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第二話 鬼の名前はメイ

 親は、まだ家に帰って来ていない。その間に輝生は少女についていろんな事を聞きてみた。


「名前はなんですか?」

「…」


答えが帰って来ない。輝生は、持っていた紙に、日本語と書いた。

 英語、ポルトガル語、ロシア語とあらゆる言語で聞いてみたが、何一つ答えは帰って来なかった。


(…言葉が分からないのか)


輝生は、自分の部屋から一冊の教科書を持ってきた。


『国語の教科書 一年 上』


と書いてある。輝生は、少女に日本語を教え始めた。


「これは、“あ”。言ってみて。」

「…」


中々発言をしてくれない。


(あまり強い発言はしたくない。)


輝生は、少女から怖がられたくない。怖がられるとこれから日本語を教えるのに苦労するからだ。


「“あ”。言ってみて。」

「…」

(どうしたものか。)


少女をよく見ると、ものすごく痩せていた。いや、痩せすぎている。

 輝生は、少女にチャーハンを作ってやった。すると少女は、お皿を待ち上品にかつ大胆に食べ始めた。


(…腹が減っていたのか。)


少女がチャーハンを食べ終わった後、輝生は、また勉強を再開させた。


「これは“あ”。」

「……ぁ」

(話してくれた。)


顔には出さなかったが、心の中ではとても喜んでいたであろう輝生は、平仮名、カタカナ、簡単な言葉を教えた。


「輝生さん…ありがとうございます。」

「大丈夫だよ。」


少女がここまで話せるようになったのは、少女が物覚えが良いのもあったが、輝生の教え方がとても上手かった。おそらくそこら辺の先生より上手であろう。


「ところで、君の名前はなんて言うの?」

「…メイです。」


案外、普通の名前で驚いたが、


「メイか。漢字は何て書くの?」

「わからないです。」

(そりゃそうか。漢字なんて何百とある。)

「これから漢字も教えてあげるから、これだと思ったら教えてくれ。」

「はい!」

(元気になったな。信用されたようでなにより。)


そんな事を思いながら、勉強を再会しようとすると家の鍵が開いた音がした。


(まずい、母さんが帰ってきた。)

「メイ!頼むが二階の茶色のドアの部屋で待っておいてくれないか。」

「??…わかりました。」


メイは、走りながら階段を上がり俺の部屋に入った。


「ただいま〜」


それとほぼ同時に母が家に帰ってきた。


「おかえり。」

「今日終業式だったんでしょ?あとなんで、あんた制服なのよ。」

「あぁごめん。忘れてたんだ。」


いつもは私服に着替えていたが今日はそれどころじゃなかったので着替えることができなかった。


「あらそうなの。それと何で小学校の頃の教科書があるのかしら?」

「普通に見つけたから、懐かしさに浸ってただけだよ。」

「ふーん」


何か隠し事があるのではないかと疑う目で輝生を見てくる母―由乃(ゆきの)は、いつもは子供思いで怒る時はしっかりと怒ってくれるちゃんとした親だ。

 そんな時、


「ハックチョン」


と、二階から誰かがくしゃみをした音がした。由乃は誰もいないと思っているので、


「誰かいるの?」

「いや、誰も。」

「ほんとに?」

「ほんとに、ほんとに」


それを,聞いた由乃は、走って階段を駆け抜け、俺の部屋の扉を開けた。輝生も走ってついて行ったが間に合わなかった。


(最悪だ。)


由乃の目の前には一人の少女が映っていた。それも角が生えた。


「輝生ー」

「はい…」

「誰かしらこの子。」

「そこの道で拾ってきた角が生えている少女です。」

「どうして言わなかったの?」

「何か言われると思ったからです。」

「隠し通そうとしたのかしら?」

「いえ、そう言うわけでは。」


と言うお説教をされながらも何とかメイのことを許してもらえた輝生は、由乃と一緒に彼女の事情を聞くことにした。

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