四日目~雫と戦争~
「あっ!目標確認!城に向かっている者がいます!」
「どれだ!?・・・っ!」
部下から差し出された望遠鏡を覗いてみれば、そこにいたのは―――、
「・・・タイム・・・様・・・」
そう、タイム。月大王様のご子息の長男である、あの男だ。
その少年が――、常闇剣を手に持っている。
その黒々とした輝きが、こちらにまで届いているような錯覚すら覚えた。
「クロ隊長、ご指示を!」
部下の言葉に我に返れば、咳払いをひとつした。
「全軍、一斉砲撃!!」
我々に残された道は、常闇剣の保持者を殺して、月大王様の望む『永遠』を手に入れることだけだ。
(でも、こう間抜けに現れるものか・・・?そんなに常闇剣の威力が絶大なのか?)
という疑問も残すが、私に向けられたのは、あくまで保持者の殺害のみ。
「放てーーーッッ!!!」
ドオン!ドオンッ!!
一斉に放たれるタイムへの攻撃。いくら月大王の息子であろうとも、月大王の敵であれば容赦などできない。
クロは望遠鏡から目を離し、タイムの方へと目を遣った。
と、
ゆらり。
「?」
ゆらりゆらり、とタイムが歩く。砲弾に当たっているし、月獣が彼の目の前にいる、のに。
(当たらない・・・!?)
「隊長ッ!」
誰かが声を上げた。
「なんだ」
「ビクともしません!」
「そんなのわかっている!!」
砲弾を続けさまに撃ち続けても、倒れる事も避ける事もしない。
(なんなんだ・・・!なんだというのだ!?)
冷や汗が頬に伝う、と。
ヴゥンッ
「!」
一瞬、タイムの姿がブレた。まるで映像か何かのような――
「もしや・・・!」
「ぎゃあああっ!!」
急に遠くから多くの叫び声が聞こえた。
「!?なんだ!!」
慌てて見ると、魔方陣が見えた。
(あの魔方陣は・・・!)
「ゼロ!!!」
~作戦が起こる30分前~
「いいかい、みんな。これを君達に渡すよ」
そう言って兄ちゃんはあたし達に服を渡してきた。
くすんだ緑色の軍服。
「なにこれ?」
「何って、月大王直属の軍隊の軍服だよ」
「これをどうしろと?」
あたしが聞くと、兄ちゃんはやれやれ、と言って説明した。
「まあ、所謂潜入作戦、ってやつだよ」
「これを着て、軍隊に潜入、そして壊滅させろ・・・と」
「そう」
あまりにもアッサリ言うので、とても驚いた。
ムトもタイムも、さっきより全然雰囲気が鋭くなった。
「月大王に従うものは全員敵だと考えていい。情けはかけるな」
タイムが言う。
「こ、殺すん・・・ですか?」
ココロが怯えた様に言う。
「殺しはしなくていい。精々気絶程度だよ」
「言っとくけど、シズクの剣は一般人には殺傷能力ゼロだけど、脅し程度には使えるから」
ムトがサラリと言った。あたしとココロは若干置いてけぼりだ。
兄ちゃんが溜息をついた。
「ココロ、シズク、いいかい?」
「?」
「これは戦争だ。殴り合いの喧嘩とは訳が違う。気を引き締めないと―――」
そこで一息おいて、
「死ぬよ」
放った。
「隊長!侵入者がいます!!」
「ッ!」
(やはり、あの男・・・ッ!!)
脳裏に浮かぶ大胆不敵に笑うゼロに舌打ちをすれば、
「侵入者の中にゼロはいるか?」
あの魔方陣は恐らくゼロの造りだしたに違いない。
「いえ、あの魔方陣を造ったのは・・・少女です」
「何!?」
「そして――」
つ、と、長いナイフを突きつけられた。
「・・・なんの真似だ」
ナイフを持っていないほうの手で、深々と被られていた帽子をはずした。
「僕は、ここに終止符を打ちに来た」
「ムト・・・様」
お久しぶりです、優深です!
久々に『雫』を書いてみました!生き抜きも兼ねて。
次回、子供4人組が頑張ります!
あと諸事情により『長谷川さん家!』は削除させていただきました。
次回お楽しみに!←