四日目~雫と月大王~
「!?」
『吾を呼び覚ます者』
ある一点に光が集まり、そこから人が現れた。
『吾を滅ぼさんとする者』
「!!」
ムトとタイムの顔が固まった。
「・・・月大王」
『吾の怒りに触れるとは、なんと愚かな者どもよ』
「あれが・・・月大王!?」
白いローブに王冠、神々しさがあるような姿。
「・・・というか、空に立ってますよ!?」
「月大王は腐ってもこの世界を統べる者だからね、その魔力は絶大にして絶対だよ」
兄ちゃんが説明してくれた。
『・・・夢人、大夢、吾を滅ぼさんとよく奔走したな』
月大王が嘲る様に笑った。
『その結果、こんな小娘に常闇剣を預けるとは、なんと浅はか』
「それは・・・常闇剣が決めた事で・・・」
タイムが気弱そうに言った。
「・・・そうだ、貴方はどうして動けるんだ!」
ムトが思い出したように言った。
「貴方はこの七日間、微動だに出来ないほどの痛みを受けているはず!」
ムトの言葉に、月大王は神妙そうな顔をした。
『そうだ。吾は動けん。一歩たりともな』
「じゃあ、何故!」
『月獣には、不思議な力が備わっていてな』
「?」
月大王は、少し笑った。
『月獣の生命力と引き換えに、ある者に回復力を与えるのだ』
「それって・・・!」
ココロが両手で口を押さえた。顔は青ざめていた。
「貴方は、何故そんなことができる!?」
『民は全て吾の玩具に過ぎない』
「・・・!」
『そんな事は良い。あとはここで全員消えるだけだ』
月大王が持っている杖を一振りした。
そして、あたしたちの下に、とてつもなく巨大な魔方陣が現れた。
『大災害』
次の瞬間、地面が割れた。
「うわっ!」
「きゃっ!?」
「なんだ、これ!!」
地面が隆起し、陥没し、割れた。
「このっ・・・!」
あたしは常闇剣を構えようとしたときだった。
ドクンッ
「!」
視界が大きく揺らいだ。地割れのせいじゃない。視界が暗くなってる。
「シズクちゃん!?」
ココロがあたしのところに駆けてきた。あたしの肩を掴み、起こす。
「・・・!!」
ココロが大きく目を見開いて、
「シズクちゃん、眼が!」
叫ぶように言った。
「眼・・・?」
おかしいな、ココロの顔がよく見えなくなってる・・・?
『ふぅ、つまらんな』
月大王が呟いた。
『常闇剣を持ちながら、吾に一歩たりとも近づけんか』
まるで愉しんでるかのように言う月大王に何か言ってやろうとして、
視界が真っ暗になったのに気が付いた。
「シズクちゃん!」
ココロがさっき言った言葉を思い出して、眼を覆ってみた。
「・・・ココロ、あたし、どうなってるの?」
あたしが訊くと、ココロが喉を鳴らした。
「・・・・・・シズクちゃんの眼、黒目と白目が逆になってる・・・」
苦言を呈すような声で言われ、驚いて顔を上げた。
「嘘」
「嘘じゃないよ」
ココロの声が震えた。ココロの眼から大粒の涙が溢れ出た。
『・・・もしや小娘、知らんのか』
「・・・?」
月大王の言葉の意味が理解できなかった。でも、トムとタイムは反応した。
「やめろっ!!」
『ふむ、その様子じゃ知らないのか。まあ良い、知らずに消えて逝け』
月大王がもう一度杖を揮った。
『天変地異』
次の瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
今の比じゃないくらいの地割れが起きた。
勢いよく隆起した岩々があたしたちに襲い掛かる。
それを避けられない位に、あたしの眼は弱っていた。
「シズクちゃん!」
避けられないあたしを見てココロが叫ぶ。
当たる。
そう思った時。
「シズクッ!!」
タイムが来て、あたしを抱えた。そしてそのまま避けた。
「タイム」
「大丈夫か、お前!?・・・!」
タイムがあたしの眼を見て困惑の表情を浮かべた。
「・・・くっ」
歯を食いしばって、進みづらい地面を駆けていった。
ドゴオンッ
すぐ下でそんな音が聞こえた。同時に地面が開いた。
「!!」
このままじゃタイムもあたしも落ちる。
「やばいっ」
どうしよう、このままあたし、死ぬの?
死ぬの?
ラスボス登場。
月大王様のイメージは・・・もう、暴君ってやつです。自分の利益の為なら犠牲を厭わない感じ。
そんな人の子供が生まれるなんて・・・って気はしますけどね!
過去に何かあったんじゃないかな。なんて他人ごとに思ってみます(笑)