三日目~夢人と雫~
ふわり、と目を覚ますと、目の前にはタイムと、ココロ。
「シズクちゃんっ!!」
「え?」
起き上がると、がばあっ、とココロに抱きつかれた。
「え?え?・・・何、この状況?」
「月獣にやられて、それからここまで運んできたんだよ」
タイムが説明してくれた。そうだったんだ・・・。
「起きないから、心配したんですよッ!!?」
そう言いながら背中をバンバンと叩かれる。痛い。
「ココロ、痛い・・・」
ただでさえ、月獣にやられた傷で痛む・・・。
「って、あれ?」
あたしは、ココロを少し話して、自分の身体を見た。
「無い」
傷が、どこにもない。
背中にあった激痛も、腕にあった爪痕も、なにもない。
「なんで・・・?」
左右に首を振る。と、兄ちゃんとムトがこっちに来た。
「僕達も吃驚したんだよ?」
「え?何、それ」
「まぁ、落ち着いて。今話すから」
ムトがそう言って、椅子に座る。
「シズクちゃん、このまま目覚めないのかな・・・」
ココロが不安そうな顔で呟いた。
シズクは依然と、ベッドの上に横たわったままで。
「こいつに起きてもらわないと、月大王を倒せない」
タイムがそう言った。
「シズクちゃん・・・」
ココロがシズクの前に跪いて手を握る。
その時だった。シズクの周りに漆黒の光が瞬いた。
「!?」
常闇剣だった。黒々とした輝きだった。
「どうして・・・」
常闇剣が、ふわふわと浮いて、シズクの真上に漂った。
その輝きが一層増して、シズクの胸の辺りに落ちた。
漆黒の輝きがシズクに移り、彼女の傷が癒えていった。
「え!?」
輝きが薄れていって、なんでもないようにまた戻った。
「今のは・・・?」
タイムもシズクのもとへ行く。僕は、そこから動けないでいた。
「・・・行かないのかい?」
僕の横にいたゼロさんが訊いてきた。
「僕は、行けない」
「どうして?」
「行く資格なんて、僕にはないから」
呟くようにして言った。
「・・・そう」
ゼロさんも、呟くような、独り言みたいに言った。
「・・・シズクちゃん!!」
「え?」
シズクの声が、聞こえた。
ムトに一通り説明され、ベッドから起き上がったあたし。
「そうだったんだ・・・ごめん」
がっくりと、項垂れる様になって。
「怖いぞ、お前」
「煩い」
束ねていた髪が解かれて、髪の毛が前にも垂れていた。
「でも、よかったです。シズクちゃんの目が覚めて」
ココロが安心したように言った。
「・・・なんで、傷が治ったんだろう?」
ふとした疑問を口にしてみた。
「それはきっと、常闇剣の能力だと思う」
「常闇剣の・・・?」
ムトは、少し驚いたような顔をしてから、タイムを見て、低い声で、
「・・・もしかして、言ってないの?あのこと」
何かを言った。聞こえなかったけど。
タイムは、俯いて、
「・・・」
黙っているようだった。
「言わないの?言わないと、これからが辛いよ?」
「わかってる。俺・・・俺が、言うから。待って」
「・・・はぁ」
ムトが一つ溜息をついた。
「わかったよ」
それだけ言うと、ニッコリと微笑んだ。
「サンキュ」
タイムが礼を言った。?マーク満載のあたしとココロ。
「ねえ、何話してんの?あたし達に関係あるなら、教えてほしいんだけど」
「・・・まだ、駄目だ。もう少し、待て」
タイムが顔を上げて言った。あたしは、タイムの眼を見た。
眼の中で、静かに、静かに何かが燃えているような気がした。
「・・・了解。待つ」
苦笑交じりに言うと、タイムが笑った。
「えぇ?なんの話ですか?」
ココロだけ、困惑していた。
「時期がきたら教えてあげるから。待ってて?」
ムトがココロに微笑みかけた。
「ぶぅ~・・・」
ココロは頬を膨らませて言った。
「・・・水を差すようで悪いんだけど」
兄ちゃんが不機嫌そうな顔で言ってきた。
「なに、構ってくれなくて不機嫌になってんの?」
笑ってみせると、無愛想な顔でにらまれた。怖い。
「これからどうするつもり?」
「月大王の所へ行く」
タイムが答えた。
「こんなお子様集団で?」
「お子様で悪かったな」
「うん。悪いね。だから・・・」
兄ちゃんは、タイム・・・と言うよりは、あたし達全員に指差した。
「僕も行く。子供には保護者が必要だろう?丁度よく暇だったからね」
「はあ!?」
タイムを含め、全員が驚いた。
「あ、勘違いしないでね?暇だったから。それに、この物語の結末を見てみたいとも思っているから」
兄ちゃんは笑って言った。
『主人が行くのなら儂も行くのニャ!!』
レンが兄ちゃんの肩に乗っかって言った。
「じゃ、決まりだね♪」
兄ちゃんが楽しそうに言った。
拒否権は、ないんだろうなぁ・・・。
そう思って、ちょっと苦笑いした。
はい、どうも、お久しぶりです。削除されて挫折状態でした。
今回は、前半はムト、後半はシズクが語り部を担当しました。
ムトの語り部は、シズクとは違って、説明口調にしてみま・・・した・・・?
なんか、一人称とか以外は殆ど一緒な気がします(笑)
次から、また旅です。そして超展開。多分。