37 ムーンショット計画画へのトリックは、メタバース
グラフェンマンこと、緑川龍鳳に
メールが入っていた。
ブレンダ:すっごい面白いVRゲームを
作ったので遊びにきて。
また、窓を開けておくわ。
またか。
いまだに、恋人きどりのブレンダからだった。
この前のようなしょうもない罠だったらまだいいが、
情報も欲しいし、行ってみるか。
グラフェンマンは、ブレンダの家へと向かう。
前回のようにブレンダの部屋へ窓から
忍び込む。
「遊びにきたよ、ブレンダ!」
「リュウホウ! また来てくれてありがとう!」
ブレンダが抱きついてくる。
ブレンダを無理やり引き離す。
「それより、面白いVRゲームが、できたって?
どんなゲーム?」
「色んなアバターで、色んな体感ゲームができて、
現実でできる事なら何でもできるゲームよ!」
「へー、そりゃすごい! さっそくやってみるか」
頭には、ヘッドマウントディスプレイを装着し、
身体には、特殊なベルト状の服を装着した。
「ここに横になって!」
カプセル状のベッドらしきものに案内され、
そこに寝るようにうながされる。
言われるままに横になる。
「それじゃ、ゲームスタート!
2度とやめられなくくらい面白いゲームへ
行ってらっしゃい!」
「ああ」
何やら、やめられなくなるとか
どこかで聞いた物騒なゲームを思い出す。
しかし、反論もできないまま、
目をつむるとVRゲームの世界へと
感覚を奪われた。
ゲームの中では、色んなアバターを
選ぶ事ができた。
獣人でウサギ耳だったり、犬、猫、猿、
身体の大きさや性別、ロボットの身体、
髪型、肌、目の色などなど、
色んな好みの自分になれるようだ。
遊ぶ場所も古代ジャングルや、日本風、
西洋風、中国風、南極、ヒマラヤ、月面、色々だ。
スキルなども魔法や超能力など現実では
使えない色々な事ができた。
モンスターなどを倒して、経験値を上げ
レベルアップしていくRPGだった。
そろそろ飽きてきたので、ログアウトを
しようとボタンを探す。
「なかったらどうしよう……」
一瞬、恐れたが、そんな心配はいらなかった。
ちゃんとログアウトボタンがあって、
ログアウトできた。
元のカプセル状のベッドで目を覚ます。
「どうだった?」
ブレンダが聞いてくる。
「ああ、面白かったよ!
一瞬、ログアウトできないんじゃないかと
焦ったけどね」
「アハハ! そんな事あるわけないじゃない!」
「だよねー、あはは」
部屋を出ようとすると、ビール・ゲッツが
入ってきて握手を求めてきた。
「やあ、娘と仲良くやってくれ、これからも、よろしく」
突然の握手に気押され、握手を返してしまう。
あれ、なんかおかしいぞ……。
その日は、そのまま自分の家へと帰る。
テレビを見ても平和な日常に戻っている。
マスクを着けている人はいない。
コロナのニュースなども全くない。
それどころか政治や経済の話も全くない。
これは、おかしい。
この世界は元の世界じゃない。
いつの間にこんな世界に?
思い当たるとすれば、
ブレンダの家でVRゲームを遊んだ後、
確かにログアウトしたと思ったんだけど、
実は、まだログアウトしてなくて
ずっとあのVRゲームを続けているとしたら?
どうやったら、この世界から抜け出せる?
現実ではありえない、普通の人間ではできない事……。
それは、これだ。
「へーんーしんっ!」
叫んで変身した事もなかったが、
力を入れて魂の叫びで変身しないと
できそうもなかったから、
思わず強く言ってしまう。
カプセルのベッドに寝たままの自分が、
グラフェン服やマントやマスクをまとう事で
ヘッドマウントディスプレイや装置のベルトの
情報を遮断して、元の現実で起きる事ができた。
「てへっ! 失敗したかー」
ブレンダが近くで見事なてテヘペロを見せていた。
この女は、悪気もなく人を罠にはめやがって……。
「貴方のためを思ってやったのよ。
気付かなければ、一生平和に暮らせたのに……」
「そんなまやかしの現実はいらない!
ゲームとしては面白かったよ。
でも罠にはめるのはやめてくれ」
グラフェンマンは、怒ってブレンダの家を去って行った。




