4 自己紹介
朝陽のお兄ちゃん、亜季も飛鳥のお姉ちゃんと一緒で高校時代は有名なバドミントン選手だったんです。美乃花とは関わりがあるため、もう一回バドミントンをするかという話を裏で密かにしているとか……。
なんでもありな世界線なので多少のことは許してください。
「え〜、今日からみんなの担任をする、よし川ひなです〜」
めちゃめちゃふわふわの綿あめみたいな雰囲気の女の先生が教室に入ってきた。
赤い髪に青い目の姿は記憶に残りやすそうな容姿。
かわいいし、きれい。
そんな感じで見た目だけでも十分いい印象を与えてるけど……。
「「「「…………」」」」
あたりが悲しいくらい静かになった。
「あらら〜、みんな緊張でもしているのかしらね〜?」
首を傾げた先生の周りにはなんとなくピンクのお花がふわふわ浮いている感じがする……。
……いえ、先生。別に緊張はしていないと思います、ただ……、ただ先生のほんわかさに圧倒されてるだけだと思われます……。
そんなこと、誰も言えずに、ただただ気まずい空気が教室を包んでいく。
「はーい、先生〜! 質問いいですか〜?」
沈黙を刃物で切り裂くように朝陽が音を立てて立ち上がった。
「え〜っと、宮水……くん、で合ってるかな?」
「あったりー。で! 先生先生!! 好きなタイプとかいる??」
……は?…………馬鹿なの? 本当に。
会ったばかりの先生によくあんな事聞けるな……。
こんなことしたら他のクラスメイトも絶対引いてるよ……。
横目でチラッと他の人の目を見ると、まさかの表情をしてて椅子から転げ落ちそうになった。
……え!?
まさかまさかのボクが想像していたことよりも真逆のことが起きた。冷たい視線を送っている姿を想像していたのに……。
なんで……なんで……!? アイドルを見るようなキラキラした目をするの!?
「えぇ……?あ、えっと……、ふ、不良だけど実は優しくてほんわかしてて、可愛い人かな……」
顔を赤らめて恥ずかしそうにするよし川先生を見て、みんなああ……となんとなく察した。
絶対この先生その人と結婚してるだろうなぁ……。と。
そして全員でえ。と思ってしまう。
不良でほんわか!?
「……さっ!私の話はもういいから、みんな一人ずつ自己紹介していこっか!」
恥ずかしさを隠したいのか、思いっきり話題を変えてきた。あはは、照れ隠し下手だなぁ。
「ん〜、せっかくの自己紹介だから出席番号順だと面白くないわよね……。よし!」
先生は机の中をあさって大きな星の柄をした箱を取り出す。
何あれ……。いかにもお祭りとかで出てきそうな雰囲気の箱じゃん……。
「じゃじゃーん! くじ引き〜!!」
くじ引き……。
また教室の空気がガクンと下がった気がした。
「おっ! いいじゃん! 面白そう!」
それをカバーするようにまた朝陽が盛り上げる。
このクラス、本当に大丈夫……?
流れのままとりあえずくじ引きを引くことになったけど……。
……うん。なんで一番!? 一番初めに自己紹介なんて……ムリムリムリムリムリムリムリ!!!!
いくら何でもそれは無理!
「おーい、飛鳥ちゃん何番目〜? オレ13番!」
笑顔で朝陽は話しかけてきたけど、真っ青なボクの顔を見て焦った顔になってしまった。
「え!? ど、どうしたの!? もしかしてまだ具合悪い!?」
「違う……い、いいいいいいい一番………………」
震えた手でくじの番号が書かれた紙を渡すと今度は急に笑顔になる。
コロコロ表情が変わって犬みたいだ。
「ならオレが交換してあげる! それでやりやすくなるでしょ?」
そのまま朝陽は自分の紙をボクに渡してくれる。
!!! い、今、手があたった……!!
恥ずかしさと申し訳なさで顔が赤くなる感覚がした。
「い、いいよ! 朝陽が困っちゃうじゃん!」
「んーん。大丈夫、ここはオレがかっこつけないと」
……あれ?
そう言った朝陽の雰囲気が、なんだか切なそうに見えてしまう。
「……せめてもの罪滅ぼしをしないとね」
「……え?」
「なんでもないっ!」
罪滅ぼし? つみってあの罪だよね? 朝陽、何かしちゃったの……?
「まぁとりあえず、飛鳥ちゃんが13番目だね!」
「あ、ありがとう?」
朝陽はそのまま自分の席に戻っていった。
「オレの名前は宮水朝陽! 好きなものは飴! 嫌いなものはない☆」
「でも……飴以上に大好きなのは……オレのお姫様たちっ!」
大声で堂々とチャラ男アピールをした朝陽を見て、うわぁ……と思う。
こんな事言うの、アニメの中だけだと思ってた……。
人前で堂々とオレは一途じゃありませんって言ってるようなものじゃん……。
そんなこと言って寄り付く子、いないでしょ。
「キャ〜〜〜!!! 朝陽様〜〜!!!」
またボクの想像の斜め上に行った。
うん、だからなんで!? 今のところに叫ぶ要素あった!?
やっぱり、ボク朝陽みたいな性格のやつ、苦手かも……。
そんなボクを気に掛ける人なんて存在せず、淡々と自己紹介が続いていく。
つ、つつつついにボクの番……!!!
緊張しすぎて手汗が止まらない。
だとしても、みんなが歩む道なんだから(?)!ボクも頑張らないと!!
気を引き締めて立ち上がった。
「ぼ、ボクは日和飛鳥!メイクと料理とお裁縫ならボクに任せて!いろんなショッピングも知ってるよ!嫌いなものは辛いもの!舌がヒリヒリして嫌い!」
女子にも男子にもいい感じの印象を与えて、嫌な感じに思われないようにする。
高校生活の出だしだ。間違えたらそこで地獄の始まり。
……ボクにとっての学校は、あの世で裁かれる前の場所。一つ間違ったら地獄に落ちる。ちゃんとできたら天国行き。
紙一重の場所だ。
「あの子、可愛い」
「メイク、私も教えてもらおうかなぁ」
ふぅ……、とりあえず、スタートダッシュは乗り越えられた……かな。
みんなのキラキラした瞳を見て、ホッと安堵の息を吐く。
「……」
ふと朝陽の方に視線をやると、ウインクをしながら親指を立てていた。
ボクも嬉しくて、うなずきながら椅子に座る。
朝陽がいてくれて、よかったぁ……。
それから自己紹介はどんどん続いていったけど、何となく、ボクは朝陽のことが気になってしまう。
さっきは笑ってた。でも、その前の時、罪滅ぼしがどうたらこうたらって言ってた時は、悲しそうだった。
……何なんだったんだろう。
成功してうれしいと思う気持ちと、朝陽のことで、心がモヤモヤした。
飛鳥と朝陽は自己紹介をした後、それぞれ仲のいい友達ができました。飛鳥は原優衣ちゃん。朝陽は御剣双くん。後ほどこの二人には登場してもらう予定です




