記憶
ギルドを出た頃はもう夕方だった。来た時はまだ明るかったけど、4時ぐらいだったのかな。
酒屋から来た道を戻る途中、いろいろな商店を見かけた。雑貨屋・青果店・アクセサリーショップなどありとあらゆる店が立ち並んでいる。昔、本で読んだ外国の市場みたいだ。
酒屋に戻ると昼のときと一変、冒険者の集う楽園と化していた。
「ビール二丁くれ!」
「ビール二丁はいりました!」
「こっちは肉くれ!肉!」
「少々お待ちを!」
客と店員の声が行き渡る。完全に居酒屋のノリだ。
カウンターの近くではレイズさんがせっせとお酒を運んでいる。
「レイズさん。盛況ですね」
「ああミストさん。おかえりなさい。今日は遠方の戦に出張していた冒険者達が帰ってきたので多いんですよ」
「そうなんですか」
「寝室は後で案内しますね。今手が離せなくて」
「じゃあ手伝いますよ。泊めてもらうお礼として」
「助かります!では受付をお願いします」
「お安い御用です」
入院してた時は院内でいろんな人と話したから大丈夫だ。
「またくるよ。ごちそうさん」
「ありがとうございました」
帰り客の応対をすること一時間ほど。店内はお開きムードだ。もう夜も深い
「ありがとうございますミストさん。おかげでお客さんの対応早く済みました」
「いえいえ。泊めていただくからには精一杯お手伝いますよ」
「ふふ。頼りにしてます」
「こちらがミストさんの部屋です。殺風景な部屋ですが自由に使ってください」
「ありがとうございます」
案内されたのは言うとおりほとんど何もない部屋。誰かが住んだような感じもない。
「ほんとに泊めてもらっていいんですか?僕はここの世界の人じゃないし、何か特別なことが出来る訳でもないのに…」
「…幼い頃一緒に暮らしていた兄に似ていて、なんだがほっとけなくて…」
「そのお兄さんは今は…」
「ヒエルの森に遊びに行ったきり帰ってこなかったんです」
「そうだったんですか」
初めて目を見たときはまったく気が付かなかった。悟られないようにしてたのだろうか。(それとも僕が鈍感なだけか)
兄の面影を重ねて、親しく接していたのか。
妹がいるが、レイズさんの兄の代わりにはなれない。レイズさんの兄はただ一人なのだから。
「レイズさんに助けてもらった恩、この身をもって返します」
「ありがとうございます。兄に会えたら紹介したいです。こんなに優しい人に出会えたのだと」
「会えますよきっと!僕も手伝います!」
「そう言っていただけると嬉しいです。もう遅いので寝ましょう。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
そういってレイズさんは部屋を出た。
この世界はまだ知らないことが多い。生きるためには学ぶことが大事だ。
気を張り詰めていたせいか、横になるとすぐに眠りについた。




