6 作戦開始!
優衣ちゃんには隠れファンが多く、学校が変わってからも男子たちから人気です。
なんでもありな世界線なので、今回は特にわかった状態で見てください
「よし……行こっか」
……なんで……。なんで優衣ちゃんと朝陽は果たし合いにでも行くかのような……渋い表情をしてるの……?
優衣ちゃんはまだわかる。でも、朝陽はなんで?
「お、そんな困っている飛鳥ちゃんに答えを教えよう」
「な、なんで……」
そんなにボク顔に出てた……!?
「バレバレ。それでね、こうやって何となく面白い感じにしたらきっと仁ノも喋りやすくなると思う!」
「確かに……」
でも……ボクそんなに顔に出てたんだ……。じゃあ、朝陽にはもう好きだってバレてる可能性もある!?
ヤバいヤバいヤバいって流石にそれはヤバい!
「イチャイチャするのは後でして〜。ところで飛鳥ちゃん、何持ってるの?その荷物」
「あ、これ?」
不思議な目で朝陽と優衣ちゃんはボクの持っている箱を指さした。
「これは……ボクのメイク道具。どこに何があるか分からないし、仁ノくんにもメイクの良さを教えたいし」
もし……、ボクと同じ理由だった時、助けてあげられるように。
まぁ……そんなことはないだろうけど。念には念をってね。
「「なるほど」」
「じゃあ改めて」
深く深呼吸をする優衣ちゃんに合わせて、ボクと朝陽も頷く。
「「「仁ノ学校登場作戦、開始!」」」
息を揃えて拳を掲げた。
ピンポーン
優衣ちゃんに付いていくと、普通の一軒家に着いた。
どこにでもありそうな一軒家だ。
『……はい』
インターホンからは、寝不足なのか機嫌が悪いのか、少し暗い声が聞こえてくる。
「ねぇ……機嫌悪いんじゃない? 大丈夫?」
あまりにも暗すぎる声に不安を持って優衣ちゃんにすがりつく勢いで尋ねた。
すがりつくっていっても、インターホンを鳴らしたのは優衣ちゃんだから、小声で聞いただけ。
「大丈夫。これがいつもの仁ノだから」
これがいつもなの!?
朝陽もボクと同じことを思ったのか、目を見開いていた。
「仁ノ〜? 遊びに来たよ〜」
『優衣! 待ってたよ! 鍵開けてるから入ってきていいよ!』
「「えっ」」
今度はすごく明るい声が聞こえて、また朝陽と一緒に驚いてしまう。
すごいキャラの子かもしれない……。……だとしても、学校に来ない理由はちゃんとあるからね。そこが一番重要だ。
「じゃ、行こっか」
「え、待って待って待って?」
扉に手を掛けようとした優衣ちゃんに、朝陽は後ろから呼び止めた。
「仁ノ、さっきの様子じゃオレ達がいたら怒るんじゃないか?」
「た、確かに……仁ノくん、機嫌を悪くしたりしないかな……?」
ボクも朝陽の考えと同じだ。
優衣ちゃんだとわかるまで、嫌悪感増し増しだったしこれが違う人だと、多分すぐ切ると思うんだよね。
「うーん、物は試しの百八十発って言うし、大丈夫で
しょ!」
「「百八十発なんて言わないよ」」
まあまあまあまあとその場を誤魔化して、優衣ちゃんは思いっきり扉を開ける。
タタタタタタッ
家の奥から走ってくる音が聞こえた。
「優衣ー!」
それに合わせて、黒いフードを着た男の子が優衣ちゃんを抱きしめる。
優衣ちゃんは慣れてるのか、抱きしめ返していた。
「え、朝陽、これどういう状況?」
「わ、わかんない……」
朝陽と小声でコソコソと話す。
状況が理解できていないのが、ボクだけじゃなくてよかった……。
内心安心しているのは、ボクだけの内緒。
「……は?」
なるべく聞こえないように話していたつもりだったけど、角度的に仁ノくんの視界に入ってしまった。
ボク達の存在を知るなり、嫌そうに眉をひそめる。
「ちょっと、誰」
「あ、えっと、優衣ちゃんの友達の、日和飛鳥です……」
「その友達の宮水朝陽!」
名乗っただけなのに、仁ノくんはもっと嫌になったのか唸り声をあげる。
「ゔゔゔゔゔゔっ」
そんな、そこまで狼みたいにならなくても……。
「こらこら、唸らない唸らない」
「嫌!! 家に来ていいのはアタ……ぼ、僕が許した優衣だけ!!」
え……。アタシって今言おうとしてた……?
「仁ノ……? アタシって言った?」
優衣ちゃんも聞こえていたのか、少し仁ノくんとの距離を置く。
その瞬間、ズキンと心が痛くなった。
……持ってきてて正解だった。見た感じ、ボクと仁ノくんの身長差はほとんどない。服も貸してあげられる……。
「ち、違うよ! ほら! 最近、よくアニメ見てて、それで……その……つい癖で出ちゃったみたいな感じ!」
仁ノくん本人は誤魔化しているつもりなんだろうけど、ボクから見たら無理して理由を作っているようにしか見えない。
「そう……? よかった……」
仁ノくんが『アタシ』と言いかけたことが不安だったのか、優衣ちゃんは安堵の息を吐く。
……なんだかな……。
心がモヤモヤしたまま、なんとなく朝陽の方に視線を向ける。
「……」
さっき言い訳をしていた仁ノくんみたいに、つらそうな表情を浮かべていた。
朝陽でも、そんな顔するんだ……。
「……と、とりあえず! 今日はその二人入れてあげるから!」
これは……かなりの理由で学校に来れてないんだな。
ボクと朝陽と優衣ちゃんの三人で顔を見合わせてうなずき合う。
「仁ノくん。ちょっとボクと二人で部屋行かない?」
「「「へっ!?」」」
そして三人の抜けた声が家全体に響いた。
仁ノくんと優衣ちゃんは誕生日がたまたま同じ10月10日です。同じ病院で生まれて、そのときから仲が良かったんです。
先に言っておきますが、次は仁ノくん視点です。




