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お兄様と『私』





 私は今日も今日とて【工房】で透明な魔石と向き合っていた。

 この前倒れたお陰というかその後の先生とのお話のせいと言うか、私の中でお兄様に対して道筋が更にしっかりした気がする。

 今ならちょっと臆病風に吹かれてもはね除ける事は出来そう。

 ただ問題は、そもそも課題を終わらせるための第一歩を踏み出していない事だった……大問題ですよね、これ。


 そろそろ目の前の透明な魔石が憎らしくなってきました。


「いい加減疲れてきたし初心に戻ってみるかなぁ」


 今度倒れたら本気でコルラレ先生から物理的な躾けが待っている気がするので当分大人しくしてようと思います。

 いや、何か目を惹くモノがあったらそっちに集中して一直線になる気がするんだけど、一応ね、一応。


 頭の中で誰にも通じない言い訳をしつつ目の前の透明な魔石を凝視する。


 今、現在此の魔石には【魔力】が一切宿っていない。

 【属性】を帯びていない【魔力】すら入って無い、いわばただの石の状態である。

 この状態ではただの石でしかないのだが、見れば見るほどガラスっぽい感じである。

 ただやっぱりこれは魔石だというだけあってガラスとは成分が違う。

 

 この世界にもガラスは普通に存在するし、私達は日常的にガラスと接する機会がある。

 ガラスの詳しい成分を私は知らない。

 けれど必要な事として魔石との違いは知っている。

 ガラスは【魔力】を蓄積するための【魔力キャパシティ】が存在しない。

 【魔力】を注いでも反射するだけなのである。

 魔石とそこら辺の石ころの違いは説明出来ないけど、ガラスと魔石の違いは【魔力】に対しての対応の違いで分かる。

 だから目の前のコレだってガラスじゃないのは分かるんだけど。


 何と無しに窓の方を見ると【属性水】につけ込んだ魔石がほんのり青くなっているのが見えた。

 それなりの日数をつけ込んでもあの状態である。

 とてもじゃないけどこの方法では何時が完成になるか分かったものじゃない。

 つまり此の透明な魔石を一瞬で望む【属性】に染め上げる事が必要という事になる。


 透明な魔石の【キャパシティ】が低いと言うわけじゃ無いと思う。

 実はこの透明な魔石、【属性】を帯びていなければ【魔力】を注げるのである。

 試しに【無属性】のただの【魔力】を注いでみたら何の問題も無く【魔力】を【注入】できた。

 その感覚からすると此の魔石は相当【キャパ】が広いという事も分かった。

 だから色が出るまでと際限無く【属性を帯びた魔力】を注いだ事もある。

 結果分かったのは、この魔石は反射か透過の性質を持っていると分かった訳だけど。

 

「ん? 力の塊である【魔力】は貯める事が出来るけど【属性】を帯びると透過する? ってなるって事?」


 つまりこの透明な魔石はこの状態で一個として完成していると考えればいいって事で、透明な魔石には【無属性】が、色がついている半透明な魔石にはその色の【属性】しか受け付けないって事で……。

 染まった色以外の【属性】は反射か透過する性質を持った魔石と考えれば辻褄は合う気がする。

 

「んん? けど、それじゃあ【属性水】に浸けた魔石に色が付いた事に説明が付かない」


 試しに実験の御蔭で薄く色がついている魔石に染まった色の【属性魔力】を注いでみた。

 すると【属性を帯びた魔力】でも少しだけ注ぐ事が出来た。

 けどやっぱり【無属性】の【魔力】程の【注入】は出来ない。

 ただ試しに他の【属性】でやってみると全く【注入】出来ないから、仮説は完全に間違いと言う訳ではないらしい。

 

 じゃあ【属性水】に浸け込んだ魔石に色が付く現象を解明すれば、今度こそお目当ての魔石を創り出せるかもしれない。


「【属性水】に溶け込んだ【魔力】が魔石に定着したから色がついたと思っていたけど、なら反射や透過の性質と矛盾してしまう」


 【属性水】の性質は特定の【魔力】を帯びた水ってだけだし。

 蒸留した全ての性質を抜いた水に【属性】を溶け込ませた水が【属性水】

 

「あーけど【属性同士】の中和の性質も持っているんだっけ」


 元々が全ての性質を除いた物だからか、どんなモノでも強い拒絶反応が起きないのが【属性水】の特徴だった。

 複数の【属性水】を【錬成】して【虹色属性水】が出来るぐらいだから、【属性水】の本質はどちらかと言えば「中和」なのかもしれない。

 

「けどなぁ。中和と性質の除去は別物だし」


 ……いや、中和と考えれば説明できるかも?

 【水の属性水】を使ったけど、元々蒸留した水は言うならば【無属性】の水なんだから【無属性】の性質を残していても可笑しくはない。

 だから【無属性】の魔石と【水の属性】を僅かながら中和した……と考えれば。


「【無属性】の【属性水】は作れないかもしれないと思っていたけど、よくよく考えればただ【魔力を帯びただけの水】が創り出せない訳じゃないはず」


 傍から見れば全く見かけの変わらない、だけど【無属性】の【魔力】を帯びた水を一個の【調合】の材料として【水の属性水】と【錬成】すれば【水と無属性の属性水】が出来るんじゃないかな?

 そうすれば二つの【属性】を中和する事が出来るし、結果として無色の魔石の性質が中和される。

 反射ないし透過の性質を中和出来るのならば【属性】の変更も可能かもしれない。


「……まず【二種の属性水】が可能かどうかから確かめないと。ああ、その前に【無属性】の【属性水】が存在するか調べてみて、無ければ試してみて……」


 目の前の霧が一気に晴れた気分だった。

 次から次に調べ試さないといけない事が思い浮かんでは消えていく。

 完全に忘れる前に何かに書き出さないと、重要な事を逃してしまいそうだ。

 

「けど、倒れないようにしないと……物理的に躾られるのも、リアの悲しい表情も見たくないしね」


 はやる気持ちをそんな言葉で押さえつけると、深く深呼吸し、私はまずやらなければいけない事を全て紙に書き記す事から始める事にするのだった。










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