表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脇役な主人公補正者 〜偶然が俺を英雄にする世界  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/34

第16話 ミリア、光の刃を振るう

北の森、討伐翌日の昼。

 陽射しが枝の隙間を縫い、木漏れ日がパチパチと焚き火の炎を照らす。

 その周囲では、四人の冒険者たちが昼食のスープをすすりながら――まるで修学旅行後の反省会のようなテンションで語り合っていた。


「ねぇ、本当にあの狼もう来ないんですよね!?」

 リサが真っ先に叫ぶ。声が裏返っている。


「来ねぇって!普通は来ねぇ!」  悠真がスプーンを握りしめて叫び返す。


「……“普通”じゃない相手だったけど。」  

ミリアが、じと目のまま短く言い放つ。


「昨日の“偶然勝利”は、本当に奇跡でしたね」

 セレナはメモを取りながら冷静に分析している。


「だから偶然じゃねぇって!いや、偶然だけど!」

 悠真はツッコミながら、自分でも何を言っているのか分からなくなる。


 ……完全に漫才である。


 リサがパンをちぎりながら言う。 「でもあのときのミリアさん、めっちゃかっこよかったです!」

「……偶然です」

「いやいやいや!偶然であの反応速度とか出ないでしょ!?」

 悠真が全力で否定する。


「ってかミリア、昨日から剣磨きすぎじゃね?」

「気配が残ってる。……あいつ、戻ってくる」

 ミリアが静かに呟いた瞬間、焚き火の火が微かに揺れた。


 空気が一瞬で変わる。

 先ほどまでの冗談まじりの空気が、一気に張りつめた糸のように――。


「え、戻ってくるって……まさか」 「気のせいであってくれ」

「悠真さん、いつもそう言ってフラグを立てるんですよね」

「やめろ!そんなメタい指摘すんな!」


 ――不吉な沈黙。


 森の奥から、枝が折れる音がした。



「……おかしい。風が止まった」  セレナが小声で呟く。


 次の瞬間、森の向こうから――咆哮。

 低く、重く、地面を震わせるような声。


 霧の中から姿を現したのは、昨日倒したはずの中型狼。

 しかしその体には黒い紋様が浮かび、毛並みは逆立ち、目は真紅に燃えている。


「え!? 昨日のあの子!?」

「“あの子”なの?大きくなってる!進化してる!?」

「魔力値……昨日の三倍以上……!?」 「お前ら、RPGの敵ステータスみたいに言うなって!」


 悠真のツッコミが虚しく響く間に、狼は低く構えた。

 ドッ――と地面を蹴り、風を裂くように突進!


「防御陣展開――っ!?」  

セレナが詠唱を終える前に、魔法陣が一撃で粉砕された。


「ひゃっ!?」  

リサが悲鳴を上げ、悠真は咄嗟に彼女を引き倒して避ける。

 風圧だけで木々が揺れ、地面がえぐれた。


「はっ、はぁ!? 昨日のより何段階ボス化してんだよ!?」

「……もう逃がさない」

 ミリアの声が、低く響いた。


 彼女が立ち上がる。

 光の粒子が髪にまとわりつき、風が彼女の周囲だけ止まる。

 空気が震え、世界の色が変わったような錯覚を覚えた。



「ミリア、まさか――」

「《封光剣シールブレイド》……試してみる」

 剣をゆっくりと掲げる。


「ちょっ、待て待て待て!それ試作段階の魔法だろ!?」

「ミリア、それは制御不能って――」 「大丈夫。たぶん」

「“たぶん”って言った!? 絶対ヤバいやつだろ!?」


 だが、もう止まらなかった。


 彼女の剣が、光の奔流に包まれる。

 世界が白く染まり――。


 ――ドォォォォォン!!!


 轟音とともに、森が爆ぜた。


 光の波が地平まで走り抜け、木々をなぎ倒し、空気すら弾き飛ばす。

 悠真は吹き飛ばされながら叫んだ。


「RPGのラスボス直前の戦闘能力ぅぅぅ!!」


 セレナは防御魔法を必死に展開、リサは涙目で悲鳴を上げる。


「うわあああ!木が飛んでくるぅぅぅ!!」

「それ防御じゃなくて回避案件です!」


 光が収まったとき、そこには――巨大なクレーター。

 中狼の姿は跡形もなく、森の半分が吹き飛んでいた。



 風が止まり、静寂だけが残った。


 すすけた顔で立ち尽くす三人。

 ミリアは、煙の中で剣を下ろしていた。


「……終わった」

「終わったって……何もかも終わったんだよ!!!」  

悠真が叫ぶ。


 リサは感動と恐怖の入り混じった顔でミリアを見る。


「ミリアさん……すごすぎます…!」

「これ……封印魔法の派生ですよね? 破壊魔法の間違いでは……?」

「……初めて使った。加減、わからなかった」

「いや“加減”どころか地形変わってるからな!?」


 悠真のツッコミが、崩壊した森に虚しく響く。


「これ、どう報告するんですか……?」

「“自然現象”ってことにしましょう」 「誰が信じるかそんな言い訳ぇぇぇ!!」


 そのとき、クレーターの中心で、ぽつりと花が咲いた。

 ミリアがそれを見つめ、淡く微笑む。


「……でも、守れた」

「……うん」  

リサが頷く。


 悠真は頭をかきながら溜め息をつく。

「いや守ってたけど!森以外をな!」



 夕陽が森を赤く染める。

 崩壊した地形の上で、四人は並んで腰を下ろしていた。


「結局、チートの本領って……使い方次第なんだね」

 セレナの言葉に、ミリアは静かに頷く。


「力は、ただの手段。でも、誰かを守れるなら――それでいい」

「……言ってることはかっこいいけど、背景が終末後の光景なんだよな」  悠真が苦笑し、三人の笑いがこだました。


 リサがふと呟く。

「次、もしまたあんなの来たら……」

「そのときは、またミリアに頼むさ」

「……加減できるように、練習しておく」

「できれば、地形が残る程度で頼むわ」


 最後の一言で、全員が吹き出した。


 夕暮れの風が頬を撫で、焦げた木の匂いが遠ざかる。

 ミリアの瞳に映るのは、消えた光の残滓。

 その奥に、確かな決意の炎が宿っていた。


 ――その力は、もう“チート”ではなく、“意志”だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ