三日目~雫とお兄ちゃん~
ココロの故郷、『岩山の国』を出て、レンを筆頭に歩いていく。
「・・・レン、一つ訊いていい?」
『ん?にゃんじゃ、シズク?』
「どうして、あたし達の居場所が分かったの?」
あたしが訊くと、ムトが思い出したように言った。
「そう言われればそうだ。レンさん、あなたはどうして僕らがここにいると分かったのですか?見えていた訳でもないでしょう」
ムトの言葉にレンはうんうん、と頷き、
『甘いな、小僧。正確には儂ではなく、主人の能力にゃ』
「主人・・・って、シズクの兄貴だろ?」
タイムも話しに参加してきた。
『ふふん、主人はこの世界でも有名な魔術師であり占い師にゃ』
「占い師・・・?それはまたオカルトチックですね~」
でも興味あります、とココロが言った。
「シズク」
「ん?」
タイムに腕を引っ張られ、耳元でこう言われた。
「お前の兄貴って、どんな奴だよ・・・」
その言葉にあたしは苦笑交じりにこう言った。
「会ってみれば分かるよ」
出発してから何時間経っただろう。今は森の中にいる。
「これが樹木ですかー。本の中でしかみたことないです!」
ココロが半ば興奮気味に言った。
「そっか、ココロの国は木が一本もないもんね」
「はい。全て草です・・・」
ココロは少ししゅんとしながら答えた。
「でもっ、これから沢山の発見があると思うと、どきどき、わくわくです!!」
・・・ココロって、たまに子供っぽい発言するなぁ・・・。
なんて思いながら、一歩、また一歩と歩いていった。
すると突然。
「伏せろ!!!」
ムトの声に、全員が驚いて、咄嗟に地面に伏せた。
伏せた瞬間だった。あたし達の上を、何かが通った。
ギュウウウウウウンッッ!!!
「な、なんですかー!!?」
ガバッと起き上がるココロ。あたふたしまくりだ。
「しっ、ココロ、落ち着いて」
ムトがココロの口を押さえた。真っ赤になるココロ。
「ギャギャギャギャギャッ!!!」
「!!」
目の前にいたのは、月獣。辺りを見回すと、何故か木が抉られていて、まるで光線とか、大砲とか、そんなものが通った跡みたいだった。
「ギャギュギャッ!」
月獣が一斉にあたし達に襲い掛かった。
「きゃああああああああっ!!?」
ココロが叫ぶ。
「ココロ、つかまって!」
ムトがココロを抱えて避けた。
「シズク!」
「わかってるよ!!」
あたしは、背中に背負ってある常闇剣の刀身を抜いた。
「はあっ!!」
月獣の身体、手足、肩などの部位を刺していく。
次々に人間に戻る月獣達。だけど・・・
「多くね!?」
そう。数だ。多勢に無勢って、こういうことなんだろうか・・・。
『シズク!油断するでにゃいよ!』
「わかってるよ!」
少し苛立ちを覚えながら、月獣を倒していく。倒していくたびに、増えていく。
「ああああ、もう!!」
我武者羅に剣を振るう。と、一体の月獣が、何か口に光のようなものを吸収し始めた。
その周りにいる月獣が次々と倒れていって、人間に戻っていった。
「え・・・!?」
その代わり、なんだろうか。その一体の月獣の身体が大きくなっていって、口に丸い光が宿っている・・・。
「シズク、避けろ!!!」
タイムの声。反射的に草むらに飛び込む。瞬間。
ギュオッ
ギャウウウウウウウウウンッ!!!!
一筋の深い光が、森の中へ消えていった。
焼け野原にも似た光景が、目の前に広がっていた。
「・・・なん、だよこれ・・・」
一人で呆然と立ち尽くしていた。
「シズク、後ろ!!」
ムトが叫んだ。次の瞬間。
ガッ!!
「!!」
巨大化した月獣の一撃を後ろから受けた。声も出ずに倒れた。
「ギュガガガ!」
笑うように咆哮する月獣。
「シズク!!」
タイムの声。朦朧とする意識。
もう駄目だ・・・!!
そう思った時だった。
「空間移動『月大王の座』、対象、月獣一体」
パチンッ
音が鳴った瞬間。月獣が音もなく消えた。
「・・・!?」
「駄目じゃないか、シズク」
「誰だ、お前!?」
タイムの言葉にあははは、と笑いながら、青い髪を靡かせて、その男はこう言った。
「大好きなお兄ちゃんが逢いにきてやったと言うのに、なんて無様な格好だ?」
「お兄ちゃん!?」
波乱の、幕開けの予感。
はいどうも、お久しぶりですね!!
今回ですが、戦闘シーン再び!って事です。
二回目なんですが、どうも下手で困っております。
戦闘ものには向いてませんね、私。
さて、このお話のラストに、思わぬ人が出てきました。
自分でも予想外の展開です・・・(汗
最初は、みんなで協力して巨大月獣を倒す、っていうのにしたかったんですが。
何故か出てきたよ、この人。どうしよう・・・。
波乱の幕開け・・・っていうか、もう幕開けっ放しですけど(笑)
更なる混沌の予感・・・です。