愛し子
私には、とてもとても愛しい子がいる。
「おいで、おいで私の可愛い子。また、おいたをしたのね。
仕方のない子」
その子は今、私に嫌われないかと、怒られないかとびくびくしてる。そんなところもすごく可愛い。
「大丈夫。怒ってないわ。だから今すぐ手をそれから離しなさい。あなたが汚れるわ」
私は言い聞かせるように、ゆっくりと話す。
「・・・・ほんとか?」
その子は伏せていた瞳をそっと私に向ける。
私はそっと頷く。
「私があなたを怒るわけないでしょ。私の可愛い子」
私がそう言うと、その子は手にしていたものをそのまま手を離し私の方へ歩いてくる。始めはゆっくりと、そして走るように。
私の前までくると立ち止まり私を見下ろす。
「触れてもいいか?」
不安そうな目で私を見る。本当に可愛い子。
「私があなたを拒絶するはずがないでしょ?」
その子はそっと私の腰に両手をまわし嬉しそうに微笑んだ。
そして、私の額に自分の額を合わせ私の瞳を見て、私にだけ聞こえるように言う。
「愛してる。お前だけだ。」
私も、その子の瞳を見てこう言う。
「知ってる。私もだよ。」