新世界にて
早速スキルを使ってみよう、まずは変身だな。身近な人…紫藤先生を思い浮かべて…
「変身!」
体中が白い輝きを放ち、視線が低くなったと同時に体が少し軽くなった感覚がした。姿かたちは変化したのだろうか。鏡がないから全身を確認できないけど、まぁいいか、今はこの世界の事情が知りたい。人がいるところを目指そう。
歩き出そうとした途端、足がもつれ転んだ。本来の自分とは違う感覚。慣れるまで時間がかかりそうだ。
30分ほど歩いたがステータスのせいかスキルのせいか、あまり息切れはしない。元の世界では10分歩くだけで疲れてたんだけどな…
などと考えながら散策していると、木を分けた先に池を見つけた。池の水は澄んでいてまるで天然水のようだ。
水面を窺い、映る美少女を見る…ん?美少女?なぜ美少女?
「ええええーーーー!?」
水面には黒髪紫眼の少女がいた。今までみたことがないほど綺麗な顔立ちだ。そして声までもが女性っぽい。
まさかと思いステータス画面を開くと、性別が女性になっていた。もしかしてさっきの変身でこの姿に…となると戻るには一時間必要か…
でも紫藤先生を想像したけど先生そのままじゃないんだ…幼い先生みたいだ。ベースとなるものにそのままなるかと思ったけどそうでもないみたい。
池の水を手ですくい、恐る恐る飲んでみる。大丈夫そうだな。
ピコーン
と軽快な音がした。と同時に目の前に説明画面が現れる。
『ヒエルの森の池の水。池の水は人害はない』
…?神様から物質理解のスキルか何かでも授かったかな。それともこの世界における一般的なスキルなのか…
どちらにせよこの池は安全だな。そしてこの「ヒエルの森」というのはこの森の名前かな。名前のある森ということは近くに町はあるのかな。
ザザザッ
近くで草のこすれる音がした。身体能力が強化されたおかげである程度の距離ならば音の判別ができる。
「そこに誰かいるんですか?」
動物である可能性を考えず、つい人がいることを前提とした話し方になってしまった。
草を分けて出てきたのは小さな猫のような生き物。かわいい。
「プリムまって!急にどうしたの!」
その後ろから軽装をした少女が現れた。銀色のきれいな髪をしている。
「・・・」「・・・」
数秒、お互い無言で見つめあう。
「あの・・・」
「は。はい!なんでしょうか!?」
「ここはどこでしょうか?」
「・・・?」
そりゃそんな不思議そうな顔になるよね。森の池に自分のいる場所が分からない少女がいたら。
さて、異世界で初めて会う人…状況をどう説明すればいいのか…