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何時の日か陽だまりの下、貴女と笑い合う日がくればと私は思うのです(4)




 本当に私達だけになった部屋は静かで僅かな物音すら聞こえてしまいそうです。

 そんな中私は侍女達が見せて下さった笑顔が忘れられません。

 「ごめんなさい」という気持ちと「ありがとう」と気持ちは伝わったのでしょうか?

 いえ、伝わらずとも良いのです。

 これは私のただの感傷でしかないのですから。


「まずは席に戻っていただけませんか? 流石に皇族の方々を立たせておく事はできませんし。……それともワタクシも立った方がよろしいですか?」


 冗談混じりのキースダーリエ様の言葉に私は自分が未だ立っている事にようやく気付きました。

 慌てて座ると隣から兄上の笑った気配を感じます。

 少しだけ恨めしい気持ちを込めて横を向くと、全く焦る事無く優雅に着席する兄上の姿が。

 同じ教育を受けているというのに、どうしてこうも違いがあるのでしょうか?


「クロイツ。いい加減机の上からおりなさい。影に戻るか椅子に座るかは任せますけれど」


 キースダーリエ様は黒猫の額を軽く叩くと黒猫は不満なのか尻尾でタンタンと机を叩いています。


「そちらは貴女の使い魔ですか?」

「はい。唯一の使い魔ですわ」


 優しく黒猫に笑いかけるキースダーリエ様は先程よりも柔らかくて、別人とは言わないまでも此方に対する警戒は薄らいでいるように感じました。


「あの、私達は黒猫ちゃんが机の上にいても構いませんが」


 さっきまで主を護っていた勇敢で主思いの使い魔です。

 それに私達の言葉も理解し、そして侍女の態度が良くなかった事も理解していたのですから、きっと賢いのでしょう。

 ならばテーブルの上で暴れる事はないと思うのです。

 そういった事もあり構わないと言ったのですが、使い魔である子猫には嫌われてしまっているのかそっぽを向かれてしまいました。


「(仕方ありません。私達はそれだけの事をキースダーリエ様にしてしまったのですから)」


 少しだけ落ち込んでいるとキースダーリエ様は何故か呆れた表情になり使い魔の額にデコピンをしました。

 突然の行動に驚いていると私達の方を向きキースダーリエ様は謝罪をなさいました。


「申し訳ございません。この子は猫と言われて拗ねているだけなのです。……今の貴方を見て豹と思う人はいないから諦めなさいな」


 キースダーリエ様が呆れたような声で宥めると黒猫……ではなく黒豹ちゃんは鼻を鳴らしその場に丸まってしまいました。

 何と言うか、随分人間臭い使い魔だと思いました。

 使い魔とはここまで賢い存在なのでしょうか?

 今後使い魔契約をするか分からない私には分かりませんが、キースダーリエ様と黒豹ちゃんの気兼ねない関係は少しだけ羨ましいと感じます。


「クロイツが申し訳ございません。……それにしてもよろしいのですか?」

「何がですか?」

「護衛の方まで下げてしまって、です」

「ああ。いえ、あの方たちは私のせいでキースダーリエ様を誤解なさっていますから。これ以上キースダーリエ様の負担なる事はしたくはないのです」


 言っていて自分でも「今更」と思います。

 ですが、本心なのです。

 今まで私を筆頭に帝国はキースダーリエ様に酷い事ばかり。

 それでも王国と帝国の友好を崩したくはないと考えて下さったキースダーリエ様の失望をこれ以上買いたくはないのです。

 そして何より帝国での思い出が悪いモノばかりでは悲しすぎます。

 ですから、これからでも少しでも負担になる事は避けたいと考えているのです。


「あなたも側仕えをけいかいしていたように見えましたが? それはこの前のことがあったからですか?」


 兄上の言葉に私は驚きましたがキースダーリエ様は否定なさいませんでした。

 どうやら私は自分の事に集中するがあまり周囲への注意が疎かになっていたようです。

 これでは胸を張って皇族と自らを誇れる日が何時来るのか。

 自分の未熟さが情けなくなってしまいます。

 

「護衛の方を疑ってはおりませんわ。下げて頂いた事には感謝致したい気持ちですけれど、それは別の理由からです。……幾ら防音の魔道具で遮断しようと唇を読まれてしまえば話は周囲に伝わってしまいますでしょう?」

「あっ」


 読唇術を修めている人間がいるかを私は存じません。

 ですがそれはいないとも言えないという事です。


「そういうことですか。たしかにこれからする話が外にもれるのはあまり良くないじたいですね」

「ここは帝国です。皇族の方々の秘密は死を持ってしても護るでしょう。ですが他国のワタクシの話となると逆に報告の義務が生じます。ですからあのままではお話する事は無く終わったと思います。知られる事がどうしても駄目だとは思いませんが秘密の共有者は少ない方が宜しいかと」

「そうならなくて良かったとおもいます。……妹のしでかしたことが結果的にはよかったということですね」

「……それは肯定も否定もできませんわ」


 苦笑するキースダーリエ様に私は今更ながら自分のしでかした事に顔が熱くなってきました。

 きっと今の私の顔は真っ赤になっている事でしょう。

 まさかこの年になって感情のままに泣いてしまうとは思いませんでした。

 大切な事に気づく事はできましたが、恥ずかしい所を見られてしまいました。


「(……でも考えてみれば私達はまだ子供ですし、いいのでしょうか? いえ、皇族としてはダメですよね)」


 目の前で他国の皇族を相手にしても堂々となさっているキースダーリエ様を見てしまえば余計にそう思います。

 

「では、あらためて本題にはいりましょう。――キースダーリエ嬢。あなたには妹と同じく【神々に気紛れ】がおこったのではないですか?」


 私は兄上の質問にギュッと拳を握りしめた。

 本来ならば私がしなければいけない質問を兄上にさせてしまった事への自己嫌悪と今度こそ真実が分かるという緊張。

 なによりもキースダーリエ様が私達を少しでも信用し真実を答えて下さるかどうか。

 心臓がバクバク言っている中、私はキースダーリエ様の答えを待ちました。

 ですが、私の予想とは違い兄上の質問にキースダーリエ様は少しだけ目を見開き、瞬くと小さく小首を傾げたのです。


「浅学で申し訳ございませんが【神々の気紛れ】とは一体どういう時に起こる事象なのでしょうか?」


 思いもよらないキースダーリエ様のお答えに私と兄上は思わず顔を見合わせてしまいます。

 そんな私達にキースダーリエ様は困ったような顔で「本当に申し訳ございません。常識だったのでしょうか?」と言われてしまいました。

 その時ようやく私は思い出したのです。

 【神々の気紛れ】という言葉と意味に関しては国の上層部にしか知られていない事であり、まだ政務に関わってもいないキースダーリエ様が知るはずもない単語だという事に。


「申し訳ございません! キースダーリエ様が無知なのでは御座いません。【神々の気紛れ】とは皇族や王族、そして国の上層部にしか知られていない言葉なのです!」


 私の言葉に兄上もようやく自分の立場が特別であった事を思い出したのか少し慌てて謝りました。


「そう、なのですか? まだまだワタクシに常識が足りないのかと思っていたのですが」

「こちらこそ立場によって知らされる、教えられる常識が違う事に気づくのが遅れてすみません」


 これから私達ももっと気を付けなければいけません。

 皇族としての常識が全てで通じるわけではないのです。

 キースダーリエ様は博識であり、弁も立つ方ですが、立場によって与えられる以上の知識を持っている事が当たり前ではありません。

 その事を私達は完全に失念していたのです。


「本当に申し訳ございません。ですが御父上から聞いておりませんか?」

「国の上層部でしか知られていない事を子供のワタクシが知っても大丈夫なのですか?」

「いえ、本来ならば政務に関わる、又は成人するまでは知らされないかもしれませんが。当事者であるある場合は知っている者の裁量で教える事もできると思うのですが?」


 それともそれは帝国の常識であり王国の常識ではないのでしょうか?


「お父様がどんな理由でワタクシに知らせていないのかは分かりませんが、多分知られてもワタクシにとって不利になる事はないのではないかと。ですからワタクシとしては教えて頂きたい所なのですが難しいかもしれませんね」


 キースダーリエ様の御父上は王国の宰相です。

 その方があえて話さなかったならばここで私達が話す事が本当によいのか。

 

「(まさかとは思いますが、キースダーリエ様が未だご自分の御家族に話していない可能性もありますし)」


 アールホルン様の御様子から、あの方は知っておられると思いましたので、自然とご家族全てが知っていると思っていましたが。

 私がそうである事を知っているのは父上と母上、そしてグーティミュートヒ兄上とエッシェルトール兄上です。

 私が心から信用し、そして私が家族と思っている方々です。

 家族には隠し事はしたくはない。

 そんな思いから自らお話したのですが。

 それもまた私の尺度でしかありません。


「(一体私はどうすれば)」


 悩む私達の悩みを吹き飛ばしたのは今まで丸くなっていたキースダーリエ様の使い魔の一言でした。


「オマエ、流石にそれは性格わりーぞ。言葉の意味は大体通じてるくせに」

「え?」


 驚き使い魔を見つめる私達を他所に使い魔はキースダーリエ様に対して呆れた表情を向けました。

 キースダーリエ様もそんな使い魔の無作法を咎める事無く苦笑なさっております。

 言葉を失う私とは違い沈黙を破ったのは兄上の上ずった声でした。


「……すごい」

「んぁ?」

「キースダーリエ嬢の使い魔はしゃべるんだね! 賢いをとおりこしてありえない! キースダーリエ嬢!」

「は、はい?」

「彼とは一体どこで契約したんだい? その召喚の魔法陣などは残っているのかな? できれば研究してみたいのだけれど!!」


 先程までの皇族として相応しい姿でいらっしゃった兄上の皇族にあるまじき興奮した御様子にキースダーリエ様と使い魔は唖然となさっておりました。

 逆に私は兄上の御様子に頭を抱えたくなりました。


 ああ、兄上の暴走が始まってしまいました。


 どうにかせねばいけないのですが……こうなった兄上を止めるのは至難の技なのです。

 一体どうすればよいのでしょうか? 

 

「兄上。キースダーリエ様は他国の方なので兄上のその姿は慣れておられないのです! 抑えてくださいまし!」

「でも! 帝国でも使い魔契約をしている人はいるけれど、みな言葉を理解はしていてもしゃべることはできないんだよ!? それなのにキースダーリエ嬢の使い魔殿はことばを使うことができるなんて! こんな不思議なことはない! あぁ、この謎を研究できたらどれだけしあわせなことだろうか!」

「兄上の研究にかける情熱は理解しております。ですが、今は私のお茶会であり、兄上は皇族としていらっしゃるのです! 先程まで失態続きの私がいえる事ではありませんが、兄上も自重なさってください!」

「このあふれるばかりの研究欲のまえにじちょうなんて! できるわけが! ない!!」

「兄上!!」


 ドッタンバッタンとそろそろ手が出そうになった時、向かい側からふふと笑い声が聞こえてきました。

 その声に私は我に返りました。

 慌てて座り向かいを見ると大笑いをしている使い魔と上品ですが笑い声が隠しきれていないキースダーリエ様がいらっしゃいました。

 

「あ、その……申し訳ございません。――って兄上! いい加減して下さいまし!」


 遂に私は兄上を張り倒して椅子に戻すと、キースダーリエ様に深々を頭を下げました。


「本当に申し訳ございません。普段の兄上は皇族として恥じぬ方なのですが、自分の研究意欲を掻き立てる存在を前にすると暴走してしまう悪癖がございまして」

「……それってオレが実験対象ってことじゃねーか」

「やっぱり人間並のちのうをゆうしているんだね! ぜひ! 研究に協力を!」


 今にも使い魔に迫りそうな兄上の裾を掴んで阻止つつ、驚きて机から転がり落ちそうな使い魔にも頭を下げました。

 皇族としてむやみやたらに頭を下げる事はやめた方が良いのですが、流石にこの状況では頭を下げるほかないと思います。

 完全に逃げ腰の使い魔をキースダーリエ様は面白げに見ていらっしゃいましたが、流石に憐れに思ったのか自分の膝に乗せ兄上から遮りました。


「勢いに押されている姿は面白いですけれど、流石に机から転げ落ちては怪我をするわよ? まぁクロイツは猫だから大丈夫かしら?」

「うっせ! 猫じゃねーよ! ってかオマエも充分研究対象だからな!」

「今更ではありませんか。ワタクシの先生を誰だとお思いですの?」


 使い魔の口は悪いですが、キースダーリエ様との軽口を聞いていると両者の間に強い信頼があるように感じました。

 同時にキースダーリエ様の警戒心が大分柔らかいでいる事にも気づきました。

 侍女たちを部屋から下げた時に少しだけ和らいでいた警戒心が今は殆ど感じられないのです。

 隠しているだけかもしれません。

 ですが、少なくとも私達がキースダーリエ様に危害を加える存在ではない事だけは理解なさってくださったのかもしれません。……希望的観測過ぎますでしょうか?


「(それならとても嬉しいのですが)」


 そんなじゃれあいを兄上を止めながら見ているとキースダーリエ様が私達に向き直り頭を下げました。


「少々意地の悪い事を言いました。【神々の気紛れ】という単語を知らないのは事実ですが、クロイツの言った通りワタクシはその単語が示す事の意味を薄っすらと理解しております。――そしてその事こそがこのような色々異色なお茶会へのお誘いだったのだという事も」


 そう言って頭を上げたキースダーリエ様はニッコリと微笑むと私がどう切り出すか悩んでいた事あっさりと口になさりました。


「アーリュルリス皇女様。――貴女もまた『地球』で生まれ育った『記憶』をお持ちなのですね?」


 あっさりとお話なられたキースダーリエ様に私は固まってしまいお答えする事が出来ませんでした。

 キースダーリエ様は用心深く、そして貴族として隙の無い方です。

 今までの帝国での私達の対応、そしてお茶会までの強引ともいえるお誘い。

 トドメのようにお茶会での侍女達の態度。

 その全てが私達を信用してはいけないのだと言っているようなものばかりです。

 それを一番よく分かっているのは被害者であるキースダーリエ様です。

 だからこそ私達が幾ら問いかけてもはぐらかされると思っていました。

 

 【神々の気紛れ】


 異世界の記憶を持ち、肉体ごとこの世界へと来訪する存在と記憶を持ちながらこの世界に転生する存在の総称です。

 ここ最近は存在を確認されてもおらず文献の中にいるだけの存在なのです。

 異世界の知識はこの世界に変革をもたらす事も厄介事の火種を持ち込むとも言われております。

 だからこそその存在は基本的に秘匿されるのです。

 国の上層部しかその存在を知らされないのもそういった事情からです。

 つまり、簡単に口に出してはいけない話なのです。


「随分……あっさり口になされるのですね」


 今の私達は皇族としてあるまじき顔をしているのでしょう。

 キースダーリエ様は苦笑しながらもそんな私達に対して何かしらの言葉を向ける事はありませんでしたが。


「確かに簡単に口に出す事ではないのかもしれません。ですが、そうですね。現状帝国の上層部に知られても問題は無いと判断させて頂きました」

「と、いいますと?」

「異世界の記憶を持つ人間の存在が国の上層部のみの機密であるのは、きっとその知識が、時には持ち物が、この世界を変革する可能性を秘めているからなのだと思います」


 「民間では異世界からの来訪者など御伽噺としてしか広まっていませんし」というキースダーリエ様は城下に出た事でもあるのでしょうか?

 関係のない事ですが、珍しいと思う反面少しだけ羨ましいと感じてしまいます。

 皇族として生まれた以上仕方のない事ではあるのですが。


「もし王国にのみワタクシのような存在が居た場合、ワタクシは誰に何を問われても答えず絶対口外する事はないでしょう。ですが帝国……しかも皇族の方にワタクシと『同類』がいるならば、問題は御座いません。他から得る必要はないのですから、厄介事の火種になる事はありません」


 更にキースダーリエ様は「これでワタクシが他の小国の人間ならば、それはそれで問題はあるので国ぐるみで隠蔽されると思いますが」とあっさりと言い切りました。


「むしろ対等の国に『同類』が存在するならばお互いのためにその存在を明かしておいた方が無駄に詮索する事なく穏便にすむと思いますし、友好国として今後も末永く続く切欠とする事になる事もできるかもしれませんから」

「ですが、キースダーリエ様は誰にも言っておられないのでは?」

「ああ、そう思わせてしまいましたか。申し訳ございません。お父様もお母様もワタクシが『そう』である事は知っております。勿論お兄様も。……ですからきっと国王陛下もご存じだと思います」


 直接問う事は出来ないので事実はわかりませんが、とほほ笑みながら言ったキースダーリエ様。

 ですが、知らないはずがないとその笑みは言っておりました。


「少なくとも現状を考えるなら話してしまっても特に問題はないと思います」

「そう、ですか」


 本当にキースダーリエ様はどこまで先をみていらっしゃるのでしょう。

 目先の事しか考えられない自分が恥ずかしくなってしまいます。


「そもそも異世界の知識と言っても、この世界を変革する程の知識を持つ存在などそうそうはいないとおもうのですけれどね」

「ああ。それは私も思います。確かに『地球』では魔法は存在せず、科学が発展しておりましたし。だからこそ魔法で代替する事は難しい事ばかりですから」

「後は過去に来た来訪者や転生者の方々が色々努力なさったのか、ワタクシ達からしてもかなり便利な世の中となっておりますし」

「それも分かります」


 多分、過去の時代に【神々の気紛れ】により来訪された方々は苦労なさったと思います。

 ですが人とは便利を知っていれば、それに近づけようと我武者羅になるものです。

 だからでしょうか?

 今のこの世界は異世界の知識を持つ私達から見ても水準はかなり高いです。

 国民全てに、かどうかは分かりませんが、少なくとも貴族や皇族の生活上では私はあまり不便を感じた事はありません。

 今の時代、私達のような存在の意義は殆ど無いのかもしれません。


「最大の問題である未来における兵器の記憶ですが、現在平和が続き、国同士の戦争の影もないならばワタクシ達が『来訪者』である事を隠す必要性もあまりないのかもしれないと考えますわね」

「もしかして……だから対等な友好国であることにこだわったのですか?」


 兄上の質問にキースダーリエ様は苦笑しながらもお答えにはなりませんでした。

 ですが、その表情こそが答えなのではないかと思うのです。


「それにしても……――」


 今までの柔らかな表情を一変させ真剣な表情になったキースダーリエ様に私も思わず背筋が伸びます。

 家格で言えば私の方が上なのですが、どうしてもキースダーリエ様を前にすると『あの人』を思い出してしまい、そしてこれ以上嫌われたくはないという気持ちになるのです。

 友人になる事はできずとも役立たずの皇族だろうとも、これ以上印象の悪いまま終わりたくはないと『私』が叫ぶのです。

 ですが少々あからさますぎだったのでしょうか?

 キースダーリエ様は一瞬だけ苦笑なさってから表情を改めました。


「――……よくワタクシが『転生者』であるとお分かりなりましたね? ワタクシはそんなに分かりやすい態度をとっていましたでしょうか?」

「いいえ。目が曇っていた私達はキースダーリエ様が『同類』であるなど考えもしませんでしたし、気づきませんでした。……気づいたのは姉上の騎士であるあの男の手から逃れ部屋に戻る最中の事ですから」

「ああ。あの時ですか。確かに彼から解放されたために少し気が緩んでしまっていたので。ワタクシもまだまだですわね」


 そんなことはないと思います。

 目が曇っていたとは言いましたが、キースダーリエ様はあの瞬間ですら貴族として立派な御姿でしたし、道中の事も私が『プラネタリウム』という言葉と『ルーン文字』という言葉に反応した事から「もしかして?」と思い、その後の会話から推測しただけですから。

 偶然私がキースダーリエ様の反応を注視する事ができたからこそ気づいただけです。

 確かにあの恐ろしい男から逃げ出せたことに気の緩みはあったでしょうが、多分偶然が重なっただけだと思います。


「偶然が重なっただけだと思いますわ。……あの、逆にお聞きしてもよろしいですか?」

「ワタクシがどうして気づいたか? ですか?」

「はい」


 一応私も皇族として隠していたと思います。

 ですが、一連の出来事のために少々自信がなくなってしまいました。

 そんな私の態度にキースダーリエ様は今度こそ苦笑をお隠しになりませんでした。


「ワタクシも最初は気づきませんでしたわ。『地球』のしかも『日本』の出身者ならば神々に対してあそこまで真摯に祈りを捧げ敬愛を捧ぐ方はあまりいませんから。皇女様の神々に対する深い親愛の姿を見ていてワタクシもまさか『同類』だとは思いもしませんでした」


 前世の『私』は親が厳格なクリスチャンであり、私も当然のようにそうでした。

 年齢があがり世界が広がるにつれて息苦しさを感じ、逃げ出したいと思った事もあります。

 ですが、結局親に反抗する事など出来ず『私』は死ぬまでクリスチャンでありました。

 ですからこの世界で神々が身近になり、なんの抵抗も無く、神々に祈りを捧げる事ができたのだと思います。


「(そして私が『あの人達』に憧れていたのは、自由である事の意味をはき違える事無く、それでいてどこまでも自由に生きていたから、なのだと思います)」


 『私』の事はともかく、最初は気づかなかったのだと言うならば何時きづいたのでしょうか?


「気づいたのは多分同時期ですわ。皇女様が『プラネタリウム』という言葉に過剰に反応し、焦っていたのか『ルーン文字』の事を口にし、最後には『どうしてこの世界には『電子キー』がないのでしょうか』などと言われてしまえば、流石のワタクシでも分かってしまいます」

「そ、れは……本当にお恥ずかしい姿をお見せいたしました」


 気づきますわね。

 気づかないはずが御座いません。

 確かに私はあの騎士を恐れています。

 そしてキースダーリエ様が『同類』なのかと思い浮かれてもいました。

 帰り道何を言ったのか殆ど覚えていないのも事実です。

 ですが……まさかそこまで口走っていたとは思いませんでした。

 顔が熱いです。

 恥ずかしさで今だけでも透明人間になれないかとありえない事を考えてしまいます。


「あのその「でんしきー」とはなんですか?」

「錠の一種と言えばいいかもしれません。個人を識別する事によって開く錠の事で、本人を証明する部分や特定の人間しか知らない番号を入れる事でしか開く事の出来ない錠の事です」

「なるほど。あなたがたの世界にはそのようなものも存在するのですね。なんと興味深い」

「この世界で再現できるかどうかは分かりませんが」


 兄上、出来れば私のフォローをして頂けないでしょうか?

 逆に傷口を抉られているような気がするのですが。

 ほら、キースダーリエ様が私をチラっとみて苦笑なさっているではありませんか。

 兄上は本当に自分にとって未知のものとなると周囲が見えなくなるのですから。


「(先程の暴走は雰囲気を変えるためにあえてかと思いましたが勘違いだったようです)」


 本気で暴走なさっていたようです。


「皇女様。どうやらワタクシにも隙があったようですので今回の事は教訓にし気を付けようと思います」

「私も! ――私もこれから皇族として恥ずかしくはないように精進したいと思います」


 言っているそばからダメダメですが、これから私は様々な方に何らかの贖罪をし、皇族として恥じないように生きなければいけません。

 『同類』がいる事はとても嬉しく感じます。

 『地球』が存在したのだと、私だけの妄想だけは無かった事には心から安堵しています。

 ですが、それがこの世界に於いて何のアドバンテージにもならない事も心に刻み込むべきなのでしょう。

 時に知っている『知識』は妨げになり目を曇らせる。

 その事だけは忘れないようにしなければいけないと思います。


「ああ。後、これはワタクシがすんなり話した理由の一つになりますが……」

「他にもあるのですか?」

「ええ。恐れながら皇女様がこの世界を「現実」と認識していないようならばワタクシは今頃こうして席についていないでしょうし、今後一切の交流をたっていたと思いますわ」


 少しだけドキリとしました。

 この世界が『ゲーム』だと認識した時の私を思い出したからです。

 あの頃の私はこの世界が私のために用意された舞台のような、そんな愚かな勘違いをしていました。

 あの出来事がなければ私は今でもそんな勘違いをしていたかもしれません。

 そうであれば、キースダーリエ様は完全に敵となっていたでしょう。


「(それは、なんて恐ろしい)」


 キースダーリエ様は賢い方です。

 あの騎士と真っ向から対峙し怯まない強い心をお持ちです。

 そんな方が敵に回る。

 王国の方々が帝国に来ると分かった時よりも恐ろしいと感じました。

 そうならなかった事に私は心から安堵致します。

 と、そのような事を考えていると隣の兄上、キースダーリエ様、そして使い魔にまで呆れた表情をされていました。


「え?」

「リス。気づいていないようだけど、今、キースダーリエ嬢は遠まわしにオマエとの交流をたたないと言ったんだよ?」

「え? えぇ?! ほ、本当でございますか!?」


 あまりの嬉しさにもはや淑女教育など吹っ飛んでしまいました。

 私はもうキースダーリエ様にお許しいただける事はないと思っていたのです。

 今回のお茶会が最後の機会だろうと。

 だから最後の交流を出来るだけキースダーリエ様が不快にならないように頑張ろうと。


「ですが、またお会いして下さるのですか?」

「皇女様。御立場が逆転しておりますわ。本来ならワタクシが今後も交流していただけるか許しを得る立場なのですから」

「そ、それはそうですが。私のした事を考えれば許しを請うのは私の方ですわ」

「そんな事を言われてしまいますとワタクシが国に怒られてしまいますわ。例の一件に関してはお互いに禍根を残さず、という事になっていますし、ワタクシ達の関係は今『スタートライン』に立っている状態と同じなのですから」


 兄上が「すたーとらいん?」と首を傾げていますが私はそんな彼に説明する余裕もない程に驚いていました。

 一生許されないと思っていたのです。

 私は先入観によって目が曇り、やってはいけない事をしました。

 そのために失う命がある事は分かっております。

 その罪を私は生涯背負わなければいけないのです。

 キースダーリエ様に関しても私は生涯をかけて償わなければいけないと思っています。

 ですがキースダーリエ様はそんな私にゼロから始めるとおっしゃったのです。

 私は再び試されているのでしょうか?

 私を真っすぐ見据えるキースダーリエ様の眸からは偽りは感じられません。

 

 それでも私は……。


「アーリュルリス様。この世界では……いえ違いますね。『地球』だったとしても利害込みの友人関係など幾らでも転がっておりますわ。意見の相違があろうとも、事情による仲違いがあったとしても、水に流し再び笑いあえる。それが「友人関係」だと思いませんか?」


 キースダーリエ様はきっと私を完全に信頼してはいないのでしょう。

 もしかしたら私が皇族だから繋がりを絶やさない選択をしたのかもしれません。

 だとしてもそれだけではないと思うのです。

 王国の王子達と友好的な関係を育み、帝国の陛下や皇太子にも一目おかれているキースダーリエ様が今更継承争いから脱落した皇女とそこまでして関係を継続する必要性などありません。

 それでもこうして今までを水に流し、そして交流を持とうと思って下さる。

 それは利害だけはないはずです。


「私はキースダーリエ様に対して失礼な態度ばかりでした。その事は多分生涯忘れてはならない事だと思います。ですが……それでもキースダーリエ様と友人になりたいと思っても良いのでしょうか?」


 懇願するような形になってしまった私にキースダーリエ様は苦笑なさっています。


「どうやらアーリュルリス様は過剰に自分を責め、周囲の声に縛られておられるようですね。「自由になれば良い」などアーリュルリス様の今までを知らないワタクシには言えない事ですけれど、もう少し息抜きをしてもよろしいのではないでしょうか? 今のアーリュルリス様は酷く息苦しそうに見えます」


 心を読まれたのかと思いました。

 確かに『前』も【今】も私は周囲から「良い子」であろうと努めてきました。

 それこそ自分の心を押し殺したとしても「周囲の考える良い子」であろうと。

 自由な鳥に憧れ、自分勝手に振る舞う人に顔を顰めながらも、何処かで羨ましいと思っているのです。

 だからこそ自由の意味をはき違える事の無く生きている『あの人達』に羨望を抱き、憧れていたのです。

 弱い「私」の性質はこの世界でも変わりありません。

 息苦しいと感じる事もあります。

 それでも怖いのです。

 本当の自分を出して嫌われてしまう事が。

 弱い「私」を見抜かれていた事で私は言葉が出ず俯いてしまいます。

 こんな自分は嫌いです。

 変わりたい。

 ですが『記憶』が戻った時のようなあのような振舞いなど私は二度と出来ません。

 あのような傲慢で誰からも疎まれるような態度など絶対に。


「わたしもリスはもう少し自由にしてもよいと思っていますよ。わたしとであった時のようにね」

「え?」


 信じられない言葉は私は顔をあげました。

 私を見ている兄上はとても楽し気に、なにより優しく私を見ていました。


 兄上と出逢ったのは私が『前世』を持っていると確信していた時期です。

 一番私が奔放に傲慢に振る舞っていた時期。

 そんな時期の頃を兄上は受け入れて下さっている?

 とてもではありませんが信じられるお話ではありませんでした。


「最初にあったとき、リスは色々なことを言っていたよ。その半分も私にはわからなかった。けれどリスがとても楽しそうにわらい、自由にふるまっていたのは覚えているよ」

「お、恥ずかしい話ですわ。あの頃の私は勘違いをしていて、周囲に迷惑を」

「そうかな? たしかにちょっとしたわがままはあったけど、あのころからリスは周囲の人たちを本当にこまらせることは言わなかったしやらなかった。あのていどならおてんばな子っていわれて終わりだよ」

「そう、なんですの?」

「まぁ、たしかに。あのまま成長していたら大変だったかもしれない。けれど、今のように周囲の目をかじょうに気にして自分の好きなことをなんもできない、自分をからにおしこめる姿をみていると、その方がよかったのかもしれない……なんて私はおもうけれどね」


 大変です。

 兄上の御言葉が右から入って左から抜けていってしまっています。

 それ程までに私は今有り得ない事を言われているのだと感じているのです。

 本当にあの頃の私の振舞いは酷いモノでした。

 世界の中心は私だと信じて疑わなかったのですから。

 兄上達が私に構うのも当然だと思い、この世界は私のために造られたのだとすら考えていました。

 そんな私の態度が良かったなどとは決して思えません。

 周囲に暴力をふるったり暴言を言わなかったのは確かにそうでしょうが、それでも無神経な言葉で誰かを傷つけていない自信はありません。

 そのまま育っていたら私は確実に今よりも兄上達にとっての害悪となっていたでしょう。 

 なのに、そんな私でも兄上は受け入れて下さっていたのですか?


「ねぇリス。たしかに皇族としてわすれてはいけないことはあると思う。けれど必要以上に自分をおしころしてまで周囲の期待にこたえようと思わなくてもいいんだよ? だって皇族だって一人の人間であることには違いはないのだから」

「兄上」


 本当にいいのでしょうか?

 今更この世界が現実ではないなどと愚かな事を言いだすつもりはありません。

 皇族としての誇りを正しく理解し忘れず生きようと、私のしてしまった事の全てから目を逸らす事なく生きようとも思っております。

 ですが「第二皇女・アーリュルリス」ではなく「ただのアーリュルリス」としての自分の願いを抱いて良いのでしょうか?

 此方を見る兄上の視線は暖かく、そして「大丈夫」だと言ってくれているようでした。

 

「(ああ。私は本当に兄上に愛されているのですね。皇女だからではなく「アーリュルリス」として)」


 次々と流れる涙を止める方法が分かりません。


「(私はこんなに泣き虫だったのですね)」


 まるで他人事のようにそんな事を思いました。

 「聖女」と囁かれた時、私には過剰な期待だと思いました。

 ですが自分を出せば周囲は私を嫌い離れていくと思い、皆の考える「聖女」として振る舞う事しかできませんでした。

 少しでも周囲の期待から外れ軽蔑した目で見られてしまえば、姉上に殺されてしまうかもしれないと常に笑顔の裏で怯えていました。


 私は罪深い人間です。

 姉上の所業を見て見ぬふりしていました。

 キースダーリエ様の表面すら見る事なく思い込みで傷つけました。

 兄上達の愛情すら「皇女であり聖女」であるから注いでくださっていると心の何処かで思っていました。


 兄上は……トール兄上はどんな私だとしても惜しみない愛情を注いでくださっていたというのに。


「トール兄上。有難う御座います。「私」を受け入れて下さって。「私」を愛して下さって」


 私は兄上の腕の中に飛び込みました。

 涙が止まりません。

 兄上に対しての感謝と愛おしさと安堵が入り混じり自分の心が定まりません。

 ですが、背を撫ぜてくれる温もりが嬉しいと、それだけは分かるのです。

 

「ようやく愛称でよんでくれたね。リス。ずっと前から、であったころからオマエは私にとって愛しい妹だよ」

「はい。ありがとうございます。私もトール兄上を敬愛しておりますわ」


 今、私は笑えているでしょうか?

 愛おしい兄上に「愛している」と伝えられているでしょうか?

 伝わっていればよいと、そう思います。





「なー、リーノ。オレ等って兄弟愛を見せられてるのか? それとも思いが通じ合った恋人との逢瀬を見せられてんのか?」


 暫くトール兄上の腕の中にいた私は向かい側から聞こえる声に今が何処か思い出し、飛び跳ねるように兄上から離れました。

 そして熱い顔のまま其方をみると少し困った顔で微笑むキースダーリエ様と呆れた表情の使い魔が此方を見ていました。

 

「(もはや私の皇族としての姿は風前の灯火のようです)」


 不幸中の幸いなのはキースダーリエ様が私達に失望した顔をなさっていない事ぐらいでしょうか?

 その表情も本当かどうかは分かりませんが、本心であると願いたいです。


「いやいや。純粋に兄妹としてのじゃれあいだよ、使い魔殿」

「そうですわ、クロイツ。あまりおかしな事を言ってはいけませんわ。……我が使い魔が可笑しな事を言いまして、申し訳ございません」


 使い魔の頭を小突きキースダーリエ様は私達に頭を下げました。

 ですが、失態続きなのは私の方ですので、使い魔の言葉も気になりませんでした。

 

「(それに、確かに第三者から見れば、そう見えそうな事をしてしまっていましたし)」


 お互い純粋な家族としての親愛しかござませんが、確かに発言も態度もきわどかったのは確かです。……年齢的に子供だから許される範囲だったのではないでしょうか?

 使い魔の彼も本気で言っているわけではない事は分かりましたし、兄上も同じだったのでしょう。

 使い魔とキースダーリエ様相手に私の事をお話していらっしゃいます。

 それは、その良いのですが……。


「(兄上! そのような事までおっしゃらなくても良いのでは御座いませんか!?)」


 特に『記憶』を自覚した頃の事はあまり言わないで下さいませ。

 私にとっては本当に黒歴史なのですから!


「トール兄上!」


 私はたまらず兄上の口を手で塞いでしまいます。

 そしてもはや呆れた様子を隠す事のない使い魔に深々と頭を下げました。


「トール兄上が申し訳ありません」

「あー、うん。いやー。アイサレテテヨカッタデスネ」


 片言になっておりますよ使い魔殿。


 既にお茶会という体裁すら保てていない状態なのですが、一体どうすればよいのでしょうか?

 そんな事を考えていると私の手を外した兄上が私の頭をポンと軽く叩き「それで? リスはキースダーリエ嬢とどうなりたいんだい?」と言いました。

 兄上の言葉にはっとした私は此方を見ているキースダーリエ様と向き合いました。

 キースダーリエ様は私の醜態と兄上の暴走した姿にも特に失望する事無く、苦笑なさっていました。

 なんと懐の深い方なのでしょうか。

 彼女には沢山の迷惑をおかけしました。

 それでも、私はキースダーリエ様に色々教わりたいのです。

 そして少しだけでもいいからキースダーリエ様から信用して頂きたいと思うのです。


 もはや皇族としての姿などボロボロな私です。

 恥がもう一つ増えようとも構いません。


 私は立ち上がるとキースダーリエ様に近づき彼女の両手を取りました。

 流石に驚いているキースダーリエ様を相手に私は口を開きました。


「今まで散々迷惑をおかけして本当にごめんなさい。ですが、そんな私ですがキースダーリエ様の友人にしては頂けませんか?」


 ドキドキと自分の胸の鼓動が聞こえてきます。

 緊張で声が震えていたような気がします。

 キースダーリエ様は私の行動に驚いていたようですが、すっとその場を立ち上がると私の目を見て微笑みました。


「ワタクシのようなモノに過分な御言葉を頂き本当に有難う御座います。此方こそ宜しくお願い致します、アーリュルリス様」

「有難う御座います!」


 私は嬉しさのあまり涙が出そうでした。

 

 こうして私はキースダーリエ様と友人となったのです。

 きっとこの関係は打算だらけであり、本当の友人関係とは言えないかもしれません。

 ですが、何時の日か……そう何時の日か、本当の友人となった時キースダーリエ様に言いたい事が御座います。

 ――「「私」と友達になってくれて本当にありがとう」と。





 ちなみにこのやり取りを見ていた兄上には「まるで婚姻をもうしこむようだったね。キースダーリエ嬢に本気ならば応援はするけれど手強いとおもうなぁ」などと揶揄われ使い魔殿には「オレ、暫くは砂糖はいらねーわ」などと言ってキースダーリエ様に叩かれていました。

 そのような感情では無かったのは事実ですが、後で改めて思い返すと確かに婚姻の申し込みと言われても仕方ない光景でした。

 

 ――どうやら私がキースダーリエ様のようになるには、まず冷静に周囲を見渡せるようになってからのようです。



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[気になる点] 「あのその「おーとろっく」とはなんですか?」 「鍵の一種でしょうか? 扉をしめると自動で鍵がかかり、特殊な鍵がなければ開く事のできない鍵とでも言えばいいかもしれません」 ※特殊な…
[気になる点] 【神々に気紛れ】 【神々の気紛れ】 前半が【に】後半が【の】 と、なっている。
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