表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦後を君と  作者: 来栖百合堊
2/3

道程

第二話です。列車の中でのお話です。人名をロシアベースにしたおかげで、非常に長く覚えにくいものになり申した。よく覚えたな、俺。すごい。

 連邦と共和国はパルストラフ半島の北側に位置する。南には海峡を挟んで存在する同君連合、ヴィラ・アルマリネ二重王国がある。二重王国は独立戦争の際、共和国へ秘密裏に物資の支援を行っていた。二年後、休戦協定が結ばれたのち、すぐに共和国と国交を樹立し、平和友好条約を結んだ。その際に『未来の関係悪化、紛争の原因となる要素をなくすため』人口の中でヴィラ人の割合が高い共和国南部の地域、ユーク県を二重王国に割譲した。それに加え、中立宣言を行い、表立って同盟を結ぶことができなくなった代わりか、共和国の復興物資の多くを二重王国から輸入している。


 二重王国のパルストラフ半島にある旧ヴィラ大公国領をヴィラ地方と呼び、ヴィラ地方から海峡を挟んだ向かいに旧アルマリネ王国領、アルマリネ地方がある。二人が向かうのは二重王国第二の都市でヴィラ地方最大の都市、海を挟んで目の前にアルマリネ地方が見えるイリツィニである。北西のスヴェルナ湾と南東のモーリェ海を繋ぐサー・レオン海峡を構成する地域の一部で、千年以上の昔から陸路と海路の中継地として栄えてきた。


 アヴローラとリーリヤを乗せた列車は共和国を抜け、二重王国領となったユーク県、のユーク駅で止まった。この二国は線路の幅が異なるため、駅でそれぞれに対応した列車に乗り換える必要がある。その役を主に担っているのがユーク駅である。そこで入国審査も同時に行ってしまうのが一般的だった。

「かなり南に進んだからでしょうか、三月でもかなり暖かいですね」

「そうだな。だが、元連邦国境警備隊の知り合いいわくこの時期は昼は暑くても夜はかなり冷え込むらしいから注意しないとな」

「イリツィニは元々はヴィラ大公国の首都だったんでしたっけ?」

「そうだ、連邦の専制君主からの解放を謳う南進に危機感を覚えた二つの国が連合国家となった。今となっては連邦が弱体化したため、連合を解除するべきだとする声もあるがな」

「詳しいんですね」

「士官候補生時代にな」


 そんなことを話しているうちに入国許可、滞在許可が降り、イリツィニ行きの電車に案内される。乗り込み、指定しておいた席にすわる。

「イリツィニってどんな場所なんですか。水の都なんて言われてますけど」

「スヴェルナ湾に入るあらゆる船舶が停泊するため、こっちの想像を大きく越えるほどの規模の港がある、らしい。私も見たことがないからわからないが」

「見てからのお楽しみってことでしょうかね」


 突然叫び声のような大きな声が割り込んでくる。

「あーーーっ!!リーリヤじゃん!!超久しぶりなんだけど!」

「え"っ…あんたなんでここに!?」

「四月から二重王国の大使館に異動になったからさぁ!今日下見しに来たのよぉ!」

「…やっぱりあんたが外務省勤務なの未だに信じられないわ」

アヴローラは完全に置いてきぼりにされていた。

(同い年の子にはやっぱりタメ口で『あんた』なんて言葉使うんだ)

なんて思っていたが、ふと正気に返り、

「えーと、ねぇ、リリューシャ、そちらは?」

「あ、えーっと、こちら…」

「はい!アタシはラウラ・コワレフスカヤっす!共和国外務省勤務!四月から二重王国のレブリアーノにある共和国大使館勤務になるっす!あなたは?」

「…私はアヴローラ・ドロフィエヴィチ・ジュラーヴリク。共和国国防陸軍中佐。つい最近昇進して、ヴィンストン駐屯地の教導連隊の副連隊長」

「中佐!偉い人ですねぇ」

感嘆したようにラウラはアヴローラを色々な角度から見回す。

ラウラに人の近くを尻尾を振りながらくるくる回る仔犬のような印象を受ける。そしてその印象はあまり間違っていない。

 アヴローラがふと思ったある疑問を尋ねる。

「レブリアーノって海峡の向こう側だよな?なんでイリツィニ行きの列車に乗っているんだ?」

「えーっとですね、イリツィニと対岸のノーブルに鉄道も通れる鉄橋が二本架かっているのはご存知で?」

「いや、初耳だ」

「マジすか!イリツィニにいればパッと思い立った二重王国の観光名所に四、五時間後には到着してますよ!それくらいイリツィニは陸路も海路も整ってます」

「へぇ、そうなんだ」

「それどころかイリツィニからでる一日一本の定期船でゼーシュッツェン公国まで行けますよ。」

「二重王国のどこへいくにもまずはイリツィニにいくと。…よく調べてるのね、ラルーニャ」

「そうだよぉ、リーリヤ、あんたみたいに大荷物で長期間旅行に行くのに全然下調べしないんじゃあ外務省職員なんて出来ないわよ」

「…確かに」

リーリヤの頬をゆびでくりくりし、ニコニコしながらからかう。リーリヤは嫌がるそぶりを見せない。


 アヴローラは羨ましいなぁ、嫉妬しちゃうなぁと思いながらその光景を見ていたが、潮の香りに気づき窓の外を見る。

「うおぉ、海だ…!」

「広くって蒼いですねぇ」

「お二人とも海を見たことなかったんすか?」

「小さいことに一度きり、ほとんど覚えていないけどな」

「私ははじめてです。内陸の農村の生まれだったので」

「その感動はもう二度と体験できませんから、大切にした方がいいっすよ。ましてや好きな人と一緒になんて」

「……あれ?私とアヴォーチカが交際しているって言ったっけ?」

「アタシとリーリヤが話してるときのおねーさんの嫉妬した顔見れば一目瞭然ですよぉ。あんなにギラついた視線送ってきてたのに」

ラウラの表情を読む力は人並み外れているらしい。アヴローラ自身にもそんな視線を送った自覚はなかった。そうでもなければ大使館職員なんて駆け引きが常に行われているような職業にはなれないのかもしれない。


 間もなくイリツィニに到着するというアナウンスが聞こえる。

「あっと、駅に着いたらお別れっすね!いつまでここに滞在する予定で?」

「丸々一ヶ月」

「一ヶ月!二重王国の全部の観光名所まわれますよ!…うおっと!」

ブレーキがかかったことによる慣性の法則でラウラがよろめく。彼女はリーリヤに話しかけてからずっと立ちっぱなしだった。

「そんじゃ!旅行楽しんで!外でイチャイチャして周りを嫉妬させないようにね!帰りにまたイリツィニよるから!そんときまたはなしましょー!」

「またね、ラルーニャ」


「騒がしい娘だったな…」

「まぁ、寂しいときにはラルーニャは良い話し相手です。普段はうっとうしいですけど」

「…後で私にも頬を触らせてくれ」

「あらぁ?嫉妬しちゃったんですかぁ?かわいらしいですねぇ」

ニヤニヤしながら問いかけてくる。アヴローラは顔を真っ赤にして黙っている。

「良いですよ、いくらでも。まずはホテルにいきましょう」

「そうしようか」

誤魔化すようにそう答えると二人は予約しておいたホテルへの道を地図で探し出す。

「その前にごはんを食べましょう。ずっと列車に揺られ続けておなかが空きました」

「海の見えるレストランでもあれば良いが」

「なければホテルでいいでしょう。で、食事が終わったらおまちかねのほっぺツンツンタイムにでもしましょうか」

 軽口を交わしながら歩き始める。地図を回さないのは日頃の訓練の賜物か、いくべき場所もそのための時間もたっぷりとある。戦争で止まっていた時間を取り戻さんばかりに二人の戦後は歩みを進める。

いかがだったでしょうか。地名が多すぎてややこしいのは許してください。いつか地図に地名を書いた画像を出します。画像の添付の仕方わからないけど。少しずつ投稿する文章の文字数を増やしていきたい所存です。一回につき一万文字は越えたい。応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ