初恋 ~あさきゆめみし~
一度間違えて削除した作品です。
関連作品があるため、他サイトへ転載できないので再投稿しました。
気がつけば、目で追いかけていた。
教室の中、廊下の角、階段の陰、そして校庭。
放課後のグラウンド、トラックを楽し気に走るあんた。
遠くから、気づかれないように見つめてた。
雨の日は、部屋にひとり、あんたを思う。
あんたの顔を思い出す。
声に出さないで、あんたの名前を口にする。
とくん、と小さく胸が鳴る。
ただのクラスメイト、からかうだけの相手。
それだけだったはずなのに、なんでだろ――。
心の水面がゆれる。
あんたを思うと、さざ波が立つ。
こんな気持ちは、初めてで、
ひとり抱えて、ふるえてた。
伝えようか、止めようか、
ゆれるゆれる、ふりこのように。
夢の中なら、とても素直に言えるのに。
意地っ張りだねあたし。
あの人のことを話すあんたの顔、
すごく嬉しげで楽しげなあんたの顔、
あたしはそれが、嫌だった。
あんたにそんな顔をさせる、
あの人が、羨ましくて、憎らしい。
「惚れてんでしょ」って、からかえば、
決まって「違うよ」と返すあんた。
うそ。
だったらなんで、そんな顔をすんの?
――あの人に、彼氏がいる。
それだけで、なんで、そんなに辛そうな顔、してんのよ。
……素直になれないのは、あたしもおなじ。
あんたに気持ち、伝えられない。
怖いって思ってるのも、あんたとおんなじ。
"これまで" で、なくなるの、恐れてる。
強くは言えない。
あんたはあたしで、あたしはあんた。
素直になれない意地っ張り同士。
口にできないまま時が過ぎ、
あんたのあの人は、ここから去って行く。
いいの?
もう、言えるとき、ないかもしれないよ?
あんた、それでいいの?
自分の気持ち、知らないふりして、
笑ってサヨナラなんて、カッコつけすぎ。
そんなの、全然らしくない。
「これでよかったんだ」って?
……じゃああんた、なんで泣いてんの?
あの人からはなれて、ひとり隠れて、
そんな顔して、なんで泣いてんのよ?
今更、なんて関係ない。
相手がいたって、関係ない。
好きは、好きでしょうが!
――ほっとけない。
あんたのこと、ほっとける訳、ないじゃん。
あたし、あんたのこと、好きだから。
好きなやつのこと、このままにしとけない。
……いいよ。
今はまだ、答え、くれなくていい。
失恋した隙に、つけこみたくないから、ね。
断られたって、かまやしない。
いい? 覚悟しときな、御厨。
あたしのこと、絶対好きにさせてみせるから。
興味の沸いた方は拙作『僕の素敵な生徒会長さん』をお読みください(宣伝宣伝)