『見るモノ』 序
この世に不思議な事は結構ある。
例えば占術だってあるし、唯其処で、何かを見守り続ける存在だっている。
そんな不思議な出来事を取り扱う何でも屋があるのは、不思議じゃないのかも知れない。
私は公園の高台から、公園内を行き来する人達を眺めている。
朝も昼も夜も私は只々眺めている。
その行為に意味等は無い。
私には、それ以外の事が出来ないのだ。
数日前、気が付くと私はこの場所に立っていた。
まったく動かない足・・・上半身は、辛うじて動かす事が出来そうだ。
いや・・・動かせているのだろうか?動いている感覚はあるのだが、動いている部分が視界に入ってこない。
私の視界に映るのは、下の公園で人々が行き来する様だけだ。
ふむ、ここは公園の高台に位置するのだな。私はそう理解した。
する事が無い私は、人間観察をする事にした。
散歩を楽しむ老夫婦、遊具で遊ぶ子供たち、猫を抱いた女性は此方を向くとにっこりとほほ笑んだ。
そうして、現在に至る。
毎日、朝も昼も夜も只々眺めている。
眺めていると色々な事が見えてくる。
例えば、あの少女は朝と・・・夕方の決まった時間に公園を通るようだ。制服を着ている事から高校生位だろう。
きっと、この公園を通る方が近道になるのだろう。
子供たちの面々も覚えた。少し小太りの子がリーダー格、何時も泣いている子もいる。
しかし、私に気が付く人はいない。
いや・・・猫を抱いた女性が此方に笑いかけた事があった。
それも、気のせいだったのだろうか?
私は誰にも気が付かれない。私は此処から動く事も出来ない。
私は只々・・・行き交う人達を眺めている。