第一話 鬼との出会い
「…どうしたんですか?」
安綱 輝生が少女…いや、鬼と出会ったのは、雪が降り積もる中、少女が道の端で座り込んでいる時だった。
今年最後の中学生活の冬休みが始まろうとしている輝生は、友達はいるが基本一人でいることが多かった。
輝生は、あまり人には興味がなく、なんなら一人でいる方が好きだったらする。
そんな輝生には、好きな人がいるはずもなく、輝生を好きになる人もいなかった。
運動神経は良く、成績もそこそこ優秀でありながらも自分にも、人にも興味がない。
いわゆる陰キャなのである。
二学期最後のホームルームが終わり、いつものように帰ろうと鞄を持とうした瞬間、
「安綱ー暇ならその資料、封筒に入れてくれないか?
学級委員が休みなんだ。頼む。」
と先生からの頼み事が入った。
輝生には友達はいるが、一緒に帰る友達はいない。家が逆方向なのだ。
その分早く家に帰るので、いつも親が帰ってくるまで暇になる。
「わかりました。」
なので輝生は、嫌な顔一つせず作業を開始した。
中学校は、部活動がなければ、早い時間に帰宅することができる。
この時期になるとほとんどの三年生は部活動を引退するので作業が終わる頃には、三年生は輝生一人になっていた。
輝生には体力の自信があるので片道二十五分以上かかる家に帰る道のりを走ると十五分以内に縮めることができる。
「雪、まだ降ってる…」
昨日の朝から降っている雪は、道が見えなくなるほど積もっていた。そんなこと関係なく輝生は走って家に帰った。
家に帰る途中、道の端で誰かが座っているのが分かった。
近づいてみると一人の少女がカチューシャ?らしき物をつけて震えながら座っていた。
そんなことは気にせず、歩きながら少女の横を通り過ぎようとした。
その瞬間、少女が輝生の手を掴んだ。
輝生は驚きながらも少女を見ると、
「…どうしたんですか?」
他意はない、だが面倒ごとには巻き込まれたくないのでめんどくさそうに声をかけた。
少女は驚いていたが多分、輝生の方が驚いたであろう。
少女が頭につけていたのはカチューシャではなく、紛れもない角だったのだ。
驚きながらも返信を待つが、中々、答えが帰って来ない。
(…日本語が分からないのかな?)
そんな事を考えつつ、少女の姿を確認してみる。白髪のストレートヘアーで少し汚れている。
柑子色の瞳が乳白色の肌の綺麗さを引き立てている。
一番重要だと言える角は、月白色の傷一つない綺麗な仕上がりとなっている。
それと、
(めちゃくちゃ可愛い…)
人には興味のない輝生が、可愛いと思えるほどの可愛さを持っていた。
背丈は輝生より少し低くいが全身は、雪の冷たさで真っ赤になっていた。
得体の知れない生物かもしれない。人を襲うかもしれない。などいろんな事を考えた輝生だが、ひとまず家に連れ帰ってやった。