雫と大夢の関係は複雑なモノになってしまいました・・・。
これから二人を仲良くさせていきたいです。
次はファンタジーっぽくしたい!!
長い長い一日目の第六話でお会いしましょう!!