日常の場合 2
「皆さんよく集まってくださいました。
これより今後の活動の方針についての説明、及び依頼の説明をします」
第一会議室には、ふっくらとした体型の男性が約20名程の人間を一段高い場所から統括している。
「まず重要事項としまして、今後は依頼人以外の人間との接触を禁じます」
その事について、集められた人間達はざわついた。
ざわつくのも無理はない。
「今まで依頼人の対象はぼんやりとした情報で教えてきましたが、自力で対象を見つけて欲しいのです。
依頼人は対象の事について、ぼんやりとしか覚えていないケースが多いです。
そのため、今までは人間と接触をし、対象を絞り込んでいたようですが…」
そこでふっくらとした体型の男性は周囲を一瞥した。
「そのままでは、諸君等の能力開花が出来ないとの判断により、このような手段を行うこととします」
「おい嶺岡、能力開花が出来ないってどういうことだよ。
こんなの自然に任せるしかない、とかいうそんな判断じゃなかったか?」
男はこっそり隣にいた嶺岡に尋ねる。
嶺岡はやれやれといった感じで、男へ説明する。
「大体君は…人の話を聞いていましたか?
能力開花には欠かせない、重要なものがあるんですよ」
「重要なもの?」
男はそんなものは知らない、といったような感じで嶺岡の語尾を復唱する」
「我々には能力があるのを知っていますよね?」
「死者と生者の見分け、それに死者の声を聞こえる事、だろ?」
「それだけじゃないんですよ。
そこから各々に適した能力が開花していくんです。
能力が開花していく時期や内容、それらについては全く分かりません。
実際になってみないとわからないんですよ」
「んじゃあ、嶺岡は何の能力があるわけ?」
「私の能力はターゲットの痕跡を見つけられること、ですよ」
そこで嶺岡はフッと不敵に笑った。
この世界では開花された能力によって階級が決まる。
その能力がターゲットを見つけやすいものであればあるほど、階級は上になっていく。
ただし一発でターゲットが分かる、といった便利で優れた能力を有している者は今現在おらず、その能力を欲しい上層部が今回、このような強硬手段を行ったのは誰しもが理解した。
理解すると同時に、怯える人も少なくない。
今いる立場は、死者の声が聞こえる、という適正を持った者達。
ただし立場上一番下っ端で、かつ能力が開花しなかった場合開花するまで拷問にも似た体罰が待っている、という噂が広まっているからだ。
そして得られた能力が役に立たない場合、そして誰かと似た能力だった場合、対して立場が上がる訳でもなく、現状維持になってしまう。
階級が上がれば上がるほど、自分がどうしてこのような能力を得たのか、誰がこの世界を統率しているのか。
そして生まれ変わる前の自分の過去を見る権利を得られる。
そのようなシステムが組まれており、必然的に階級を昇りたい、と思う人は多い。
特に生前の記憶が抜け落ちている者が多い中、その情報を得られる立場に立てるというのは、転生する可能性にも触れる可能性が高まる。
転生するには必ずしも生前の記憶がなければならないのがこの世界の理。
罪を犯してしまった、なぜ犯してしまったのかを償い、そしてまた現世で生きたいと強く願い、与えられた任務をこなしていけば転生が可能、というのが噂で知れる限りの転生する鍵。
どれもこれも噂でしかないのは、それだけ情報が漏れないように上層部が気を張っているからであり、それは嶺岡も同様である。
自殺した人間が、また現世で生きたいと願う事があるかどうかは、自分の過去を見て、現世に絶望しなければならない。
それもまた、屈強な精神が必要であり、いじめであったり虐待、DV、性的行為によって自殺してしまった者は転生を強く拒む可能性が高い。
そのような場合は転生することなく、無に還る事が出来、それもまた救済の一つとして考えられている。
全てから逃げる為の、自分が選んだ道が正解だということを証明するために。