表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの最愛  作者: 小椿 すず
【第1部】
1/1

1.魔法使いの侍女になります。



ーーセリオン王国北部・リシェス。

藤の花か咲く小径を抜けた先にある屋敷を見上げたエヴァは、

緊張で跳ねる心臓を服の上からおさえ、ふう、と深呼吸をした。

風で乱れた、肩の少し下で揺れる波打つ赤い髪をさっと整え、

身だしなみを確認し、「よし」とひとり頷く。

右手には旅行カバン。左手に持つ紹介状をしっかりと握り、

門の前の銀光を放つ魔法陣に足を踏み入れると、しゃらん、と涼やかな音が鳴り、目の前の景色が掻き消えたーー


と思えば、次の瞬間には、壮麗な調度品が花を添える部屋の中にいた。

いや、魔法陣で転移したのだ。

ぱちくり、と目を丸くしたまま呆然としているエヴァの前には、

ソファーに腰を落ち着け、優雅に茶器を傾ける老婦人が。

ほとんど反射的に雇用主だと悟り、頭を下げる。


「ご機嫌よう、フレデリカ=クローラ様。お招きいただき、有難うございます。」


カチャ、と茶器をおろした音が響く。


「ごめんなさいね。大人気ない魔法で驚かせてしまったかしら。」


顔をあげて頂戴、と許しを得て、エヴァはそろりと背を正した。


(わ、ぁ…なんてお美しい…)


五十歳半ばだと聞いているが、そうは見えないほどの瑞々しい美しさ。丁寧に結い上げられた白銀色の髪。藍色と紫色が混じった眸。貴婦人が纏うに相応しい紺色のドレス。


魔法使いの頂点にして、代々護国卿の名を授かる一門クローラ家の長。

フレデリカ=クローラ。


その人が今、目の前で微笑んでいる。


「初めまして、エヴァンジェリン=ノールと申します。」


「えぇ。話は聞いているわ。当家で働きたい、と。

わたくしはあまり邸のことには関知していなくて、家令に任せているの。好きになさってちょうだいね。…イース。」


少し離れて控えていた家令の紳士が、にこやかに礼をした。


「邸の管理を任されております、家令のイース=ロウと申します。

お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」


「有難うございます。案内、どうぞ宜しくお願い致します。」


元貴族令嬢としての、見栄を含んだ笑顔。

もしかしたら引き攣っているかもしれないーーだが、それでもこれからお世話になる身だ。一緒に働く方々とは、仲良くしたい。

老家令は穏やかな笑みを浮かべると、エヴァの持つ旅行カバンを引き取って歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ