ここは異世界ですか?
「ええと…僕はこことは違う別の世界から来たんです」
「は、はあ…」
どう説明したらいいのか…
「別の世界で死んで、ここに来たんです」
「…」
ああ…無言の怯えが怖い…まずは名乗ったほうがいいかな。でも今は女の姿だし、適当な名前でいくしか…
「名前はミスト・ランドです」
霧島の直訳だけど稀有な名前でありませんように…
「ミストさんですか…わたしの名前はレイズです」
「どうも…」
まだ警戒心は解かれてないみたいだ、早くもピンチだよ…
「キュー!キュー!」
「ど、どうしたのプリム!」
プリムと呼ばれる猫のような小動物が足元に寄り添ってきた。
「キュー!」
「へえ…そうなの」
なんか対話してるみたいだけど能力なのかな
「あなたの言ってることは本当みたい。信じます。」
「こんな突拍子もないこと信じるんですか?」
「プリムはあなたからは本心を感じると言ってる」
「キュー!キュー!」
「そうなの…」
え?この小動物に心読まれてたの?恐ろしい世界。
どうあれ信じてもらえてよかった。女子に嫌われるとメンタル折れそうだ。
「最初の質問に戻るんですが、ここはどういったところでしょうか?」
「ここはヒエルの森です。ヒエルというのは国の名です。昔、この地域一帯を制圧した将軍がいまして、その方の名前から取ったんです。この森を抜けたらすぐ近くにモルダンという街がありますよ。」
「街…」
将軍様の名前はさておき、街があることに安心した…野たれ死ぬことはなさそうだ。でも貨幣とかないよな…
「その街にギルドや、冒険者という存在はありますか?」
「お詳しいですね。ギルドは王家が手配する依頼を管轄するところで、冒険者はそれを生業とする職業です。あなたのいた世にもあったのですか?」
「まあ擬似的な遊びだったけどね…」
モンスターと呼ばれる怪物を倒したり、運搬作業もあったっけ。
ギルドや冒険者の話は神様から聞いてたけど、貨幣的なものはありそうだ。
「レイズ…さんも冒険者だったりします?」
「私はそんな危なっかしいことはしませんよ。酒屋の一人娘です。それなりに稼いでますよ」
そういわれるとそう見える。純心無垢な笑顔、華奢な体、綺麗な銀髪。この娘が一生懸命働いてる姿を想像すると、なるほど行きたくなる。
「ミストさんは行く場所とか当てはないんですか?」
「恥ずかしながらほとんど情報なしで来てしまって…」
「じゃあ私のところに来る?女の子が一人で森にいるのは危険だよ」
「あ、ありがとう、お言葉に甘えるよ」
…姿戻るタイミング完全に失ったな…
「そうと決まれば早く行きましょ。プリムが怖がらない人なら大丈夫だし」
プリムは僕の足元で懐いたように頭をこすり付けてくる。どうやら悪者ではないと分かってくれたらしい。
「さ、いきましょう。私はあなたを歓迎するよ」
初対面の僕をここまで信用する彼女のおおらかさは良くも悪くもなりそうだな。
だけど今は彼女の言葉に甘えるとしよう。