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問題は残れど事態は収束……かな?




 実際の所、魔法? を使われた時点で自我は殆ど残っていた。

 意識が強制的にシャットダウンさせられたのは本当だし、暫く意識が無かったのも本当。

 けど、どうやらこのおかしな輩は私の心も縛る事が出来ると思っていたみたい。

 だって、意識を取り戻した私に開口一番「貴女様は神子であり高貴な方です。そしてこれから終生私と共に生きていくのですよ」と決定事項のように言ったし。

 それに対して抵抗されると言う事自体考えていない様子は異様としか言いようがない。

 後、仕切りに腕輪に触れているなぁとは思っていた。

 其の度に動けない私を見て何とも歪み切った笑みを浮かべ見ている事も当然気づいていた。

 何と言えば良いのかな?

 嬉しいけど、つまらないみたいな?

 相反する感情が一緒になったおかしな笑みは一言では言い表せないし、気持ち悪かった。

 体が動かずとも自我は残っていた私は虚ろな目を心掛けつつ、聴覚を研ぎ澄ませて情報を必死に集めた。

 絶対にお兄様は助けに来てくれるし、多分【主】を奪われたルビーンとザフィーアの暴走は止まらない。

 少なくとも三人は絶対に来てくれると分かっていた。

 

 まさか、殿下達が来るとは思わなかったけど。いや、本当にね!


 護衛の方々、もう少し止めましょう?

 殿下達を危険な場所に行かせるくらいなら私の救助を命ずるだけで十分だったと思うんだよね。

 これには最悪ルビーン達を自由にしてくれれば助かるだろうという楽観も含まれていた。

 裏社会で名が通っていたあの二人ならば手段を選ばなければ此処に辿りつくのは容易いと思っていたから。

 後、テルミーミアスさん達とルビーン達は遺恨があり過ぎて一緒に行動出来ないと思ってたし。

 それが、まさかのまさか。

 殿下方が護衛と一緒に突撃してくるとは。

 ……いや、ちょっとは納得もしてたかな?

 殿下達、友人思いだし、判断力も行動力もあるから、場合によっては有り得ない話では無かったのだろう。

 それでも止めて欲しかった所だけど。

 殿下達に囚われの身を見られるのは何となく気まずかったです。


 私が座らされていた椅子は無駄に豪華で座り心地は良いモノなのだと思う。

 そんな座り心地も目の前の光景で掻き消してしまうわけですが。

 視界に入ってくる床に倒れている子供達。

 彼、彼女等は皆【闇の貴色】を身に宿していた。

 傷だらけで呼吸音も小さい。

 呻き声まで聞こえるとなるとこの部屋で行われた事が分かるというモノである。

 幾ら人でなしでもこの光景には心が痛む。

 この子達は私に敵対していたわけでもないのだから余計に。

 そんな子達を見てあのエセ好青年は顔を顰めて舌打ちまでしたのだ。

 私でもびっくりの外道がいると分かった瞬間である。――それが分かってもちっとも嬉しくないですけどね。

 内心エセ好青年にドン引きしつつ情報を収集していく中で、この男の目的は「私」なのだということが分かった。

 いやぁ喋りもしない頷きもしない人形状態の私にもウルサイくらい話しかけてくる男で助かったと言うべきか。

 それとも、私の状態なんて関係ないと態度で言っている事にドン引きすれば良いのか悩む所である。

 エセ好青年は人形状態の私に喋り倒した。

 あの元隊長とは契約を交わしただけでお互いの過去を一切知らないとか。

 あの疲れ切った青年は元々友人だったけど、今は駒程度にしか思っていないとか。

 の割にその青年の力で今私は傀儡状態らしいんだけどね。

 変だよね。

 見下している青年の力を使って本願を果たしているというのに。

 矛盾していると自分では一切気づいていない、終わらない一方的なお話にそろそろ飽きたなぁと思った頃。

 扉が蹴破られ皆がやってきたのである。

 いや、仕方ないとは思うけど、あの扉蹴破れる程薄かったかな? と思わず考えてしまいました。

 それくらい豪快に蹴破った後にテルミーミアスさんを筆頭に殿下達、そしてお兄様とルビーンとザフィーアが入って来た。

 助けに来てくれたのは素直に嬉しい。

 だけど、まさかのメンバーに少しだけ遠い目になったのは許して欲しい。

 テルミーミアスさんを筆頭にエセ好青年の狂気に満ちた話を聞いているのを他所に動けるように奮闘していると視線を感じた。

 誰が? と思って視線の主を探ると、ノギアギーツさんが不思議な目で此方を見ていた。

 何と言うか、シュティン先生と初めて会った時を思い出すといいますか……。

 ああ、分かった。

 実験体を観察している時のような目だ。


 ……いやいや、それはそれで問題では? ノギアギーツさんってそういう人だったんですね。


 確かに研究者っぽいとは常々思っていましたが、まさかここまでとは。

 私は一層の警戒をノギアギーツさんにする事を決めつつ今回は棚に上げる事にした。

 私が完全に操られていない事を向こう側にも知ってもらわなければいけないのだ。

 こうなれば利用するしかない。

 私はノギアギーツさんの方を見るとわざとらしく瞬きをして自分の現状を知らしめた。

 それからは、まぁあっと言う間だった。

 ノギアギーツさんはお兄様やルビーン達に密かに知らせる事に成功。

 言い方は悪いがテルミーミアスさん達を囮に私を奪還出来る機会を伺い、それが分かった私も何とか傀儡状態から脱却。

 造ったアンクレットが犠牲になったけど、無事抜け出し、ついでにエセ好青年に一矢報いた後、無事救出された。

 

 そうして私は今お兄様の隣であり、ルビーン達が後ろにいる状態――完全なる形勢逆転状態でエセ好青年と対峙する事に成功したのである。

 

 さぁ、倒れている子供達をさっさと救出して治療したいですし、さっさと終わらせないとね。

 ……こっちが悪役みたいな構図だというのは言わないで下さい。

 自分で分かっているので。

 

 ……どう頑張っても正義の味方にはなれないからなぁ。仕方ない、仕方ない……うん、仕方ないよね。


 何となく心が傷つくいた気がするけど、気のせいです。



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