一日目~雫と常闇剣~
走りながら考えた。どうやったら母さん達を倒せるのか。
アタシには力はない。なにもない。
だけど、やれることがあるのはわかる。
「はあああああぁぁぁぁぁっ!!!!」
そんな声を出しながら、母さんに斬りかかる。
行き成り心臓は斬れない。母さんじゃないと言っても、母さんだ。
だから。心臓以外の部分を狙う。
「グガアガアガガガ!!」
母さんは、腕を振り下ろす。そのタイミングを見計らって・・・
「ここだああぁっ!!」
グサァッ!
腕に刺さる黒刀。
アタシは下から母さんの腕を刺している状態だから、いつやられてもおかしくない。
「グァ・・・・」
「?」
「グギャギャギャギャギャギャギャガァァァァアアァアッッッッ!!!!!!!」
母さんが大きく吼え始めた。大きな、大きな、大きな悲鳴。
「母さんっ!!?」
思わず心配してしまった。今は母さんじゃないのに。
母さんは一通り苦しむ様子を見せると、その大きな身体が縮んでいき、母さんに戻った。
「母さん!」
アタシは母さんに手を伸ばすが、届かない。
地面に倒れる母さん。慌てて倒れた場所に行って、刀を刺した腕を見た。
傷ひとつない。
「よかった・・・」
「よくねーよ!」
大夢が大声で叫んだ。
「まだいんだぞ!一人倒して終わりな訳ねーだろ!」
「わかったよ!!」
アタシは若干切れ気味になりながら、他の獣と戦った。
何時間もかかった、獣とアタシの戦闘がようやく終わり、月が赤色に染まっているのがわかった。
「やっぱ、ド素人に刀の保持者にならせるのはキツイなぁ・・・」
大夢はそんなことを言うけれど、初戦闘なんだからしょうがない。
しかも、本当に、悔しいけど、刀の扱いはド素人だ。
でもやっぱ、労いの言葉とか、ない訳!?
「・・・しょうがないでしょ、だって、自分よりデカイモノと戦うって方が大変だよ」
「俺だったら20分で終わらせる」
はいそーですか。なんなら速攻で終わらせてよ。
「で、さ?」
「・・・?」
「月獣?とか、保持者とか、常闇剣とか、って何?」
「お前には関係ない」
「コレの保持者になった時点で、もう関係大有りでしょーが」
アタシはそう言って、黒刀を触った。
「・・・ちっ」
「今舌打ちしたよね、あんた」
「別に?聞き間違いじゃねーの」
ちょっと腹が立ったので、母さんにくらったお腹の傷をさりげなく触ってやった。
「☆○△◇#@♪!!?!?」
声に出来ない様な声で大声をあげる大夢。
「ほら、さっさと教えないと、今度はもっと痛くするよ?」
「・・・っ!!!!わかった、わかったよ!教えればいいんだろ!?」
大夢はまた大声で言うと、一息ついてから、こう言った。
「・・・この国の伝説に、こんな言葉があるんだ。『月が七色に輝きし時、月は輝き、人は崇高なる獣に、王は永遠を手に入れる』・・・これは、1000年に一度行われる月祭の事。崇高なる獣は、月獣の事。王と言うのは、この世界の頂点に君臨する月大王の事」
そこで一つ区切りを入れると、
「つまり、この月祭に、月大王は、この世界の人々を代償に、永遠・・・つまり、不死を手に入れようとしてるんだ」
「不死!?」
アタシは、この出来事の重要さがあんまりわかんなかった。でも今、これでわかった。
「じゃあもう、月大王は不死を手に入れてるんじゃん!」
「いや、まだだ」
「まだ?」
「そう。この話には続きがある。『王は永遠を手に入れる為の代償に、七日間の悪夢を見る』と言うのもので、これは、月大王は、不死を手に入れる代わりに、今日を含めた七日の間、常人なら死ねる程の痛みを四六時中味わっている」
「じゃあ、その七日までに月大王をやっつければ・・・!」
「そう、この世界は解放されて、獣は人に、王は永遠を失うことが出来る・・・と思う」
「え・・・??」
大夢は、しかめっ面をして、
「実は、月獣をどうやって人にするかは、まだ解明されていないんだ・・・」
「!?」
「・・・でも、その刀の力で、月獣は人に戻れる」
お前の母さん達みたいに。大夢はそう言った。
「・・・」
「俺はお前を巻き込みたくない。でも、常闇剣の保持者は替えられない」
「なんで?」
アタシはふと疑問に思った。刀に意思がある訳でもないでしょうに。
「・・・その刀には、意思があるんだ。自分で自分の保持者を選ぶ」
嘘だ、そんなの。でも、本当なら、アタシはこの戦いに身を投じる事になる。
ぞくっとした。怖くなった。
「俺は、先を急がなければならない。お前は、どうする?」
ぞくぞくが止まらない。怖い。
「逃げてもいいけど、逃げられねーぞ」
「!」
その言葉で、もうどうでもよくなった。
「・・・わかった。行く。アタシも、大夢と一緒に行くよ」
大夢は、それを聞くと無言で立ち上がった。
「それじゃ、行くぞ。行き先はもう決まってるからな」
アタシは、何も言わずに黙って頷いた。
月が、アタシ達を赤く照らしていた。
はい、第4話終了です。ちょっと長くなったかな・・・?
遅れてごめんなさい。書いてたらデータが消えて立ち直れなくなったんです。
今回は、戦闘シーンは少しですね。書くの苦手なんですよ。
大部分は説明です。分かりづらい・・・ですよね。
次の話は、1日目です。本当の。
せっかくのファンタジーなので、ちょっとファンタジーっぽいキャラでも出したいな。
では、第5話でお会いいたしましょう。