四日目~雫と後退~
「嫌だッッッッ!!!!!」
叫んだ瞬間、常闇剣が黒く光った。
そして黒い光が広がって、あたしとタイムを包んだ。
「・・・なに?」
そのまま上に上昇して、パッと消えた。
「うわっ」
「っ!」
地面が開いたところの一歩手前で着地。
「・・・今のは・・・?」
常闇剣が、あたし達を守った?
「シズク!」
ムトの言葉で我に返る。今はボーっとしている暇は無い。
「ごめん!」
と言いつつやっぱり眼は黒く霞んだままだ。
「シズク、こっちに来い!」
タイムがあたしの腕を引っ張った。霞んだ中にも、タイムの顔が見えた。
あたしはそのまま兄ちゃんの所へ来た。
「このままじゃ負けるどころか全員死ぬ。一旦体勢を立て直そう」
「で、でも」
ココロが何か言いたげだった。
「大丈夫だと思う」
ムトが言う。
「月大王が受ける痛みは、永遠が近くなればなるほど痛みが増すんだ」
「・・・なら」
「じゃあ、いい?」
兄ちゃんの言葉に皆が頷く。
「空間移動『幸せの国』、対象、僕の身体に触れている者」
その一言と同時に、あたしたちはそこから消えた。
『消えた・・・。ああ、あの魔術師の魔法か』
「月・・・大王・・・様・・・」
『?おお、クロか』
「申し訳ありません・・・月大王様」
『もう良い。過ぎたことだ』
「・・・勿体無いお言葉、有難き幸せで御座います・・!」
『そうか、良かったな』
『お前の最期が幸せで』
「・・・最期?」
『あんな小娘どもにやられる兵など必要ではない』
「・・・っ!月大王様!!御慈悲を・・・!!!」
『もう良い。口を開くな』
「・・・」
『さらばだ、吾に群がる雑魚ども』
「・・・!!」
『幸せの国』につくなり、兄ちゃんが強張った顔をした。
「どうかしたんですか?」
「・・・・・・いや、なんでもないんだ」
兄ちゃんが強がりの笑顔を見せると、
「僕の家に行こうか」
歩き出した。
空には、緑色の月が見えた。
「いいかい?まずは色んな事を整理しよう。先ずはここから始めないと」
兄ちゃんが指差して、冷静に話し始めた。
「まず」
そう言って、あたしを指差した。
「シズクの目の事だ」
ココロが神妙な顔つきで頷いた気がした。まだ視界は暗い。
「そこで」
ムトとタイムを見た。
「君たちはこの事を知っているんだよね?」
「・・・っ」
タイムが辛そうな顔をした。
「・・・はい、知ってます」
ムトが言った。
「俺が言うよ」
タイムが拳を握って、あたし達を見つめた。
「俺が言う」
その言葉は、とても辛そうだった。
ただ撤退するだけのお話。
次回は常闇剣のことについて触れます。もう四日目も終わります。
物語も終盤です。気合入れてきます!