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ただいま準備期間中




 驚かれつつ大筋は賛同してくれたお兄様とリアに後押しされて私は思いついた考えを骨組みにして計画を練る事にした。


 そうなると今度考えなければいけないのは計画の要である魔道具の錬成だった。

 ざっと資料を見てみたけど、私が創ろうとしているモノの類似品は存在しなかった。

 というよりも私が思った通り、この世界では「星」に対する特別な認識が存在していなかった。

 『北極星』のように真北に位置し、動かない星はあった。

 けど『星座』や星の逸話などは無く、星とは占い師が吉兆を占う時に使う事がある程度の認識だった。

 流れ星や日食、月食などは存在するけど、それが定期的に起こる現象であると認識するまでは全てが凶事の前触れだと思われたなんて話もあったのだから、ちょとしたジェネレーションギャップに襲われる所だった。

 

 多分この世界には地球で言う宇宙空間というモノが認識されていない。

 というよりも存在しているのかも私には分からない。

 多分日食とか月食みたいな現象があるから存在しているとは思うんだけどね。


 この世界はもしかしたら地球の何億光年離れた惑星である可能性も無いでもないけど、それを確かめる術は無いし、文明レベルで言えば、もしかしたら天動説がまかり通っている可能性すらある。

 ……そもそもこの世界が球体の惑星じゃない可能性すらある。

 とまぁここら辺は口にしただけで色々物議を醸しだすから口にする気は一切ないけど、この世界において星は見て綺麗で無数の輝きで夜空を飾っている、程度の認識しかされていない。

 

 うん、そんなんだから流れ星なんて流れたら不吉の兆しなんて言われたんだろうね。


 占い師に関しても基本的には魔力を媒体に予知能力的なスキルや魔法を発動したり、千里眼的なスキルで失せモノを探すとかそういった職業である。

 地球と比べてしっかりとした職として認定されてる反面、星を見て吉兆を占ったりとかは殆どしていない。

 『陰陽師』が使う『六壬式盤』みたいなモノを存在して無いんだろうなぁ、きっと。


 地球との占い師に対する認識の違いにはかなり驚かされた。

 まぁさ、今更なんだけどね?

 もう“理”からして違うもんね。


 ともかく、星はあくまで夜、空を見上げると輝いている存在という認識。

 上級レベルまで調べてもなかったし、魔法を調べたら今度はメテオブレイカー的な隕石を降らせるような大規模魔法が出てきちゃったし。

 最終戦争でもさせる気ですか! と内心突っ込んだ私は悪くないと思う。


 というよりも錬金術のレシピとか研究の書物を読んでて思ったんだけど、錬金術に限らず道具は基本的に娯楽用じゃない。

 どれもこれも生活に密着してたり、戦闘に関する補佐するためだったり、何かに必要となったから作られるモノばかりだった。

 時々ある生活に密着していなかったモノは失敗作から生まれた偶然の産物みたいだし。

 私が今回作るみたいに完全娯楽用って発想から無いみたいだった。


 そりゃ私だって生命の維持が第一なのは分かる。

 命を守るため、生活を守るために錬金術を生活密着型にしたり、冒険者の補佐をするために必要なモノを創り出す事を優先する気持ちも分かってる。

 『ゲーム』で私が錬成していたモノだってそう言ったモノばかりだったし。

 けど、私はいま現実を生きている。

 生きた人間なんだから気持ちが上昇すれば効率も上がるし、何もしたくないなぁと思う事だってある。

 人なんて多かれ少なかれ浮き沈みする生き物なんじゃないかと思う。

 だから人に娯楽は全く必要ないのか? って思うんだよね。

 そりゃ生きるのも必死な人達に娯楽を得る研究をしろなんて言わない。

 そんな事言ったら私ドコゾの悲劇の女王様になっちゃうから……パンがなければ? って感じでさ。

 生きるのに必死な人達に対しての生きる術を与える事は疎かにしちゃだめ。

 

 けど気持ちに余裕のある人達なら少しくらい娯楽を考えてもいいと思うんだよね。

 お兄様とか真面目過ぎて何処かでガクッと来る気がする。

 気晴らしに楽器を奏でたり、本を読んだりしているけど、貴族ってそこらへん必須だし、結局お勉強しているようにしか見えない。

 

 息抜きって絶対必要だと思うんだよね。

 

 恵まれている故の傲慢だって言われればそうなんだけどさ。


 今回私が創りたいモノは計画に必要だからって面が大きい。

 けど、完全娯楽用の錬成物って意味でも人の興味を引く事が出来るんじゃないかな?

 ……いやまぁ使いようによっては他の事に使えるのかもしれないけど、そこらへんは私は関与致しません。

 流石に軍事兵器に転用しようとするなら止めるけど、そこまでは出来ないと思う。


 ぐだぐだと考えつつ私はまず欲しい効果を紙に書き出す。


「部屋一帯を真っ暗にする効果と疑似的な星を発生させる効果」


 大まかにいえばこの二種類が必要なる。

 その上で真っ暗な部屋にするために光精霊を一時的に外に出す効果があれば最高。

 というよりも特定の精霊を遠ざける効果って作れないのかな?

 

「うーん。反対属性による吸収とか? というよりも私の闇属性のイメージって吸収とかなんだけど」


 悪役が良く使う属性だと言うイメージなのは私だけの秘密です。

 この世界では創造神の片割れだしね。

 迂闊な事は言えません。


「真っ暗闇を生み出すために他の精霊を取り込む効果とか? そんな事出来るのかな?」


 精霊って他の属性に変わったりしないのかな?

 純粋な力の塊って考えれば他の属性に染め上げる事も出来そうなもんなんだけど。


 私は【精霊眼】を発動して近くに飛んでいる光精霊に手を伸ばす。

 意図的に闇属性を指先に纏わせて光精霊に触れた。

 すると嬉しい事に光精霊が闇精霊に代わってくれた。


「嘘!?」


 思わずそんな事を言ってしまう程度には嬉しい誤算だ。

 けどこうやって染め上げられた精霊って大丈夫なのかな?

 微弱な意志を持っているから、急激な変化に対して不具合が起こるかもしれない。


「……だいじょうぶ、かな?」


 一応問題無く飛んではいる。

 んー、力を借りようにも、光も闇も下級魔法って少ないんだよね。

 取り敢えず、力を借りて体に循環させてみるかな。


「……問題無いなぁ」


 循環させた魔力を魔石に注入した後、もう一度闇に染めた精霊を見てみる。

 しいて言えば私の魔力を使って染め上げたせいか他と見分けがつくかも。

 変化と言えば変化だけど、多分、それって日がたてば周囲から魔力を受け入れて私の魔力は排出されるんじゃないかな?

 あれ? って事はこれって一時的なのかな?

 数日すれば元の属性に戻るって事かも?

 

「今回は一時的に変わればいいから良いと言えば良いんだけど」


 ――気になる。

 精霊の生態は分からない事だらけだし、スッゴイ気になる。

 そんな暇ないのに。


「ちょっと、だけ、ならいいよね?」


 誰ともなく了承をとるように呟くと精霊に手を伸ばした。


 ……傍から見て怪しい勧誘の人にしか見えなかったと思うけど、誰も見てないからセーフだよね!



 ちなみに、この好奇心の御蔭で今後に有益であろう事を幾つか知る事が出来た。


 まず、精霊の属性変化だけど、移行できる属性と出来ない属性があった。

 【光】と【闇】は相互干渉出来る。

 後【火】と【土】は【光】に変化可能で【水】と【風】は【闇】に変化可能だった。

 けど【光】や【闇】の精霊を他の四つの属性に変化させる事は出来なかった。

 もしかしたら精霊の中でも順位があって創造神である【光】と【闇】が上位で他四つが下位なのかもしれない。

 今の所推測でしかないけどね。


 後、一度変化した精霊はその後も同じ属性を維持していた。

 私の魔力が抜けて区別がつかなくなる可能性は高かったから隔離させた上での結論だから間違ってないと思う。

 実際自分の魔力が抜けた精霊は私には区別がつかなかった。

 けど隔離された場所から消えたわけじゃないし、増えた訳でもないから失敗はしていないはず。

 その隔離された中で精霊は同じ属性のままだった。

 だからきっと一度変化した属性は以降維持される。


 あ、あと濃淡というか強さは前と変わらなかった。

 これは【光】や【闇】以外の精霊を変化させたから分かったんだけどね。



 って事で精霊の生態の研究は大変満足する結果を私に齎した。

 ……ただ、うん、私って本当にこの悪癖直した方が良いと思うんだ。

 一つの事に集中すると他を疎かにする、ね、この悪癖は本当に直すべきだとまた思いました。

 ――今後何度思う事やら。

 出来れば相当不味い事を引き起こす前に治す努力をしたいです。


 ごめんなさい、リアとお兄様。

 

 ……何があったって?

 いやぁ研究に没頭し過ぎて注意されただけです。

 思い切り泣きそうな顔のリアとお兄様に、ね。


 私の痛い所をよくわかっていらっしゃいますね御二方とも。

 しかも本音だからこそ思い切り罪悪感を感じました。

 

 後でもう一度謝りに行きたいと思います。




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