三日目~雫と黒猫~
朝、目が覚めた。辺りはまだ暗くて、空を見ると、黄色い月があった。
「昨日は何色だったっけ・・・?」
そんな事を言って目をこする。と言うか、ここはどこだ?
近場を見ると、タイムがいて、タイムのそっくりさん・・・ムトがいる。
どうやら、雑魚寝をしていた様だ。
「おはようございます。目が覚めましたか?」
「うひゃああっ!?」
吃驚して声のする方を見ると、ココロがいた。
あたしの声に驚いた表情のまま、びくびくと震えていた。
「あ、ごめん」
「いえ・・・驚かせた私も悪いから」
「あはは・・・。で、こいつらまだ起きないの?」
「はい。揺さぶったりしても起きなくて・・・」
そこには、同じ顔をしている二人が寄り添っていて、いつもとは違う表情で眠っていた。
「きっと、疲れたんだと思います。私たちとは違って、もっと前から旅をしていたと思うから」
ココロの言葉に頷く。タイムって、そう言うところ、全然見せないからね。
「それにしても、そっくりだなぁ」
「ですよね。びっくりです」
他愛無い会話を交わし、笑い合う。
「ところで、準備はできた?」
「あ、はい。バッチリです!」
そう言って親指を立てるココロ。ちょっと可愛い。
「じゃあ、そろそろ起こさないと」
「ですね。・・・どうします?」
こっちに来て一緒にしゃがんで、二人の顔を覗き込むような体制になった。
「ココロ、キスしちゃえば?」
笑っていってみる。ココロは顔を真っ赤にして、
「え!?え!!?そ、そんなの駄目です!ムト君に知られないままなんて!!」
「あたし、別にムトに、なんて言ってないよ?」
「あ、え!?そ、そうでしたっけ?えーと、えーと・・・」
「・・・嘘だよ、言ったよ。だからそんな慌てないでってば」
「あぁ、はい。わかります・・・」
「わかります、って何」
慌てふためくココロを宥めて、一つ溜息を付いた。
「でもさ、実際どうする?踏みつける?」
「そ、そんなの駄目ですよ!!可哀想です」
「うーん・・・」
二人で腕を組んで悩んでると、
『そんなもの踏みつけてしまえばええじゃろうにゃ!!』
「にゃ?」
あたしとココロは顔を見合わせて、聞こえた声に反応した。
「だ、誰ですか!?」
「ていうか、何処に居んのよ!」
『ふん、そんなもの、ここにきまっておる!』
「え?」
瞬間、何か黒いものがタイムとムトの間に現れて、止まった。
「ぐええっ」
「うあっ」
それぞれうめき声を上げる。
「ム、ムト君!」
わたわたしながら、起き上がるムトに駆け寄るココロ。
あたしも、二人のところへ行った。
『ふん!次期王ともあろう男が、こんなところで何をしとるのにゃ!』
ムトとタイムの上に乗っかっていたのは、黒猫だった。偉そうにふんぞり返っている。
『おい、シズク、お主が儂を忘れるとはどういうことにゃ!』
「・・・?・・・あ」
思い出した。
『今頃思い出したか。この小娘め』
「小娘は余計だ、このチビ猫」
正体がわかった途端、いつもの調子で話す。なんか、馬鹿みたいだ。
「黒猫なんてどこにでもいるでしょうが。アンタとの区別なんか、その首輪位でしょ」
黒い猫の首に栄える、鈴の付いた赤の首輪。でも、その色をした黒猫なんてどこにでもいる。
『ふん、これは主人がくれた特別な首輪にゃ。他の連中と一緒にするな』
「あー、はいはい。で、何?兄さんがあたしになんか用なの?」
「兄さん!?」
三人が驚いたように叫んだ。
「お前、兄貴なんて居たのか!?」
「うん、一応?」
「知りませんでした・・・」
「まぁ、初めて言うしね」
面倒なので適当にあしらっといて、あたしの視線は黒猫一直線だ。
「で、ほら。自己紹介位しときなさいよ」
『おぉ、おぉ、そうだった。忘れてた』
「忘れんなよ」
『コホン。儂の名は恋。恋愛の恋と書いてレンにゃ』
「なんで、猫が喋れんだよ」
タイムが立ち上がって面倒そうに訊いた。
『こら小僧!口の聞き方に注意しろ!!』
レンは怒ったようで、タイムに飛びかかる。
「わ、わ!!」
タイムは驚いて手を滅茶苦茶に動かした。
『ふん、たかだか十四、五年しか生きておらん小僧の癖に、儂に生意気な口を聞くからにゃ』
レンはそう言うと、また偉そうになった。
「レンがどうして話せるかって言うのは、兄さんのお陰なんだけど、それがどうして、って言うのは話せば長くなるからまた今度ね」
「・・・で、レンさんは、何をしにこちらにいらっしゃったんですか?」
ココロはニコニコ顔で質問した。
『それにゃ。小娘、いい質問をしたな』
「えへへ、ありがとうございます」
ココロは更にニコニコ顔になった。・・・動物好き?
『シズク、主人からの伝言にゃ』
レンはそう言うと、あたしに近づいてきた。あたしはレンを抱いた。
『幸せの国、幸せの国。明日までに来るべし』
それだけ言うと、レンはあたしの腕から降りた。
あたしは一つ溜息を漏らして、三人を見た。
「みんな、ごめん」
「?」
「あたし、『幸せの国』に行かなきゃならなくなった。明日までに」
「明日!?」
「ちょ、ちょっと待ってシズク。急すぎないか?」
「うん、そうなんだけど・・・。兄さんの命令だから」
「兄貴の命令、って・・・」
タイムが呆れたような声を出した。
「でも、兄さんの命令は絶対だし。それに・・・」
「そ、それに、なんですか・・・?」
「あの馬鹿は、もの凄く役に立つ」
あたしは、三人に頭を下げて、懇願した。
「これは、あたしの我が侭だし、兄さんの我が侭だ。でも、行かなきゃ駄目なんだ。お願い」
「・・・別にいいけど」
「え」
あたしは頭を上げて、タイムを見た。
「別にいいけどさ、『幸せの国』って、どこだよ」
『それは儂が案内するのにゃ』
「ありがとうございます、レンさん」
「まぁ、そう言う事だよ、シズク」
「・・・うん」
ムトに肩を叩かれて、素直に頷くあたし。
次の目的地は、『幸せの国』。
そこに、あたし達にとっての幸せはあるのかな?
はい、お久しぶりです!!
三日目に入りました!!っと、新キャラも出来ました~♪
レンのイメージは、家にいるお爺ちゃん猫です(笑)
シズクの家族構成も滲み出てきました・・・。
これからまた、今度は四人+一匹旅です!!
・・・さて、そろそろ戦闘シーンでも入れましょうかね。